昼休み。借りてきた「ちくま日本文学全集 島尾敏雄」を何気なく読んでみた。別の本でこの人の「摩天楼」という作品を初めて読んだ時から、なにか妙に気にかかる。何が気にかかっているのかと思ったら、それは多分、この人の文章が気にかかるようだ。とても読みやすい美しい文章。そして、美しい言葉からなる恐ろしく孤独な物語。どうしてこんなに孤独なのか。いや、どうして孤独なのかは少しは分かる気がする。分からないのは、どうしてこんなに美しいのかということかもしれない。
「島の果て」というほんの短い作品を、休み時間のあいだに読むことができた。何もかもがあまりに悲しくて美しいので、泣いてしまいそうになるというよりも、むしろ感情がゆき過ぎて金縛りにあったようだった。まだ午後から仕事が残っているのに困ったな。
仕事帰りに、予約しておいた本を取りに図書館へ行った。少しずつ日が長くなってきてはいるが、建物の外に出るともう暗かった。既に借りている一冊の延長を申請し、新しい本も借りてきた。
図書館を出たところの階段を上がると、小さな丘のような形をしている公園の最上部へと出られる。昼間ならばベンチで休んでいる人がちらほらいるが、もう夜なので、誰もいなかった。
木々の間を抜ける小道を下ろうとすると、ビルの向こう、東の空45度ほどの位置に、まだ少し黄色い月がびかびか光っているのが見えた。
こんな日に、こんな時間に月を見たりしてはいけなかったかもしれない。と思ったが、もう遅い。ひとりで、誰と分ち合うこともなく月を見上げていたら、ものすごい絶頂感がやってきた。真っ白だったあの時と、燃えるようだったあの時に続き、この月の色もきっと忘れられない月の色になる。
「島の果て」というほんの短い作品を、休み時間のあいだに読むことができた。何もかもがあまりに悲しくて美しいので、泣いてしまいそうになるというよりも、むしろ感情がゆき過ぎて金縛りにあったようだった。まだ午後から仕事が残っているのに困ったな。
仕事帰りに、予約しておいた本を取りに図書館へ行った。少しずつ日が長くなってきてはいるが、建物の外に出るともう暗かった。既に借りている一冊の延長を申請し、新しい本も借りてきた。
図書館を出たところの階段を上がると、小さな丘のような形をしている公園の最上部へと出られる。昼間ならばベンチで休んでいる人がちらほらいるが、もう夜なので、誰もいなかった。
木々の間を抜ける小道を下ろうとすると、ビルの向こう、東の空45度ほどの位置に、まだ少し黄色い月がびかびか光っているのが見えた。
こんな日に、こんな時間に月を見たりしてはいけなかったかもしれない。と思ったが、もう遅い。ひとりで、誰と分ち合うこともなく月を見上げていたら、ものすごい絶頂感がやってきた。真っ白だったあの時と、燃えるようだったあの時に続き、この月の色もきっと忘れられない月の色になる。