アマゾンプライムで何気なく見た映画、
「500ページの夢の束」(ベン・リューイン監督 2018年)
これ、すごくいいかというとかなり微妙で、万人にお勧めするほどではないのだけど、主人公が自閉症の作家志望の若い女性、ということで、私はけっこう気に入っています。
なにしろ、主人公を演じるのがダコタ・ファニングなんだもの。そして彼女が入っている施設のソーシャルワーカーが前回の「もう終わりにしよう。」にも登場したトニ・コレットなんだもの。今回のトニ・コレットは極めて普通のいい人。
ダコタ・ファニングが演じるのはウェンディという自閉症の女性。母親が亡くなり唯一の家族である姉が結婚して子どもが生まれるので、ウェンディの世話までできなくなり、ウェンディは施設に入れられます。
ウェンディはシナボンというベーカリーショップでアルバイトもしている比較的軽度の自閉症ですが、人とのコミュニケーションは苦手です。
(ちなみにシナボンはアメリカでは有名なチェーン店で「ベター・コール・ソウル」にも登場しますね)
彼女は大の「スター・トレック」ファンで、「スター・トレック」の脚本コンテストの広告を見て、応募するため脚本の執筆を始めます。
ところが締め切りに間に合わなくなり、ウェンディは施設を抜け出してロサンゼルスにあるパラマウント・ピクチャーズに直接原稿を届けるべく、数百キロの道のりを一人で出かけます。これはその道中のロードムービー。
映画としては凡庸で、ストーリーはほぼ予想通り。大きなサプライズもない。
とはいえ、ダコタ・ファニングだもの。やっぱり引き込まれてしまう。自閉症特有の無表情に独特の執着、まっすぐ目的に向かうその姿・・
世の中の常識に無知であるためにバスから放り出され、出会った人には裏切られ、散々な目にあいながらもひたすらロサンゼルスを目指す彼女の姿は、痛々しくも雄々しく勇敢です。
途中でさしはさまれる「スター・トレック」のエピソードは、「スター・トレック」ファンにはたまらないだろうけど、残念ながら、私は「スター・ウォーズ」ファンで、「スター・トレック」はそれほどでもない。
でも、スポックというユニークなキャラクターは知っています。スポックはバルカン人と地球人のハーフで、地球人から見ると自閉症的な性格の持ち主。
ウェンディの脚本の中で、スポックはウェンディが時折陥るような感情の爆発を覚え、そのコントロールに苦しむようです。
最後はお約束通りハッピーエンド。めでたしめでたしで終わるのだけど、一つだけ気になったのは、バスに同乗した親切なおばあさんはどうなったんだろうか・・
ものすごく魅力的なストーリーとは言い難いのですが、何度もいうけどダコタ・ファニングがいい。
ちょうどこれを見る直前に「宇宙戦争」(スピルバーグ監督。2005年)の冒頭部分を見ていたので(大好きな映画なので何度も見る)、ダコタ・ファニング、成長したなあ、と感慨深いものがありました。
最後の方で「スター・トレック」ファンの警官とウェンディが互いにクリンゴン語で話す場面があり、これなども「スター・トレック」ファンにはたまらないんだろうなあ。
(ちなみに、タイトルがイマイチ。ウェンディが書いた脚本は500ページではなく427ページ。原題は「Please Stand By」これは「スター・トレック」で使われる「そのまま待機せよ」という意味の言葉で、ウェディはパニックに襲われそうになると自分に向かって「Please stand by」と繰り返します)
ダコタ・ファニングが好きな人、自閉症に関心のある人、「スター・トレック」が好きな人にお勧めです。