沖縄のごみ問題を考える

一般廃棄物の適正な処理に対する国の施策と県の施策と市町村の施策を比較しながら「沖縄のごみ問題」を考えるブログです。

中北組合のごみ処理施設(青葉苑)の廃止についての検証

2016-02-07 23:53:46 | ごみ処理計画

このブログの管理者は、浦添市と中北組合(中城村及び北中城村)の広域処理については、中北組合が溶融炉の廃止に伴う代替措置を講じなければ地域計画(ごみ処理施設の整備に当たって国の補助金を利用するために廃棄物処理法の基本方針に従って市町村が策定する計画)を策定するときに組合のごみ処理施設(青葉苑)を廃止することになると考えています。

そこで、今日は中城村と北中城村の住民になったつもりで、その検証をしてみたいと思います。

広域組合を設立する場合は広域組合を設立する前に関係市町村が共同で地域計画を策定して国(環境省)の承認を受けることになっています。その理由は、広域施設を整備するときに国の補助金を利用できるという担保を先に確保しておく必要があるからです。

では、なぜ、中北組合はまだ使えるごみ処理施設を広域組合を設立する前に廃止しなければならないのか?

その検証をこれから行います。なお、この検証は、①中北組合が廃棄物処理法の基本方針を遵守することと、②広域組合が国の補助金を利用して広域施設を整備することを大前提にしています。

まず、下の画像をご覧下さい。これは、現在(平成27年度)の中北組合のごみ処理計画の概要です。一番下にある地域計画を策定する時期(平成29年度)は、広域処理に関する新聞報道を根拠にしています。浦添市のごみ処理施設の老朽化の状況を考えるとスケジュール的には確かにこの頃が地域計画を策定する時期になります。

原寸大の資料(画像をクリック)

上の画像にあるように、中北組合は平成26年度から溶融炉を休止して焼却灰の民間委託処分を行っています。しかし、このごみ処理計画は廃棄物処理法の基本方針に適合していないので、浦添市との1市2村において地域計画を策定するときには事前にごみ処理計画の見直しを行わなければなりません。見直しを行わない場合は地域計画を策定することができないので、その時点で広域処理は「白紙撤回」になります。と言うよりも、中北組合がごみ処理計画を見直さない場合は広域処理を選択肢にすることさえもできないことになります。したがって、中北組合が広域処理を選択肢にする場合はごみ処理計画の見直しが絶対条件になります。

次に、下の画像をご覧下さい。これは、まず誰もが最初に考えるシンプルな見直し案です。

原寸大の資料(画像をクリック)

この見直し案は、廃棄物処理法の基本方針に従って休止している溶融炉を再稼動して焼却灰の民間委託処分を中止するという見直し案です。つまり、中北組合にとっては約2年前に改正したごみ処理計画を元の計画に戻すことになります。ただし、この見直し案を採用すると再稼動した溶融炉を廃棄物処理法の基本方針に従って焼却炉と一緒に長寿命化しなければなりません。ところが、このブログに何度も書いてきましたが、中北組合の溶融炉は国内で稼動している事例や長寿命化が行われた事例のない極めて特殊なものであり、事故や故障等のリスクも高いので、中北組合だけの判断で再稼動することはできません。なぜなら、広域組合を設立すると中北組合の溶融炉は広域組合の施設になるからです。したがって、再稼動する場合は浦添市の同意が必要になります。

しかし、このブログの管理者は浦添市は同意しないと考えています。その理由は浦添市民にとって国内で稼動している事例のない溶融炉を再稼動して長寿命化を行うことはリスクが大きすぎるからです。万が一、広域施設が完成する前に事故や故障等により溶融炉が使用できなくなった場合は広域処理のスケジュールが大幅に遅れることになり、その分、浦添市のごみ処理施設の老朽化も進むことになります。浦添市も溶融炉を整備していますが、長寿命化を行った後の老朽化に関するリスクについては事例が少ないために想定外のトラブルが発生する可能性があります。

おそらく、この見直し案については中北組合も選択肢から除外していると思われます。なぜなら、中北組合が誰よりも一番溶融炉を再稼動するリスクを知っているからです。

そうなると、溶融炉を廃止するための代替措置を講じない場合は、下の画像のように広域組合を設立する前に中北組合が組合のごみ処理施設(青葉苑)を廃止する見直し案しか残っていないことになります。

原寸大の資料(画像をクリック)

はたして、中北組合がここまで覚悟を決めているかどうかは分かりませんが、溶融炉の再稼動を回避して今のごみ処理計画を廃棄物処理法の基本方針に適合させるには、中北組合がごみ処理施設を所有していない自治体にならなければなりません。仮に中北組合が焼却炉と建物だけを所有している場合は焼却灰の民間委託処分を続けることになるので、基本方針に適合しないことになります。しかし、この見直し案にもリスクがあります。それは、国内でこのようなごみ処理計画の見直しを行った市町村は多分事例がないと思われるからです。

なお、中北組合がこの見直し案を選択すると間違いなく補助金の返還が必要になります。なぜなら、わずか13年ほど前(平成15年度)に国の補助金を利用して整備したごみ処理施設を長寿命化も行わずに建物ごと廃止することになるからです。仮に中北組合が補助金を返還せずに国の補助金を利用して新しいごみ処理施設(広域施設)を整備することができるとしたら、他の市町村の多くが追随することになるでしょう。そうなったら、国の予算はあっという間に底をついてしまいます。

さらに、この見直し案にはもう1つ大きなリスクがあります。中北組合がごみ処理施設(青葉苑)を廃止すれば溶融炉も自動的に廃止することができます。しかし、可燃ごみの焼却は中止することができないので、廃止したごみ処理施設の焼却炉と建物を民間に無償譲渡して中城村と北中城村から排出される可燃ごみの処理を委託することになります。つまり、この見直し案を採用すると広域組合には広域施設が完成するまでの間、可燃ごみの一部(約3.5万人分)を民間に委託して焼却するという新たなリスクが発生することになります。ここで民間委託のリスクについて書くつもりはありませんが、中北組合がこの見直し案を採用した場合は民間委託に対するリスクの全てが広域組合のリスクに移行することになります。

なお、この見直し案については採用する前に地域計画を審査する環境省の確認を受けておく必要があると考えます。理論上は可能な見直し案ですが、国から見るとかなり変則的な見直し案になるので環境省がどう判断するかはこのブログの管理者にも分かりません。

以上により、中北組合が広域処理を選択肢にする場合は広域組合を設立する前に中北組合のごみ処理施設(青葉苑)を廃止しなければならないことが、ほぼ確実な状況になっていると考えます。

しかし、なぜ、中北組合はこんな状況になってしまったのか?

それは、およそ2年前に廃棄物処理法の基本方針に適合しないごみ処理計画を選択した自治体が、今度は廃棄物処理法の基本方針に適合するごみ処理計画を選択することになったからです。

ちなみに、浦添市は中北組合の約1年前(平成14年度)に溶融炉を整備して平成24年度に廃棄物処理法の基本方針に従って焼却炉と溶融炉の長寿命化を行っていますが、中北組合が浦添市と同じ形式の焼却炉(ストーカ炉)と溶融炉(燃料式)を整備して浦添市と同じように長寿命化を行っていれば、中城村と北中城村は何の苦労もせずに広域処理に移行することができたことになります。しかし、それは非現実的な話であって、今は、現実的な問題を現実的に解決して行かなければなりません。

また、過疎化により広域処理を行う1市2村の人口が減少していて、浦添市のごみ処理施設の能力に余裕がある場合は、中北組合は補助金を返還せずにごみ処理施設を廃止することが可能な状況になりますが、広域処理を行う1市2村はこれから人口の増加が見込まれている地域であり、さらに事業系の一般廃棄物の排出量の増加も見込まれています。しかも、国は災害廃棄物の処理に備えて市町村の焼却施設の処理能力に一定の余裕を確保することを求めています。したがって、この選択肢も非現実的な話になります。

最後に、下の画像をご覧下さい。これは、このブログの管理者が推奨している見直し案です。中北組合にあらゆる可能性を模索して見直し案を検討する意欲があれば、まだ選択肢は残っています。

原寸大の資料(画像をクリック)

地方自治法の規定により、地方公共団体は最少の経費で最大の効果を挙げるように事務処理を行う努めがあります。また、廃棄物処理法の規定により、市町村は地域の社会的・経済的な特性等を考慮してごみ処理に関する事務処理を行う努めがあります。したがって、中北組合が溶融炉を廃止するために代替措置を講じることは、住民に対する最大のサービスになると考えます。

住民に対するサービスの向上には、行政の創意工夫が必要になります。

なお、この見直し案は中城村と北中城村の住民の財政負担を最少化できる見直し案であり、広域処理を行う浦添市にとってもメリットのある見直し案になると考えます。

いずれにしても、これから2ヶ月ほどの間に決定する中北組合の見直し案が中城村と北中城村、そして浦添市の住民にとって未来のごみ処理の方向性を決める極めて重要な見直し案になることは間違いありません。

中北組合は約2年前に廃棄物処理法の基本方針には従わない(ごみ処理施設の整備に当たって国の補助金は利用しない)という決断をして、溶融炉を休止して最終処分場の整備等は行わずに焼却灰の民間委託処分を行っています。これにより、事務方の事務処理はかなり軽減されていると思われます。

しかし、今度は廃棄物処理法の基本方針に従ってごみ処理計画の見直しを行うことになります。

このブログの管理者は、広域処理を行うために市町村が老朽化していない既存のごみ処理施設を廃止して、補助金の返還を行い、広域施設が完成するまで可燃ごみの処理を民間に委託するという見直し案は、住民のためというよりも事務方の事務処理を最少化するための見直し案になるように思えてなりません。

中北組合が住民のことを第一に考えて代替措置を講じることを祈ります。

※中北組合が代替措置を講じた場合は、広域施設が完成する前に浦添市の溶融炉に老朽化に伴う想定外のトラブルが発生した場合であっても、中北組合と同じように代替措置を講じることができます。また、中北組合の焼却炉や建物を廃止せずに広域組合の施設として使用することができるので、可燃ごみの民間委託処理に伴うリスクを回避することができます。

※中北組合がごみ処理施設を廃止して民間に無償で譲渡する場合は、ごみ処理施設が民間の施設になるので廃棄物処理法の規定に基づく所定の事務処理(地域住民との合意形成や許認可の取得等)が必要になります。


ごみ処理計画における「中北組合方式」を考える

2016-02-07 10:20:11 | ごみ処理計画

中北組合がごみ処理計画を見直さずに浦添市との広域処理において国の補助金を利用して広域施設を整備することができる場合は、下の画像にある「中北組合方式」も廃棄物処理法の基本方針に適合していることになります。

 

原寸大の資料(画像をクリック)

仮に「中北組合方式」が廃棄物処理法の基本方針に適合していることになった場合はどうなるか?

(1)市町村は溶融炉を整備しても10年以上稼動させれば溶融炉を廃止して焼却灰の民間委託処分を行うことができる。

(2)最終処分場の整備が不要になるので「焼却炉+最終処分場方式」を採用する市町村が激減する。

(3)供用開始から10年経過すれば溶融炉を廃止することができるので「ガス化溶融炉方式」を採用する市町村が激減する。

(4)最終処分場の整備を行う市町村が激減するので廃棄物処理法の基本方針における最終処分場の残余年数を維持することが困難になる。

ということで、このブログの管理者は「中北組合方式」が国内の市町村において新たな選択肢になることは絶対にないと考えます。

したがって、中北組合がごみ処理計画を見直さない場合は浦添市との広域処理は「白紙撤回」になると考えます。

※「中北組合方式」を廃棄物処理法の基本方針に適合させるためには、廃棄物処理法の基本方針を変更しなければならないことになりますが、基本方針は今年(平成28年)の1月21日に変更されたばかりなので、中北組合が浦添市との広域処理を選択肢にする場合はごみ処理計画の見直しが必須条件になります。

改めて広域処理に関する中北組合の選択肢を考える