近所のいずみホールで映画会があるというので行ってみました(国分寺親と子のよい映画を見る会主催)。
「桜色の風が咲く」(松本准平監督 2022年)
これを見て、日本に全盲全聾の大学教授がいる、ということを初めて知りました。
福島智(ふくしまさとし)
東京大学教授バリアフリー研究者、社会福祉法人全国盲ろう者協会理事。世界盲ろう者連盟アジア地域代表。世界で初めて常勤の大学教員となった盲聾者。
これは彼の半生の記録です。
3歳の時に右目の視力を失い、9歳で左目の視力も失います。
盲学校に入りますが、18歳のときに聴力も失ってしまい、実家に戻ります。
まるでヘレン・ケラーのような彼の苦悩をこれでもかと描きます。
彼を支えたのが、小雪演じる母令子、そして二人を支える父と兄二人。
この家族がねえ、いいのですよ。
時に喧嘩もし、絶望に苛まれることもあったけれど、基本的に深い愛情で結ばれ、互いに支え合ってきた。
この家族がいたからこそ、福島氏は全盲全聾の大学教授という偉業を成し遂げることができたのでしょう。
特に母令子の努力と奮闘の様は、見ていていたたまれなくなるほどです。
しかし、絶望の底から立ち上がったとき、彼は自分の使命に気づくのでした。
「僕がこういう状態になったのは、こういう僕でないとできないことがあるからじゃないだろうか」
彼は盲学校に復帰します。するとクラスメイトが彼に伝えます。
「君には思索がある」と。
そして、彼は大学受験を決意するのでした。
日本にこういう人がいて、今も大学教授として活躍している、
というのは凄いことです。この事実を知るためだけでも見てほしい映画です。
全盲全聾になった息子のために、母は指点字という方法を考案します。
両手の指を点字タイプライターのように打って、会話する方法で、これは今多くの全盲の人たちのコミュニケーション手段となっているそうです。
ただ、ちょっとね、お涙頂戴映画の気配もあって、全体的にすごく湿っぽいのが玉に瑕。
脚本をもう少し何とかできなかったのか・・とも思うけど、日本人にはこういうのが合ってるのかも。何しろ涙もろい国民性だからね。
しかし、実際のところ、障害を持つということは、お涙頂戴ではすまされないわけで。
昔、学生の頃、ちょっとだけ盲学校の生徒のお手伝いをしたことがありますが、
指先で点字を読み取るのがすっごく難しくて、点字習得をあきらめた苦い記憶があります(全盲なら絶対あきらめたりはしないわけで・・)。
こうした人たちは私たちにそれぞれの命が背負った使命というものがあるのだと教えてくれている気がします。
いずみホールの来月の上映会は、水上勉原作の映画「土を喰らう十二カ月」だそうです。
あの土井善晴先生の料理が登場します。
観に行かなくちゃ。