青白い光を放っているのは、昨シーズン降り積もった雪。
明治31年築の重厚な石蔵は大量の雪を抱え込んで、室温10~15℃は快適と云うより寒い。
市の指定文化財に登録されたこの第二号石蔵の半分は、ワインの樽熟成庫になっている。
雪室から引きこむ冷気の下、横たわる樽たちの中ではマスカット・ベーリーAが眠っている。
マスカット・ベーリーAを世に送り出したのは、日本のワインぶどうの父 川上善兵衛。
翁が開設したのが「岩の原葡萄園」であり、この品種のふるさとでもある。
華やかな香りと深みある "マスカット・ベーリーA" をちょっとだけ(香りだけ)愉しむ。
頸城平野を見下ろす斜面では紫の房が夏の日に煌めいて、収穫の時を待っているのだ。
パープルタウン / 八神純子 1980