今回の参議院の選挙の結果、民主党が過半数割れしただけでなく、どの政党も過半数を握ることができなくなった。これは、必ずしも悪いことではない。また、民主党の後退は、致命的だとも思わない。なぜなら、鳩山総理、小沢幹事長で参議院選挙をしたら、おそらくもっと惨憺たる結果になったに違いない。私も、管総理が消費税の問題を選挙に持ち込んだことが、確かに民主党に悪影響をしたとは思う。しかし、管総理は下手ではあるが、今の日本に必要な問題を提出したことだけは確かだと思われる。多分、選挙結果から、消費税論議が低迷するかもしれない。むしろ、民主党の内部分裂を含んだ混乱が始まるかもしれない。
しかし、今度の参議院選挙で、国民の利益になるということばかりを訴えた政党は、多分あまり信用しない方がよい。それは、前回の衆議院で民主党がやったことだ。管総理は、悪い影響がでると多分分かっていて、それでも消費税に固執した。これまでの民主党のばらまき政策のつけを消費税の増額でまかなおうという趣旨なら、それはもってのほかだと思われるが、消費税の引き上げは必要なことだと思う。それは、日本の財政を再建するためにどうしても避けて通れないことだと思う。そして、今までの政党は、いつも選挙の時になると、そうしたことを隠してきた。つまり、消費税を上げないことを公約としてきたくらいだ。この点ついてだけ言えば、管総理の提案を素晴らしいことだと思った。
消費税については、生活必需品の場合は控除できるシステムを作った上で消費税率を引き上げ、むしろ、所得税は廃止か、あるいは、1000万円以上の所得にかかるようにすればよいと思っている。消費税が、国税の主たるものであるなら、私たちは、税金をどのように使うかコントロールできない以上、ものを買わないことによって、税金を納めないようにすることができる。また、税金を産業界が有利に使っているのなら、彼らが、購入活動をすることによって、その分負担すべきである。消費税が上がると、消費が停滞し、ひいては経済が停滞するというのは、単なる脅しである。そして、脅しているのは、産業界である。そのことは、消費税が導入されるときに経験したことだ。そして、脅されているのは、国民であり、消費者だ。そして、働く者たちは、会社が赤字で、税金を納めないときでも、給料から税金が確実に天引きされているのだ。だから、もっと、消費税の論議をしてほしかった。
衆議院も参議院も政党選挙ということで、特に最近は、その時々の状況によって、大きく変動するようになった。与党の民主党も野党の自民党も同じように、いわゆるタレント候補をたてるようになってきた。ある意味では、ほとんどみなタレントであるといったほうが良いかもしれない。そうした人たちの政治に対する知識は、本当に信用できるかなどどうでもよく、政党に属する議員の数が全体の流れを作っていくから、ある政党の一員であるということが大事であると思われている。本当は、その人が、政治や経済や生活に対してどんな考えをもち、国民の為になる政策を提案できるかである。そして、自民党でさえ、党の政策として消費税率を上げると言っているにもかかわらず、そのことを説明しない。相手を批判することが、自分への指示を増やすことだと思っている。
民主党のマニフェストに、衆議院や参議院の議員数の削減という提案があった。人数を減らすと言うことは、税金の無駄遣いを少なくするという意味らしい。私は、今度の参議院選挙を見ていて、定数の問題より、参議院が本当に必要なのかと思った。日本の二院政は明治時代から続いている。戦前は、参議院という名称ではなく、貴族院という名前で呼ばれ、皇族議員、華族議員、勅任議員(帝国学士院会員議員、多額納税者議員など)によって構成されていたものである。それ故、GHQにより廃止の提案があったが、民選議員で構成するということで、参議院という名前で残されたものだ。そして、衆議院とは違ったいろいろな性格があるが、どちらかと言えば、衆議院の監視役という役目が主たる任務である。だから、たいていの法案は衆議院が優先されているが、憲法改正などは参議院は衆議院と対等である。しかも、解散はなく、6年任期で3年ごとに半分が改選になるというシステムになっている。
もしそうなら、参議院は選挙ではなく、裁判員制度のように抽選でなればいいのではないだろうか。もし、普通の国民が議員などできないと考えるとしたら、その人は不遜な人だと思う。もちろん、今の議員の中でいろいろな問題を抱えている人がいるのと同じようなことは起こりうるだろうが、それは仕方のないことである。少なくとも、今の議員のほうがいいとは必ずしも言えない。そして、すべての人が、抽選で選ばれ、6年間というより1年間の交替で参議院議員になれるようにしたら、政治に対する関心も社会参加の意欲も変わってくるに違いない。もちろん、議員になったら1年間は会社員の場合は休職ということにすればよい。多分、議員としてのキャリアはその後の人生のハンディになることはないと思われる。むしろ、その人の大きなキャリアになるに違いない。
格差社会ということが言われているが、二世議員の話が問題になるように、議員になれる人は、限られている。もちろん、すべての議員がそうであるわけではないが、まるで、歌舞伎の役者のように政治家は育てられている。格差の是正のためにも、また、国民がすべて平等であるためにも、誰でもが、抽選で議員になれるようになり、参議院は、衆議院の監視役という役目をもっと徹底すれば、おそらく政治の風通しはもっと変わるに違いないと思う。また、政策論議は、もっと徹底されるろ思われる。そんなことを考えてくれる政治家が現れることを夢見ながら、参議院選挙の開票結果を見ていた。