2017年の『君の名前で僕を呼んで』でアカデミー主演男優賞にノミネートされ、大ブレイクを果たしたティモシー・シャラメ。アメリカ映画とヨーロッパ映画を横断できるデカダントなルックス(仏語も堪能)、スターになるべきカリスマ性を持った彼はたちまち映画ファン、映画作家から絶大な支持を得る事になる。しかし同じく2017年にA24からリリースされた本作は意外や垢抜けない印象だ。シャラメ扮する少年のひと夏の恋と犯罪を描いたカミングエイジストーリーには前述の魅力は見受けられず、イライジャ・バイナム監督の90年代オマージュも冴えない。撮影時期は定かではないがルカ・グァダニーノ級の名匠と出会えてこそ俳優は覚醒するのか。
相手役のマイカ・モンローは『イット・フォローズ』『ザ・ゲスト』に続いて“田舎に押し込められた美少女”を演じているが、そろそろキャリアチェンジが必要だろう。『イット・フォローズ』の大ヒットの際には新時代のスクリーミングクイーンとしてブレイクするのではと期待したが、思いのほか伸び悩んだ。
冒頭、シャラメ扮する主人公は母親から「男らしくしなさい」と叱られる。後にこの新時代のスターは繊細さと優しさ、美しさにおいてアメリカ映画の“男らしさ”を更新していく。スター誕生前夜の1本だ。
『HOT SUMMER NIGHTS/ホット・サマー・ナイツ』17・米
監督 イライジャ・バイナム
出演 ティモシー・シャラメ、マイカ・モンロー、アレックス・ロー、エモリー・コーエン、トーマス・ジェーン
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