
植物の名前にハクサン、オゼ、シラネなど地名を冠したものが多くある。戸隠の山を歩きたいと思っていた動機のひとつに“トガクシショウマを見たい”があった。自生しているこの種を見ることは難しいのだそうだが、歩いていると出会えたらいいなと思ってしまう。咲く時期のことなどお構いなしだ。戸隠を冠したトガクシショウマが、尾瀬にも咲いているそうだ。
「トガクシコゴメグサ」はゴマノハグサ科コゴメグサ属の一年草。八方睨が近い鎖場に咲いていた。どこかで最近見たような花とおもいながら調べると、至仏でホソバコゴメグサを撮っていた。ネットで調べるとトガクシを冠したコゴメグサがあると知って嬉しくなった。ミヤマコゴメグサの変種なのだそうだが、決め手は葉の先が2-4の鋸葉になっていること。確認するとそうなっている。草丈は10-20センチほどで、小さな白い花をつける。戸隠の山だけでなく、ミヤマコゴメグサが自生する地域に生えると言う。
「サラシナショウマ」はキンポウゲ科サラシナショウマ属の多年草。戸隠牧場への下山道で撮った。更科地方(長野県の長野市と千曲市の一部)に多いことからこの名がついたと覚えていた。“本場のサラシナショウマ”。
調べて見ると面白い。更科は更級とも書き長野県の一部を現す他に、蕎麦にかかる枕詞など。いずれにせよ長野県に関わっているようだ。サラシナショウマも漢字で表すと、それぞれ「晒菜」と「更科(更級)」に“升麻”を加える。
晒菜は茹でた菜(サラシナショウマ)を水に浸して食べることからこう呼ぶ。更科はこの地方に多いことからだろう。升麻は生薬で、解熱や解毒などの漢方薬に含まれているのだということを現しているようだ。
