長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『ヤング・アダルト・ニューヨーク』

2017-12-12 | 映画レビュー(や)
ノア・バームバック監督の2014年作では再びベン・スティラーが人生の路頭に迷う。
40代も半ば、かつてはドキュメンタリー作家として脚光を浴びた事もあったが、もう8年も新作を出せていない。撮影中の素材は数百時間に及び、編集作業は迷走している。ナオミ・ワッツ扮する妻とは仲睦まじい生活だが、子宝には恵まれなかった。最近、人の親となってしまった親友との付き合いは何だか煩わしい。そんな折、彼を慕う若い映像作家夫婦と知り合ったスティラーはなんだか生活にハリが出てきて…。

寡作の作家ゆえか、バームバックの“売れない”描写は痛々しい。
生半可に成功したせいか、拗らせると意固地が過ぎてしまう。触発されて若ぶってはみたが、若者だけが持つ野心のエネルギーには到底かなうハズがない。背伸びしようが若ぶろうが、人並みにしか歳は取れないのだ。

そんな中年男の悲哀を面白おかしく見せられるのはベン・スティラーという素晴らしい喜劇俳優がいてこそだ。バームバックの分身であるスティラーが困れば困るほど可笑しい。不格好だがひたむきにローラーブレードで爆走するシーンは本作のハイライトだ。

方やアダム・ドライヴァーも大したもので、野心的で合理的な若者をマイペースに演じて場をさらう。屈託のない愛されキャラかと思えば底知れない計算高さが見え隠れし、まさにオヤジから見たコワイ若者像なのである。

 この映画の独特の面白さはスティラーが劇中で製作するドキュメンタリー映画を通じて“映画とは何か?”と自問する重層構造にある。新境地となった前作
『フランシス・ハ』を通過してバームバックはマンブルコア映画的なリアリズムと、作劇されたドラマツルギーの境目を模索していったように見える。


『ヤング・アダルト・ニューヨーク』14・米
監督 ノア・バームバック
出演 ベン・スティラー、アダム・ドライヴァー、ナオミ・ワッツ、アマンダ・セイフライド
 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『マイヤー・ウィッツ家の人... | トップ | 『ロイヤル・ナイト 英国王... »

コメントを投稿

映画レビュー(や)」カテゴリの最新記事