ないない島通信

「ポケットに愛と映画を!」改め。

鬼滅の刃(原作)

2021-02-11 11:58:38 | 

「鬼滅の刃」原作マンガを娘から借りて、ついに最終巻まで読了しました。

いやあ、面白かった。けど、ちと疲れた。

最後はもうすさまじい戦いの連続でね、女性作家がよくぞここまで激しいアクションシーンを描いたものだと感心しました。

特に16巻以降は鬼と柱の壮絶な戦いのオンパレードでね、

鬼たちのそれぞれ悲惨な過去も明かされます。

あの煉獄杏寿郎を倒した猗窩座(あかざ)でさえ、実は語るも涙のストーリーが・・

とこれ以上は、ネタバレになるので・・

鬼無辻無惨は柱たちによって倒されますが柱たちもかなりのダメージを負う。生き残った者は少数・・

あの若者たち、よくぞここまで戦った。日本の今があるのは君たちのおかげだ、

と感動し、同時に、ふう、読み終えたぜ、という満足感とかなりの疲労感も。

いやあ、すごい物語です。

私が何より面白いと思ったのは、

このストーリーが古今東西の物語に登場する悪の原型をなぞっているということ。

過酷な現実に耐えられず、ダークサイドに転落し悪の権化となる、というストーリーです。

「バットマン」のジョーカーしかり、「スターウォーズ」のダースベーダーしかり。

悪人は最初から悪人として生まれたわけではない。

そこには彼をダークサイドに転落させる様々な要因があります。

冷酷な人々、非情な社会構造、不運の数々。これでもかと痛めつけられた結果、彼はダークサイドに落ちていく・・

主人公の竈門炭治郎も家族を惨殺され、ダークサイドに落ちるに十分な悲惨な目にあいますが、彼は運がいい(というか運命付けられている)。富岡義勇と出会い、また様々な師匠たちや仲間たちと出会うことで、鬼を倒す側に回ります。

でも、物語の基底にあるのは、鬼も人間も元は一緒、という感覚。日本的な濃ゆい情念です。

一方の鬼の総元締め、ラスボスに当たる鬼無辻無惨は特に悲惨な生い立ちではないようです。

弱く生まれて医者の間違った処方により鬼化する。

以来千年以上生きているというから、ヴァンパイアとしての寿命も大変長い。

彼はきわめて強力な生まれながらのサイコパスです。生きることに強く固執し、自分さえ生き延びれば他者はどうなってもいいという究極のエゴイスト。

彼に鬼化された十二鬼月たちもサイコパス的ですが、かならずしも生まれながらのサイコパスではない。

鬼無辻無惨に最も近い位置にいるのが柱の総元締めである産屋敷輝哉(お館様)。
彼らは一対であるといってもいいでしょう。

鬼無辻無惨が強くなればなるほど産屋敷家の子孫は弱くなっていく。
と同時に鬼無辻無惨を倒したいという情念は強くなっていく。
まるで天秤棒の両端のように。

鬼無辻無惨はいってみれば、産屋敷輝哉のシャドー(影)でもあるわけですね。

互いに補完しあう関係、というのは古今東西の物語の中によく登場します。

「ロード・オブ・ザ・リング」のゴラムがフロドのシャドーであるように。

「ゲド戦記」でゲドが対峙したのが彼自身の影(シャドー)であるように。

自身の影(悪)との闘いというストーリーはとてもポピュラーです。

ユングの「元型論」によると、「人間には、当人が嫌って否定する悪が、無意識の中に存在する」そうです。これが「シャドー」(影)と名づけられた元型です(元型は他にもたくさんある)。

このように「鬼滅の刃」は物語の基本構造がしっかりしているので、これほどの人気を得たのだともいえるでしょう。

鬼たちの生い立ちとその鬼化への道のりは実に興味深く、また涙を誘うのですよ。

結局のところ、愛だの善だのというお花畑の世界より、人はこうした強烈な悪に惹かれるのかもしれません。
なぜなら、私たちの無意識の奥底にはそれが眠っているから。
いつ何時目覚めるかもしれない強烈なパワーを秘めた悪が・・

幸せな人生を送っていたら、あるいは彼を助けてくれる人がいたら、ダークサイドに落ちることはなかったのに、そういう幸運にめぐりあうことがなかった不運な主人公たち。

それはとりもなおさず私たち自身の姿でもあるのですね。

私は違うわ、と言う人はとても幸運です。

というわけで、映画「鬼滅の刃/無限列車編」を見て続きを見たいと思った人、ぜひ原作本に挑戦してみてください。

ただし、けっこうグロいので心臓が弱い人にはお勧めしません。

吾峠呼世晴氏は続編は書かないと断言しているようですが、この世に悪が存在する限り、鬼たちは暗躍し続けています。第二、第三の鬼無辻無惨が現れないという保証はどこにもありません(すでにいるかも)。

「鬼滅の刃/現代編」を是非描いてほしいと思っているのは私だけじゃないはず。

期待しています。

 

というわけで、久しぶりにブログアップしました。

週一くらいで書くのは悪くないかも、と思っています。

またね。

 

コメント
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