22日に出版厚生年金基金主催の「年金ライフプランセミナー」が、神楽坂の出版クラブ会館であった。9時から4時半くらいまで、年金の説明や講演などでスケジュールが一杯だった。出版厚生年金基金は、今年の10月1日で20周年で、記念行事があった。この基金も、しばらく前の運用益は、3年間程マイナスの時があった。しかし、ここ3年は、株価の上昇に伴い、かなりの運用益を上げて、すっかり自信を取り戻している。もちろん、その分をわれわれに即還元というわけではないが、基金のスタッフたちはかなり自信にあふれていたように思う。もちろん、私たちの年金は、3.5%を標準利回りとして考えられていて、渋い計算をしていた。確かに、今年は8月末現在での修正総合利回りはマイナス0.49%である。
このライフプランセミナーは、取次や出版社に勤務し出版厚生年金基金の加入していて、しかも2年後くらいまでに定年退職をする人を対象としている。だから、セミナーの参加者は、ほぼ私と同じ団塊の世代であった。事前に、個人個人が年金の計算を依頼しており、当日基金から、個人個人に退職後の年金を試算した報告書が配られた。最近は、個人情報保護がかなり厳しく、直接本人からの申請でないと、年金の試算をすることができないことになっている。その報告書で、私は初めて、自分が今後もらえるであろう年金の金額を教えて貰った。私たちの世代から、年金の満額支給は64歳からになる。
年金は、こうした出版厚生年金基金に加入していると、いわゆる3階建てになる。1階部分は国民に共通の「国民年金」であり、2階部分は民間企業などえ働く人のための「厚生年金保険」で、この二つは国が運営している。「出版厚生年金基金」は、3階部分に当たり、基本年金に対するプラスアルファ部分と、加算部分がある。このうち、公的年金のうち、定額部分(老齢基礎年金)と報酬比例部分(老齢厚生年金)とでは、支給開始日が少しずれている。昭和36年4月2日以降に生まれた男性か、同41年4月2日以降に生まれた女性は、支給開始時期が全て65歳からになるが、それ以前は異なっている。私の場合は、定額部部は64歳からだが、報酬比例部部は60歳から貰えることになっている。
60歳から全く出ないかと思っていたが、そうではなく、いくらか出ることがわかった。もちろん、出版厚生年金基金の平均では、月々10万少々の金額であり、それだけで生活できるわけではないが、多少は楽になる。私たちの世代の場合、おそらく、64歳からは20万円と少々というのが普通であるようだ。もちろん、夫婦共働きの場合、その倍になるわけで、まあ、何とか生活できるくらいの金額になる。しかし、我が家のように、これから子どもが大きくなり中学・高校・大学へ行くという家庭で、妻は専業主婦という場合は、よほどの資産を持っていないと、退職金やその他の資産を食いつぶすことになり、かなり大変だと思う。つまり、退職金やその他の資産を活用しても、退職後しばらくは夫婦ともに働かないと、大変だと言うことだけは確かなようだ。
しかし、このセミナーはかなり役に立った。年金の実態がどうなっているかということや、実際の金額がどのくらいだということが、始めて理解できた。そして、出版厚生年金基金のようなものがとても有意義なものだということを知った。普段は、給料袋からかなりの金額が社会保険料として天引きされていて、理不尽な気持ちだったが、いざ自分たちが定年を迎えることになって、有り難みがわかってくる。これから、社会状況が今のままだと、支給が減少していく可能性があるが、しかし、貰えなくなるわけではないし、特に出版厚生年金基金のようなものは、国の年金とは違って、そんなに減らないと思われる。
また、退職後の生活の仕方と、健康管理のための講演が二つあったが、退職後の生活の仕方の基本的なスタイルについては、なかなか面白かった。退職後に私たちが取得できる資産がどのくらいあるのかということも大切だが、それ自体は当然格差がある。そうした格差を配慮しながらも、退職後と退職前では、生き方に違いがあるというのは、面白い。もちろん、経営者はそうではないのだろうが、私たちサラリーマンは、定年によってはっきりと人生設計を変えるべきだというのはその通りだと思った。つまり、定年前は、働きながら資産形成もしていたわけだ。しかし、定年後はそうした資産は、年金とともに残りの人生を豊かに過ごすために有意義に使われるべきだということは確かだ。
私たちは、老後のために働いてきたのであって、退職後は、少ない年金を貰うわけだが、その年金は、貯金をするためにあるわけではなく、今まで造ってきた資産とを合わせて、楽しい生活を設計すべきだというのは、正しい。だが、結婚を初めとして、さまざまな社会的なステイタスが高齢化してきていて、退職後がすなわち老後ではないという時代では、「楽しい生活」を設計すべき総資産として、私たちのサラリーマン生活で作り上げてきた資産では足りないかも知れないということもまた確かである。そして、それが、現在の「老後の不安」という大きな社会問題でもある。しかし、私たちは、まだ働けるのであって、そのつもりで頑張るしかない。そのために、これから準備をしっかりとしておく必要がありそうだ。