沖縄のごみ問題を考える

一般廃棄物の適正な処理に対する国の施策と県の施策と市町村の施策を比較しながら「沖縄のごみ問題」を考えるブログです。

広域処理に関する浦添市のメリットとデメリットを考える

2016-02-14 09:35:52 | ごみ処理計画

このブログは中北組合に関する記事が多いブログですが、今日は中北組合との広域処理を検討している浦添市のメリットとデメリットを考えてみます。

広域処理において浦添市は広域施設の整備に対して用地を提供することになります。

広域施設の建設費については中北組合(実質上は中城村と北中城村)と共同で負担することになりますが、一般的に言って、ごみ処理施設の規模が大きくなると、スケールメリットによりイニシャルコストやランニングコストを削減することができます。浦添市にとっては、多分、それが一番大きなメリットになると考えます。

ちなみに、浦添市の建物は昭和58年に整備したものなので、かなり老朽化が進んでいますが、中北組合の建物は平成15年に整備しているのでまだ十分に使用に耐えられます。しかし、広域施設を整備する場合はこの建物を廃止して浦添市に新たな建物を整備することになります。このため、補助金の返還が必要になります。しかも、広域施設が完成すると可燃ごみを浦添市に運んで処理することになるので輸送コストが増加することになります。したがって、中北組合の場合は浦添市ほど財政的なメリットは得られないことになります。

また、浦添市は中北組合と同様に最終処分場の整備を行っていない市町村になる(本島においては浦添市と中北組合だけが最終処分場を整備していない)ので、広域処理が実現すれば自動的に処理区域が拡大するので、最終処分場の整備が必要になった場合は中城村や北中城村に整備することが可能になります。一般的に言って、広域処理において最終処分場を整備する場合は焼却施設のない市町村に整備することになるので、浦添市は市内に整備するための事務処理から解放されることになります。浦添市にとっては、これも大きなメリットになると考えます。なぜなら、市町村にとっては焼却施設を整備する事務処理よりも最終処分場を整備する事務処理の方が遥かにハードな事務処理になるからです。

さらに、浦添市は広域施設が完成するまで、浦添市から排出されている溶融スラグの利用が困難になった場合は中城村や北中城村において利用を推進することができるようになります。そして、九州に運んで資源化(山元還元)している溶融飛灰の利用が困難になった場合は中城村や北中城村において処分を検討することができるようになります。

ちなみに、浦添市の溶融炉が、万が一、事故や故障等により使用できなくなった場合も、広域組合を設立した後であれば中城村や北中城村において焼却灰の処分を検討することができるようになります。

以上により、メリットだけを考えれば、浦添市が広域処理を選択しない理由はほどんとないと考えます。

ただし、デメリットもあります。

それは中北組合が溶融炉を休止して焼却灰の民間委託処分を行っていることが大きな原因になっています。つまり、浦添市が広域処理を検討している相手先は、良くも悪くも沖縄県だけでなく内地においてもほとんど例のない廃棄物処理法の基本方針に適合しないごみ処理計画を策定している極めて個性的な自治体なのです。

このため、広域組合を設立するための事務処理はかなり複雑なものになります。したがって、事務処理を間違えると広域施設の整備に当たって国の補助金を利用できないという事態になる恐れがあります。

しかし、この程度のデメリットであれば単なる事務処理の問題なので、職員が適正な事務処理を行えば解決します。

では、浦添市の本当のデメリットとは何か?

中城村と北中城村が広域処理における村の役割分担について議会や住民に周知して理解と協力を得るための事務処理に時間が掛かりすぎると広域処理のスケジュールが大幅に遅れることになります。

しかし、そのリスクを回避するために中城村と北中城村が広域組合を設立するまで議会や住民に対して村の役割分担を周知しなかった場合は最悪の事態になります。

とは言え、浦添市は広域組合のごみ処理計画の策定に当たって最終処分場の整備を課題から除外することはできません。なぜなら、浦添市が平成23年度に改正したごみ処理計画においても最終処分場の整備を課題として抽出しているからです。浦添市は廃棄物処理法の基本方針に従ってごみ処理計画を策定しています。このため、広域組合を設立した場合も当然、廃棄物処理法の基本方針に従ってごみ処理計画を策定することになります。

一方、中北組合が平成25年度に改正したごみ処理計画は廃棄物処理法の基本方針に従わない計画になっています。そして、平成26年度から溶融炉を休止して焼却灰の民間委託処分を行っていますが最終処分場の整備に関する課題は抽出していません。

このような状況にあって、中城村と北中城村が議会や住民から理解と協力を得ることは簡単なことではないと考えます。

つまり、広域処理における浦添市の本当のデメリットとは、広域組合を設立するための事務処理にかかる時間が読めないということになります。

浦添市にとっては広域処理のスケジュールが遅れると既存のごみ処理施設の老朽化が進行するので、老朽化対策に多額の費用がかかることになります。また、長寿命化した溶融炉が老朽化してくると想定外のトラブルが発生る可能性もあるので、浦添市にとっては「中北組合の事務処理の遅れ」が大きなリスクになります。

その意味では、広域処理における浦添市の最大のデメリットは、パートナーに最終処分場の整備を課題として抽出していない中北組合を選んだことになると言えます。

なお、中北組合が溶融炉を再稼動した場合はどうなるか?

このことについては、ここで説明していると長くなるので、他の記事をご覧下さい。

下の画像は上記の浦添市のメリットとデメリットの一覧表です。字が小さくて読めない場合は原寸大の資料をズームアップしてご覧下さい。

原寸大の資料(画像をクリック)

※このブログの管理者は中北組合が廃棄物処理法の基本方針に適合する代替措置を講じて溶融炉を廃止してから、広域処理に関する事務処理を始めるべきだと考えています。なぜなら、代替措置を講じないまま広域処理が「白紙撤回」になると、中北組合は自主財源によりごみ処理施設の整備を行っていくことになるからです。