感染対策が経済効果を生む・・・

 　先般、わが購読紙に、名古屋商科大教授・原田泰氏の『コロナと財政出動』と題する記事が掲載された。その中に「感染対策が経済効果を生む」とあり、興味深く読んだ。（一部抜粋）
　日本の国と地方を合わせた長期債務残高は1200兆円を超え、国内総生産の約2. 2倍になる。この赤字は新型コロナウイルス感染症ショックの中でさらに増大している。2020年度の補正予算を含めた一般会計歳出は175兆円、19年度の105兆円より70兆円も大きい。21年度の政府支出も20年度と同じくらいになるだろう。つまり、日本の政府債務残高はさらに膨らみ続けるということだ。これほど財政状況が厳しい中で、政府はどれだけのコロナ対策ができるだろうか。―中略―
　経済が落ち込んでいるのは、ウイルスとの接触を避けるために、人々が外出や人と会う機会を減らしているからで、旅行や外食業界が大打撃を受け、それがあらゆる産業に波及している。通常の不況であれば、仕事をつくることが対策になるが、この不況は、まず所得を補助することが対策になる。―中略―
　政府が命を守ることに成功すれば、その経済効果は大きい。生きていて健康であれば、人は働き、税金と社会保険料を払うものである。ワクチン接種に１人１万円かかっても１兆円余りである。１兆円で経済活動を元に戻すことができれば、増税しなくても、そのぐらいの税収はすぐに戻る。すなわち、政府が賢く使えば税収が増える可能性が高い。しかし、賢くない使い方もある。「GO TO トラベル」や「GO TO イート」だ。人との接触が感染の原因なのに、税金を使って感染を広め、結果として再び緊急事態宣言で経済を落ち込ませることになる。
　政府がお金を使わなければ財政状況が良くなるわけではない。なぜなら、政府が人々を助けなければ、人々は感染しても働いても感染症を広め、多くの人が命を落とす。多くの人が死亡する事態となれば、人々は感染を恐れて外出せず、人と会わないようになる。つまり、経済は縮小する。
　一方、政府が必要な支出をすれば、死者は減り、所得は維持できる。必要な支出をしている方が財政状況は悪化しない。要するに、政府が、感染症が広がらないように、人々が感染症から回復できるようにお金を使っている限り、その支出はかならず税金として戻ってくる。赤字でも政府は人々を助けることができる。
　「なるほど」と思うところもある。が、賢い使い方とは、必要な支出とは、具体的にはどういうことなのか、それが知りたいし、良案があれば政府に進言すべきではないかとも思った。
　
　感染拡大が止まらない。緊急事態宣言を３月21日に解除してから３週間しか経っていないのにこの状況である。それに、頼みの綱のワクチン接種は、なぜ日本だけこんなに遅れているのか、これははっきり言って政府の責任である。
　これまで政府が「感染症が広がらないように、人々が感染症から回復できるように」努力してきたことは認める。が、どんなにお願いしても国民には「馬の耳に念仏」、「笛吹けども踊らず」だ。もはやお願いなどと悠長なことを言っている時ではない。
　橋下徹氏も言っている。「政府のやる気で法律を作り、法的な義務化に踏み込まないと（感染拡大は）止まらない。飲食店のアクリル板設置やマスク会食も、高齢者施設でのPCR検査の徹底実施も、重症化ベッドの数を増やすのも、すべては早急に法律を作らないと進まない」と。至極ごもっとも！　私も、もっと厳しく統制すべきではないかと思う。
　どんなに店舗側の感染対策が万全でも、無症状や軽症の客がウイルスをばら撒いても分からなければ防ぎようがない。また、ルールをきちんと守らない客への対応は？　など色々大変だ。いっそのこと、思い切って一斉休業にしてはどうか？　もちろん国の十分な休業支援があっての話だが、それで感染者数減となればよし、ダメならまた別の対策を考えればいい。時には荒療治も必要だ。
　話は変わるが、前から不思議に思っていることがある。コロナウイルスとの闘いから１年余り、その間、パチンコ店でクラスターが発生したという話は一度も聞いたことがない。店内が密になっても、みんなマスクをしてパチンコ台とにらめっこ。隣の人と話す余裕などないからかな？　要するに、ちゃんとマスクをして、だれともおしゃべりをしなければ大丈夫ということか？　そうなると世の中静かになるなあ。