ガタガタとガーダーを鳴らして2連接の3000形電車が遠賀川の鉄橋を渡る。間も無く終点の筑豊直方だ。
筑豊電気鉄道は意外にも戦後の会社設立、全線開通は1956年、戦争を知らない電車たちなのだ。
橋上駅のJR黒崎駅は南口にペデストリアンデッキが広がる。さすがは政令指定都市だと思う。
ランドマークとも言えるCOM CITY(八幡西区役所)、ちくてつ電車はこのビルディングの1階から発車する。
起終点らしい頭端式ホームに鮮やかなグリーンに塗られた5002編成が停車中。
近ごろ見直されているライトレール(LRT)のようなスマートな超低床型電車で、まずは途中の筑豊中間へ向かう。
筑豊電気鉄道線は標準軌で全線複線の専用線、れっきとした鉄道事業だけれど、軌道用の電車を走らせているのは、
西鉄北九州線(市内電車)が乗り入れていたからだろうか。路面電車型の車両が専用線を60km/hで爆走する。
黒崎駅前の再開発から外れた一角に「エビス屋昼夜食堂」がある。日本有数の工業地帯、工場や港湾で働く
労働者を安価でボリュームのある食事で支えた町の食堂は24時間営業、豊富なメニューが並んでいる。
当然に昼呑みの余所者にだって優しいはずだ。11時過ぎ、ちょっと勇気を出して引き戸を開けてみる。
キリンラガーを開けてもらう。店名が描かれたグラスが昭和っぽさ全開で嬉しい。貰って帰りたいくらいだ。
お惣菜が並ぶカウンター上のケースからはボリュームたっぷりの “マカロニサラダ” を択ぶ。
そして “クジラ南蛮” 登場、素朴な味わいの一昔前のご馳走をケチャップをつけて堪能する。元気出ちゃうなぁ。
筑豊中間で待つこと15分、後続のちょっと古いタイプの3000形電車、これで終点の筑豊直方をめざす。
緩やかな右カーヴを描きなだら堤防を駆け上がる。っと急に視界が開けてガタゴトと遠賀川橋梁を渡る。
昭和30年代まで鉱山廃水により黒く汚れていた遠賀川は、現在では九州で唯一の鮭が遡上する川だと云う。
3000形電車は堤防の高さを保ったまま高架になった筑豊直方駅に、甲高いブレーキ音を響かせ終着した。
北九州(黒崎)から筑豊を経て福岡へ至る鉄道の計画は、長大な八木山峠のトンネルを掘る資金力がなく挫折した。
町を貫く県道に突き刺さるような駅の構造は、未だに福岡まで延伸する夢を見続けている様にも思える。
筑豊電気鉄道線 黒崎駅前〜筑豊直方 16.0km 完乗
<40年前に街で流れたJ-POP>
ギャランドゥ / 西城秀樹 1983