やれやれ、もうすぐ40歳だ。“30歳以下の30人”に選ばれ、気鋭の劇作家と目されたのも今は昔。地元で劇作の講義をしているが、生徒には「ヒット作がないくせに」とバカにされている。ブロードウェイを目指して新作を売り込むも、鼻持ちならない白人のジジイに頭を下げなくちゃならない。クソ不味いダイエット飲料は一向に体重が落ちる気配ナシだ。これが40歳、This is 40。
監督、脚本のラダ・ブランクが実名で演じる自分語りだ。彼女は内に宿った言葉を書き溜め、ラッパー転身を試みる。そうだ、アタシは子供の頃から言葉を操ってきたんじゃないか。だが“ハッスル&フロウ”は起こらない。大失敗をかまし、物笑いの種になった。「アタシはアーティストになりたいの!」
雑多で愉快、人情味にあふれるNYハーレムを撮らえたモノクロームが80~90年代のアメリカンインディーズ、とりわけスパイク・リー監督の『シーズ・ガッタ・ハヴ・イット』を彷彿とさせる。リーは若いヒロインの自由恋愛を通して時代を先駆けたが、あの彼女がアラフォーになったら?ラダに惚れ込んだトラックメーカーのDは若手ラッパーどもに檄を飛ばす。「オマエらは言葉を並べるだけだ。でも彼女は持ってる。オマエの物語はなんだ!?」。ラダが随分若いDとヤレちゃうのはご愛敬。これも“最もパーソナルなことが最もクリエイティブ”な映画だ。
ラダ・ブランクは“持ってる”か?そりゃもちろん。かつて気鋭の若手と目され、大学で教え、スポークンワーズにハマった事もある40手前の僕にはとても他人事とは思えない、ハートに来る映画だったよ!
『40歳の解釈 ラダの場合』20・米
監督・出演 ラダ・ブランク
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