ないない島通信

「ポケットに愛と映画を!」改め。

華やかかりし頃・・?

2016-06-13 16:20:36 | 日本語
テレビを見ていたら、ナレーターがこんなことを言っていました。
「かつての華やかかりし頃の面影は・・」

「ん?」
『若かりし頃の面影』とはいうけど、『華やかかりし頃の面影』って言うかしら?

そこで調べてみました。
一応、日本語教師なのですが、文法学者じゃないので細かいことはよく知らないのが実情です。
でも、何となくヘンだなあという直感はあります。
以前、新聞広告に、

「たゆまなく」

という言葉が載っていて(「努力する」とかそういう言葉に続いていたと思う)
これって正しい? と思って調べたことがあります。

「たゆむ」という動詞があります。
 油断する、怠ける、張ったものがたるむ、緩む、などという意味。
「たゆむ」の未然形に助動詞「ない」がつくと、「たゆまない」となります。

「たゆまない努力」と使います。
「たゆまぬ」とも言います。「たゆまぬ努力」
また「たゆまず」もよく使いますね。
 ひるまず、ためらわず、屈せず、休まず、などの意味です。
「たゆまず努力する」

一方、
「たゆみなく」という言葉もあります。
 怠けない、心の緩むことがない、などの意味です。
「たゆみなく努力する」とも言います。
これは、
動詞「たゆむ」の連用形「たゆみ」を名詞化して「たゆみがない」とした文中の「が」を省略して
「たゆみない→たゆみなく」となったようです。

「たゆまなく」はこの2つの言葉、
「たゆまない」と「たゆみなく」
が混同された結果生まれた言葉といえるようです。

従って「たゆまなく」は正しいとは言えない。
私の直感は正しかったようです。

(日本語文法は諸説あるので、これが正解かどうかはよくわかりませんが)


さて、
「華やかかりし頃」の話に戻りますが、
その前に
「若かりし頃」の「若かりし」を分析してみたいと思います。
これは「若い」の古語「若し」から来ています。

「若し」は「ク活用」の形容詞です。
(はるか昔に習いましたね。もうすっかり忘れてますが)

この「ク活用」の形容詞「若し」の連用形である「若かり」に
過去の助動詞「き」の連体形である「し」がついたもの、それが
「若かりし」です。連体形なので「頃」に繋がります。

一方、「華やか」というのは、形容詞のように見えますが、実は「形容動詞」なんですね。

形容動詞の活用の終止形は「華やかだ」「華やかなり(古文)」です。

従って、
「華やかなりし頃」とは言いますが、
「華やかかりし頃」とは言いません。

テレビのナレーターは間違えたのです。

日本語って本当に難しいですね。


《訂正》
 ナレーターじゃなくてレポーターだったかもしれません。記憶があいまいで申し訳ありません。
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