今回は、ドラマの記者会見について、話そう。記者会見の時期は第1話の放送の約一ヶ月前、という事が多い。場所は、キー局のホールを貸して貰う事もあれば、「赤坂プリンスホテル」「ホテル・ニューオータニ」とかの宴会場を借りる場合もある。
ホテルにした方が楽なのは、いろんなアテンドをホテルがしてくれるからだ。
まず、プロデューサーと番組宣伝担当者が相談して、「会見の日時」を決める。各方面から情報を仕入れて、他の連続ドラマやイベントと重ならない様にする。重なると、次の日の「スポーツ紙」の記事が小さくなるからだ。
その後、出演者のうち、誰に出て貰うかを決める。ここで、事務所とネゴをしなければならない事もある。つまり、会見に出たいという事務所側と会見のメンバーに入れていないプロデューサーの駈け引きである。
ようやく人数が決まり、宣伝担当者が当日の「流れ」を文章にする。そこには、「誰がどこの控室」だったり、「会見前と後に流す主題歌などの音楽」だったり、様々な事が書き込まれている。基本的には、主役の控室が会見場に最も近いところになる事が多い。
出来上がった文章をプロデューサーと宣伝担当者でチェック。この時に、控室に「鏡はあるかは?」「サンドイッチやコーヒーは発注しているか?」「会見後の写真撮影での出演者の並び順と何人で撮るか」など、細かく段取りが詰められていく。
宣伝担当は、会見場の「番組名」の入った看板の発注。マイクの本数、司会のアナウンサーの手配などを固めていく。
会見当日、プロデューサーは、早めに会見場に行き、いろんな事をチェックする。「控室から会見場への動線」「トイレの位置」「司会をするアナウンサーとの打ち合わせ」等などである。後は、ホテルだったら、玄関で出演者を待ち受け、控室に一人一人案内する。
宣伝担当者は、質疑応答の時間に記者から質問が出なかった時の事を考え、2~3人の親しい記者に、会見に出る出演者全員に質問が行き渡る様に、念の為、頼んでおく。
会見が始まると、最初にプロデューサーが喋る事になる。もちろん、記者やカメラマンの興味は壇上の出演者にいっているから、かなり、耳に残る「キーワード」、つまり、記事に書きやすい言葉を入れて手短に話す。
そして、出演者それぞれが挨拶。そして、質疑応答が始まる。プライベートな質問がまずい出演者に、記者がそれを臭わせる質問をした時、司会が仕切りきれなければ、プロデューサーが「角が立たない様にやんわりと注意する事」もある。
会見が終わると、写真撮影の時間。出演者が六人だったら、最近は縦に二列、前列三人・後列三人にし、前列の出演者をイスに座らせて、撮影して貰う。以前、横に六人並べて、写真撮影したら、次の日の新聞記事の写真で両サイドの何人かがトリミングされていたのだ。事務所からは苦情が来て、困り果てた事がある。その点、二列に並んで貰って撮影すれば、トリミングがしにくい。
写真撮影で注意しなければならないのは、各事務所との話し合いで、例えば、六人全員のショットと、主役一人のショットだけしか撮影させないと事前に決めておいても、カメラマンが出演者を会見場の別の場所に連れて行って、写真を撮ろうとする事。これは、プロデューサーは身を挺して阻止しなければ、事務所との信頼関係が崩れてしまいかねない。
写真撮影が終わると、「囲み」と言って、出演者一人一人が記者に囲まれ、質問に答えるという時間になる。「囲み」をしないとあらかじめ言われた出演者は写真撮影が終われば退場となる。それ以外の出演者は「囲み取材」を受ける。この時は、宣伝担当者とプロデューサーで手分けして、それぞれの出演者のところに、ピタッとついて聞き耳を立てている。「出演者」にドラマとは関係ない、プライベート等の質問が出た時、「その質問はドラマとは関係ない事なので、御遠慮下さい」と割って入る。
記者会見の流れはざっとこんな感じ。この後、出演者に個別に取材が入っている事が多いので、それぞれの出演者に担当を決め、個別取材をスムーズに進行させていく。大概、主演の俳優さんの個別取材がいちばん多いので、プロデューサーは主演の俳優さんがホテルか局を出るまでケアする。
その頃になると、もう外は夕闇に包まれて、忙しかった一日は終わる。夜、脚本打ち合わせ等の仕事が無い時は、関係者で、ビールで乾杯。一日の労をねぎらう。
記者会見の日は一日中、神経がピーンと張り詰めているので、このビールが最高に美味く、また明日への活力となるのだ。