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ジュリー・デルピーが『ビフォア・ミッドナイト』以来の“ビフォアシリーズ”最新作に難色を示し、企画が頓挫したという報を聞いた時、僕は心底残念に思った。しかし彼女が初めてショーランナーを務めたNetflixのTVシリーズ『まさに人生は』を見ると納得だ。現在51歳、今の彼女の人生にロマンスや男性は存在していない。もしかすると“ビフォアシリーズ”の新作はもう2度とないとすら思えてしまった。
舞台はロサンゼルス。4人の女性の“中年の危機”が描かれる。仕事と子育てに追われ、自身のアイデンティティに迷うがただ1つ確実なのは男性が不要であることだ。いくつになっても自分勝手で子供じみた男たちに費やす時間はない。デルピー扮するジュスティーヌは夫に対してほとんど嫌悪のようなものすら覚えている。激しいロマンスで結ばれ、紆余曲折を得ながらパートナーと共に人生を模索…そんな“ビフォアシリーズ”のナラティヴは今の彼女にはないのだ。
そして今のデルピーは女優ではなく監督、脚本家である事に軸足を置いている。エリザベス・シューら3女優に見せ場を譲っており、自身は気取りなく等身大のオバチャンっぷりを披露。昔の作品しか見ていない人には想像もつかないだろうが、2007年の監督デビュー作『パリ、恋人たちの2日間』以来、下ネタギャグ満載のあけっぴろげさが持ちネタなのだ。
4人の女性の20年来の友情と連帯にほとんど焦点が当たらず、彼女らの人生が平行線のまま全12話に渡って語られるシーズン構成は冗長で散漫な印象は拭えない。しかしシーズン終幕、アメリカにCovid-19が拡がり始める。いよいよ映画やドラマがコロナショックを取り入れ、ひょっとすると中年の危機にある彼女たちの心象として描かれるのでは…と予感させる終わり方に俄然、シーズン2への興味が募った。
『まさに人生は』21・米、仏
監督 ジュリー・デルピー
出演 ジュリー・デルピー、エリザベス・シュー、サラ・ジョーンズ、アレクシア・ランドー、マチュー・ドゥミ、ジョヴァンニ・リビシ
※Netflixで独占配信中※
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