轟音をたてて布施川橋りょうを渡るのは、宇奈月温泉発、立山行きの “特急アルペン2号”。
何処かでお会いしましたっけ、そう西武鉄道を走っていたレッドアローの車両だ。
まだ真夏日が続いている頃のお話、早朝、ホテルのベットを抜け出して富山駅にやって来た。
まだ灯っている「電鉄富山駅」のサインが新幹線ホームのガラス壁面に映り込んでいる。
週末の富山06:40発の普通111列車は、“特急アルペン” の送り込みで、特急車両で運用される。
懐かしのレッドアローで、富山地鉄本線で呑む旅に出る。
いかにも水戸岡鋭治氏らしい車両は、木をふんだんに使ったインテリアで温かみと高級感に溢れている。
外向きのカウンター席に座ったり、コンパートメントシートに座ったり、空いているから自由自在だ。
カポッと “剱岳”。コクのある特別本醸造と、なとりの “チータラ・ピスタチオ” がいい感じだ。
車窓を流れる、時間が止まったかのような、週末の田園風景を眺めながらの一杯なのだ。
せっかくのラグジュアリーな観光列車だけど、ワンカップも空いたことだし、電鉄魚津で降りてしまう。
せっかくの富山だから、海も眺めておきたい。
どこまでも穏やかに碧い富山湾、左手で腰を抱き込むように能登半島が伸びている。
ここは蜃気楼展望の丘、3〜6月には幻想的な蜃気楼を鑑賞できるベストスポットだ。
少々南に歩を進めると魚津漁港が掘り込まれている。
漁船が出払った長閑な港には、カモメに混ざってサギも舞い遊んでいる。
不釣り合いなと云ったら失礼だこど、洒落たミントグリーンのレストランがある。
漁協直営の「魚津丸食堂」で静かな海を眺めながら、キリンラガーをグラスに注ぐ。
富山湾で獲れた旬の海の幸を、刺身にして、フライにして、満足なブランチが楽しい。
富山湾や清らかな水をイメージした青は、J3に所属するカターレ富山のチームカラー。
このカターレ富山をラッピングした14760形は富山地方鉄道のオリジナル車両。
鉄道友の会より贈られるローレル賞を受賞した車両はすでに不惑を迎えている。
河原の丸石を積み上げたホームにプレハブの待合室をちょこんと載せた長屋駅。
この旧い駅には対照的な真新しい広告版が立っている。「振り向けばギンバン」だって。
っで、振り向くと田圃の中に銀盤酒造、実はここ、朝っぱらの車中酒 “剱岳” の蔵元なのだ。
酒蔵の前では、黒部川扇状地湧水群の一つ「箱根清水(はこねしょうず)」が湧く。なるほど納得だ。
長屋駅のひとつ先は新黒部駅。たぶん富山地方鉄道では、最も新しい駅ではないだろうか。
新黒部駅は北陸新幹線を降りた乗客を宇奈月温泉へと誘うのだ。
県道を挟んで反対側の巨大な構造物は黒部宇奈月温泉駅、暫し “はくたか” でやってくる連れを待つ。
駅前広場には黒部川流域の電源開発のために活躍したED8号電気機関車と客車が展示されている。
富山地鉄本線の旅のアンカーKU21列車がやって来た。
オレンジとレッドのツートンに鳩マーク、まさに京阪特急だね。関西から来た方、懐かしいんじゃないかな。
左手に黒部川を見て、京阪特急は関西では経験しないような急勾配を、甲高い金属音をたてて走る。
特急扱いのKU21列車は、所要17分、ノンストップで宇奈月温泉まで登り切った。
何人かのご同輩が京阪特急にシャッターを切る終着駅。ほら、やっぱり懐かしいでしょう。
山小屋風の駅舎の階段を降りると温泉噴水、がっ迂闊に手を出してはいけない。これかなり熱い。
思いがけず西武特急と京阪特急に乗った富山地鉄本線の旅は、温泉噴水の洗礼を受けてここに終わる。
さてと、缶ビールを買い込んだら、次は黒部峡谷鉄道で呑む旅が始まるのだ。
富山地方鉄道・本線 電鉄富山〜宇奈月温泉 53.3km 完乗
<40年前に街で流れたJ-POP>
瞳はダイアモンド〜Diamond Eyes〜 / 松田聖子 1983
新幹線からではまじかに見られません。
宇奈月隠田に泊まって トロッコ列車に乗るために
新黒部駅〜宇奈月温泉 ちょっと完乗しました。
2日前 京阪特急で 四条から淀屋橋まで乗っていました。
この田舎の小さい駅の雰囲気も好きです
立山連峰に雪が残る季節が良いのかなぁと思いつつも、
機会があり出かけてきました。
なかなか豊さを感じる富山平野ですね。
ご訪問ありがとうございます。
富山地方鉄道は懐かしい車両で溢れていてなんだか動く鉄道博物館のようです。
裏返すと、地方私鉄がオリジナル車両を製造できない、厳しい現実も透けて見えます。
とはいえ、オレンジとレッドは富山平野に馴染んでいました。