旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

はんなり桜と侘びの竹林と神聖と 京福・嵐山本線を完乗!

2020-04-25 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

 弥勒菩薩半跏思惟像が見る人を魅了して止まない広隆寺、その楼門前を嵐電がゴトゴト走っていく。
「嵐電」と愛称される京福電気鉄道は、四条大宮から嵐山まで、市民の生活拠点と観光スポットを結んでいる。

四条大宮ロータリーの「立ち吞み庶民」は11:00に暖簾がかかる。ちょっとした有名店らしい。
開店後まもなく伺ったから難なくカウンターに立ち位置を確保。まずはキリンラガーを注文。

"造り3種盛り" は、本マグロ、サーモン、〆サバがぶ厚く切られて満足の一皿だ。
壁一面に貼られた黄ばんだ短冊を眺めると、どうやら店で一番高価なメニューらしい。

伏見は山本本家の "神聖 濃醇" が枡に溢れて、濃厚な味と綺麗な喉ごしが美味しい。本来熱燗がお奨めらしい。
出汁が利いた "湯どうふ" は、おかかとネギと昆布がのって上品に仕上がっている。〆て1,250円は恐るべし。

昼前の一杯を愉しんだら、四条大宮から嵐電に乗車する。桜の見どころを精力的に巡るつもりだ。
となりでハイボールを飲むご主人からは、蹴上インクラインの桜を勧められたが、廻り切れるだろうか。

西大路三条から蚕ノ社までは京都市内を走る唯一の路面電車区間、市電を知らない世代としては新鮮だ。
モボ100って云う1970年代の車両がモーターを唸らせてすれ違っていった。なんだかホッとするね。
ところで嵐電カラーの「京紫」は、ほんのりと赤味を帯び、華やぎと温もりをそえてくれる日本の伝統色だ。

京紫の2両編成で春の京都を揺られて約20分、斎宮神社、車折神社、鹿王院を擦り抜けて嵐山へ。
終点では京友禅の600本もの色艶やかなポールを林に見立てた「キモノフォレスト」に迎えられる。

キモノフォレストは、はんなりほっこり駅を廻り、さくらの庭・もみじの庭でシダレザクラとのコラボも美しい。

 紅がらの嵐山駅を抜けたら、ソメイヨシノが咲き乱れる塔頭子院を横目に天龍寺を訪ねる。
暦応2年(1339年)、天龍寺は足利尊氏を開基とし、後醍醐天皇の菩提を弔うため、夢窓疎石をして開かれた。
後醍醐天皇を祀る多宝殿の前に、ひときわ美しい「枝垂れ桜」が、薄い西日に照らされ、花糸を垂れていた。

多宝殿から百花苑を経て北門を出ると、野宮神社から大河内山荘へと延びる「竹林の道」に出る。
空を覆う青いトンネル、差し込む木漏れ日、カコン、カコーンと竹がぶつかる音、揺れる葉音、
はんなり桜、のち、侘びの竹林、陰陽の対比も愉しい嵯峨野嵐山、小さな嵐電の旅が終わる。

京福電気鉄道・嵐山本線 四条大宮~嵐山 7.2km 完乗 

京都幕情 / 石井竜也 



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