今回の衆議院議員の選挙は、民主党の圧勝で終わった。小泉首相の後を継いだ、福田首相、安倍首相、麻生首相が、それぞれ延ばしに延ばしてきた選挙が、任期ぎりぎりで解散になり、やっと選挙となった。この間、まるで自民党の凋落に拍車をかけるような流れだったということができる。最後の最後になって、結局、国民は皆、今の自民党ではもうだめだと判断したと言える。民主党は、おそらく小沢代表代行の戦略だと思われるが、「政権交代」というたった一つのスローガンで勝った。今回の状況を見ると、国民は2大政党制への期待を示していると考えるのが、いちばん合っているように思われる。
参議院では既に与野党が逆転しており、民主党が108人で第一党になっているので、今後の国政は、民主党を中心として動いていくことになる。ところで、これから民主党の政権運営が始まるに当たって、民主党の最重要政策を確認しておきたいと思う。
1 ムダづかい
国の総予算207兆円を全面組み替え。税金のムダづかいと天下りを根絶します。議員の世襲と企業団体献金は禁止し、衆院定数を80削減します。
2 子育て・教育
中学卒業まで、1人当たり年31万2000円の「子ども手当」を支給します。高校は実質無償化し、大学は奨学金を大幅に拡充します。
3 年金・医療
「年金通帳」で消えない年金。年金制度を一元化し、月額7万円の最低保障年金を実現します。後期高齢者医療制度は廃止し、医師の数を1.5倍にします。
4 地域主権
「地域主権」を確立し、第一歩として、地方の自主財源を大幅に増やします。農業の個別所得補償制度を創設。高速道路の無料化、郵政事業の抜本的見直しで地域を元気にします。
5 雇用・経済
中小企業の法人税率を11%に引き下げます。月額10万円の手当つき職業訓練制度により、教職者を支援します。地球温暖化対策を強力に推進し、新産業を育てます。
(「民主」号外/2009.8.20「政権製作特集号」 政策の詳細は、民主党のHP参照。)
細川政権、小渕政権の経済政策を支えてきた中谷巌が懺悔の書『資本主義はなぜ自壊したのか』(集英社インターナショナル/2008.12.20)を書いて、今までの市場に任せておけば資本主義は、自分で問題を解決していってくれるといういわゆる「市場原理主義」的な政策の誤りを反省していた。この反省がどれだけ有効かどうかは別として、アメリカの金融危機を契機にして、「新しい資本主義」への期待が始まった。アメリカのオバマ政権の成立もその流れの中にある。日本の民主党の政権もその大きな流れの中にある。それは、実現できるかどうかは別として、民主党の政策の中に掲げられている。
おそらく、民主党は、これからの政権運営にとてつもなく苦労すると思われるが、そこから日本が少しでも変化してくれることを期待したい。そして、それは、「国民の期待」でもあるのだ。しかし、問題は、民主党の重要政策が、どのように実現されるかということにある。あるいは、どうのように実現されないかということであるかもしれない。なぜなら、民主党は、そうした重要政策をどのように実現していくかについては、ほとんど具体的には語って来なかったからだ。まるで、そうなことは、政権を取ってから考えればいいと思っていた節がある。民主党も、こんなに圧勝するなどとは思っていなかったに違いない。
ただ、私には、衆議院議員の総選挙の結果は、新しい時代の幕開けであることだけは確かなように思われる。確かに、官僚の抵抗は強いかもしれないが、自民党と違って、民主党はしたたかでないだけ、混乱を生み、その混乱がシステムを変えていくことになる可能性がある。つまり、今まで通りには行かないということが、あちこちで起こるに違いないのだ。そして、それは、蜂の巣をつついたようにマスコミで取り上げられることになるに違いない。そして、騒げば騒ぐほど、何かを変えざるを得なくなっていくに違いないのだ。私は、「国民の期待」の重さに押しつぶされそうな顔をして、ほとんど具体的なことを語らなかった、鳩山代表のインタビューをテレビで見ながら、そんなことを思った。