旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

大人の休日は三陸海岸へ 気仙沼線を完乗!

2019-06-30 | 呑み鉄放浪記

 大人の休日、小牛田から乗って来た女川行きの気動車を見送る。
ここ前谷地から気仙沼線の旅を始める。とは云っても柳津行きは1時間後だ。 

 

でっぶらり町歩き、申し訳程度の駅前通りを抜けると田植えを終えた田園風景が広がる。
駅から10分、国指定名勝・齊藤庭園が一般公開されている。東北三大地主の家だそうだ。 

 

汗ばんで駅に戻る。列車が来ない時間帯は閑散とした駅、駅員さんは弁当を使っている。
3番線の向こう側に見える白杭は、気仙沼線の起点を示す0キロポストだ。

そうこうするうちに2番線に列車が入って来た。10:59発の柳津行きは単行気動車だ。 
急ぎ跨線橋を渡ってデッキに飛び乗ると、程なくガクンとディーゼルは動き出す。 

東北最大の北上川は折からの大雨で、濁った水が堤防を越えよとばかり流れて行く。
北上川橋りょうを渡った柳津駅で、鉄路は突然に途切れている。起点から僅か17.5kmだ。 

柳津駅に寂しく佇む単行気動車、ここから先の区間は3.11以来不通になったままだ。
この先気仙沼までは、BRT(バス高速輸送システム)で仮復旧している。 

赤いJRバスが、線路跡を舗装した専用道路を往く。
陸前戸倉を過ぎると車窓に志津川湾が広がり、堤防や高架道路の槌音が響く。
分かっていたこととは言えやはり言葉が見つからない。旅人はただ祈るしかない。 

本吉で途中下車してみる。5分後を走る始発の便があるからだ。
この静かな町には県立高校があるようだ。座席の半分を満たすほどの高校生が乗ってきた。
土曜日だというのに、補講だろうか。素朴な生徒が単語帳を捲っている。 

 

終着駅の気仙沼には "ピカチュウ" が居る。一ノ関から "ポケモントレイン" が走るからだ。
前谷地から気仙沼までは、およそ2時間半の列車とBRTの旅になる。 

 湊へと続く坂道を下って、気仙沼市街地に「男山本店」を訪ねる。
文化財であった木造3階建ての本社屋は流出したものの、仕込水の井戸は無事だったと云う。
"伏見男山" は日本有数の湊町に集う漁師たちにぴったりの銘柄ではないだろうか。 

 

もうひとつの銘柄は "蒼天伝"、Legend of blue sky and sea、気仙沼の青い空、青い海を
「爽やかで澄んだ香りと味わい」で表現している。
四季折々に食卓に上がる新鮮な海の幸にマッチした食中酒を試飲させていただいた。 

その新鮮な肴を水揚げした漁船群が湊に係留されている。今は戦士の休息ってところか。 

 

親潮と黒潮が交わる三陸沖に臨む港町・気仙沼に来たからにはスシ食いねェ!
創業50余年、地元で人気の寿司処「あさひ鮨」を訪ねる。
先ずは生ビール、お通しの "マグロ角煮" が絶品。つまみに良いところを切ってもらう。

 

気仙沼のもう一つの蔵「角星」の酒、"金紋両国 別格" は飲み飽きしない端麗辛口だ。
大将の十貫が端正な黒の大皿に並ぶと、気仙沼線の旅もそろそろ終わりをむかえる。
否、三陸を巡る大人の休日は、まだ始まったばかりなのだ。

気仙沼線 前谷地~気仙沼 72.8km 完乗 

祈り / 長渕剛 1979



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