風の音しかしない静かな駅、列車交換のために2両の125系が少々長めの停車をしている。
南から延びてきた尾根が何本かそのまま海に落ち込んでいて、その合間から青い日本海が覗いているね。
秋の乗り放題パス(連続する3日間)を握りしめて、北陸新幹線工事の槌音響く敦賀までやってきた。
小一時間の待ち合わせ、先ずは佐渡酒造先生に手を合わせる。今回も美味しいお酒と巡り会えますように。
かつてはホームにあったのかな?気比そばあまので “おろしそば” をいただく。ちょっと辛味が美味しい。
「これは “越前そば” ですか?」と呑み人、「いいえ、ここは “若狭” ですからね」と笑顔でお姐さん。
やっ、やっちまった。でも旅人の無知は時としてなごみを生むね。
漸く1番線に932Mが入線してきた。このブルーフェイスの2両編成で小浜線をゆく。
ローカル専用の125系は単行できるように両側に運転台、後から無理やり設置した感じのトイレがあって、
そのせいか座席と窓の位置が合ってなかったり、なんだか中途半端な作りなのだ。
河口が近いというのに川の流れが急だ。美浜駅に到着する前に海が覗いた。秋の日本海が青く穏やかだ。
列車交換する十村駅、ボックスをシェアしていた高校生がたった一人降りていった。静かに時間が流れている。
背景の山並みは福井と滋賀の県境の山、鯖街道もこの山の連なりを越えてゆくのだ。
カポっとワンカップを開ける。独りになったからね。“早瀬浦” は美浜の三宅彦右衛門酒造の酒だ。
しっかりした味わいは、漁師たちの酒って感じだろうか。呑みごたえがあるね。
沿線の中心駅小浜に途中下車してみる。
八ヶ寺をめぐるか、蘇洞門めぐりの遊覧船に乗るか、いずれかが小浜観光の常道だろうがその時間はない。
次の電車までは1時間半、小浜の古い町並みを歩いてみようと思う。
小浜には、人魚の肉を口にして、若く美しいまま不老不死になった八百比丘尼の伝承が伝わる。
マーメイドテラスは、美と長寿を願うモニュメントとして、二人の人魚が小浜湾に臨んでいる。
狭い路地にベンガラ格子や出格子の家が軒を連ねるのは、小浜西組の三丁町(さんちょうまち)だ。
まるで京都の路地に迷い込んだような気分になるね。家々に灯がともる時刻に歩いてみたいものだ。
この町並みを少々外れるとフォトジェニックな庚申堂がある。
ひっそりとしたお堂に色とりどりの「身代わり猿」が吊り下げられている。飛騨地方のさるぼぼに似ているね。
後続の934Mは16:55発、当然に高校生中学生でいっぱいになる。この状態は首都圏の通勤時間帯と変わらない。
小浜湾に夜が訪れる。マジックアワーが過ぎて半島や小さな島々が漆黒に沈んでいく。もう少し見ていたい。
ブルーフェイスの2両編成は敦賀から2時間、若狭湾とともに緩やかに弧を描いて舞鶴に到着する。
一本の鉄路ではあるけれど、ここから西は舞鶴線として別の運用となる。ここが小浜線の旅の終わりだ。
真っ暗なのを承知で舞鶴港まで足を伸ばす。夜の闇に浮かび上がった「赤れんが倉庫」が美しく幻想的だ。
小浜線 敦賀〜東舞鶴 84.3km 完乗
<40年前に街で流れたJ-POP>
miss you / Hi Fi Set 1982
こんばんは。過分なコメントをいただき恐縮です。
乗って、呑んで、感じるまま綴っております。
時折でも、お訪ねいただけると嬉しいです。
よろしくお願いします。
いつも、とてもステキな文章ですね!