プァ〜ンと低い警笛を鳴らして、縹色(はなだいろ)を引いた23系6連の電車が西梅田を発車する。
形式は違えど、御堂筋線や谷町線の電車と顔がよく似ている。
四つ橋線の起点となる西梅田は、東隣りを走る御堂筋線の梅田と比べて落ち着いた雰囲気がある。
それは四つ橋筋を挟んで向かい合うヒルトンプラザが醸し出しているのかも知れない。
ヒルトン大阪脇のC-30を降りると、ハイソな地下街にコテコテな西梅田駅がぽっかり口を開けている。
改札を抜けて階段でさらに降りると、無機質なプラットホームに、ちょうど住之江公園ゆきが入ってきた。
ということで、今回は10キロ少々、ちょっと短い四つ橋線を旅する。
本町で途中下車して心斎橋筋商店街の「味万本店」を訪ねる。
いつの間にか出張の旅に伺うようになったこの店、ふんわりお揚げの “きつねうどん” が美味しい。
中央線、御堂筋線と連絡する本町は乗降客が多い。お腹を満たして旅を再開、でも乗るのはたった一区間。
四つ橋筋や四つ橋線の語源となったのは、もちろん「四ツ橋」ということになる。
長堀川と西横堀川が十字に交差したこの地に、ロの字型に4つの橋が架けられていたという。
江戸期、4つの橋とその下の堀川を、物資を積んだ舟が行き交う光景は、名所に相応しいものだったろう。
四ツ橋を出た縹色のラインは、なんばを掠め、唐突に臙脂色の電車と並走すると大国町。
どうやら御堂筋線が四つ橋線を内側に挟み込む配置になっていて、同一方向同士の列車の乗換えが便利だ。
東京で言うと赤坂見附の丸の内線と銀座線の同じようだね。
四つ橋線の6両編成は、なんばから先は乗客を減らしつつ、片手分の指を折ったころ住之江公園に終着する。
おやおやリュックを背負った子どもたちが降りてきたけれど、この辺りに遊べるところがあるのだろうか。
住之江公園でBBQか、それとも南港からフェリーで家族旅行か。笑顔と歓声に癒される。
地上に這い出ると電車が潜ってきた新なにわ筋の東側はこんもりした森のように見える。
広大な住之江公園の一角は大阪護国神社になっていて、日章旗と旭日旗が翻っていた。
西側の巨大なスタンドは BOAT RACE 住之江、橙色や黄色が咲き誇る花壇に沿って進んでみる。
この日はレースは無いようだけど、多くのファンが腕組みをして大きなスクリーンに集中しているのだ。
開店時間に合わせて「喜世」を訪ねる。マンション1階の落ち着いた感じのお店だ。
お通しの “つぶ貝煮” を穿り出していると、“本マグロ” の皿が登場。この赤がキレイだ。
今宵は獣たちの夏酒シリーズを勝手に開催する。先ずは出荷されたばかりの “春鹿の夏しか”。
吟醸香が華やかで、喉越し爽やかな純米吟醸は、花冷えくらいで呑みたい。
っで、ふた皿めは “茄子と合鴨揚げ出し”、青磁の器になす田楽、合鴨をのせたら、とろり出汁あんかけ、
青ネギを散らして美しい。これって料亭の一品って感じでしょう。
二杯目の “千歳鶴 夏ひぐま” を升に溢してもらう。この瞬間この感じが嬉しい。
北海道産のきたしずくで醸したやはり純米吟醸は爽快辛口の酒、これも美味い。
アテは酒のイメージに合わせて “子持ちししゃも焼き”、北のクマたちも齧っているだろうか。
涼しげなペンギンのラベルは京丹後の酒 “Ice Breaker”、清涼感のある爽やかな香りの無濾過生原酒。
ロックで飲んでも美味しいと言うから、今度試してみたい。
〆の煮麺は醤油味のだし汁に、鶏肉、うずら、シイタケをのせて、これも料亭クオリティ。旨い。
縹色の電車に乗って、青色ラベルの夏酒を愉しんで、美味しい初夏の四つ橋線の旅は暮れるのです。
大阪市高速電気軌道 四つ橋線 西梅田〜住之江公園 11.4km 完乗
大阪恋物語 / やしきたかじん