市町村がごみ処理施設を整備する場合は、ほぼ100%国の補助金を利用します。ただし、市町村の職員にとって在職中に 国の補助金を利用するための事務処理を行うことは滅多にありません。
また、人口が少なく職員の数も少ない自治体の場合は、補助金に関する事務処理を民間のコンサルタント会社に丸投げするケースが多いので、国の補助制度に関する職員の認識が十分とは言えない場合があります。
そこで、今日は市町村の職員の皆様のために、市町村に対する国の財政的援助の目的と手段について整理しました。
下の画像の左側が目的で右側が手段になりますが、職員の皆様がこの目的と手段を理解していれば事務処理において大きなミス(補助金に関する事務処理なので場合によっては「重大な過失」になる恐れがあります)を犯すことは回避できると考えます。
原寸大の資料(画像をクリック)
上の画像にあるように、国の目的は廃棄物処理法の規定(第5条の4)に従って「廃棄物処理施設整備計画の実現を図る」ことにあります。廃棄物処理施設整備計画というのは政府が閣議決定している計画で、いわば「国の計画」になります。
この「国の計画」は廃棄物処理法の基本方針に即して定められていますが、計画を実現するための規定が「計画の実現を図るように努めなければならな」という規定ではなく、「計画の実現を図るために必要な措置を講じる」という規定になっているところが重要なポイントになります。つまり、その「必要な措置」が市町村に対する「国の財政的援助」ということになります。
そして、その目的を果たすための手段が市町村に「地域計画を策定させる」ことになります。この地域計画は、①廃棄物処理法の基本方針に適合していること、②市町村のごみ処理計画との整合性を確保していることが条件になります。したがって、市町村のごみ処理計画が廃棄物処理法の基本方針に適合していない場合は国の財政的援助を受けることができないことになります。
なお、普通の市町村は常に国の財政的援助を受ける前提でごみ処理計画を策定していますが、沖縄県においては中北組合(及び中城村、北中城村)が平成26年3月にごみ処理計画を改正して廃棄物処理法の基本方針に適合しないごみ処理計画を策定しています。このブログの管理者が知る限り、基本方針に適合していたごみ処理計画を基本方針に適合しないごみ処理計画に改正した市町村は沖縄県内だけでなく、国内においても例がないと考えています。
ちなみに、市町村はごみ処理計画を自由に定めることができるので、国の財政的援助を受けるときだけ廃棄物処理法の基本方針に適合するごみ処理計画に見直すこともできます。しかし、こういった変則的なことをすると、実際に地域計画を策定するときに大きな混乱が生じることになります。
中北組合が浦添市との広域処理を前提に地域計画を策定する場合は、浦添市と中城村と北中城村の1市2村が共同で策定することになります。しかも、この地域計画は広域組合を設立する前に策定することになるので、中北組合と中城村と北中城村はその前にごみ処理計画の見直しを行わなければならないことになります。
もちろん、中北組合(及び中城村、北中城村)が見直すごみ処理計画が廃棄物処理法の基本方針に適合していなければ、浦添市としてはどうにもならないので、広域処理は「白紙撤回」ということになります。
一方、国は単に「運転経費が高い」という理由だけで溶融炉を休止したまま代替措置を講じずに焼却灰の民間委託処分を行っている市町村に対して財政的援助を与えることはできません。なぜなら、財政的援助を与えると国の計画である廃棄物処理施設整備計画の実現を図ることが困難になるからです。仮に、それでも国が財政的援助を与えた場合は国が廃棄物処理法の規定に違反して国の貴重な予算を支出していることになるので、国民から損害賠償を求められることになります。
万が一、国(防衛省を含む)が国の計画に従わない沖縄の市町村に対して財政的援助を与えた場合はどうなるか?
そうなった場合は、損害賠償だけでは済まない問題になるでしょう。
それはともかく、広域組合を設立する前に関係市町村が策定する地域計画は、関係市町村が所有している全てのごみ処理施設を広域組合が所有する前提で策定することになるので、浦添市と中城村と北中城村の1市2村は、まず休止している溶融炉をどうするかを決めなくてはならないことになります。
もしも、1市2村が「溶融炉は補助金適正化法の規定に基づく処分制限期間を経過しているので代替措置を講じずに廃止しても焼却灰の民間委託処分を続けることができる」と考えているとしたら、国からイエローカードが出ることになります。
なぜなら、国においては補助金適正化法の規定よりも廃棄物処理法の規定を優先して廃棄物処理施設整備計画の実現を図る必要があるからです。
このことは、中北組合だけの問題ではなく浦添市にとっても重要な問題になるので、1市2村が広域処理に関する覚書を締結する場合は、この問題を解決してから締結すべきだと考えます。
※「運転経費が高い」溶融炉を再稼動する場合は、広域施設を整備する前に長寿命化を実施することになるので、浦添市にとっては地域計画を策定する前に中北組合が代替措置を講じて溶融炉を廃止することが「最善手」になると考えます。
※浦添市は平成24年度に国の補助金を利用して溶融炉の長寿命化を実施しています。しかし、補助金の交付の条件になっている「長寿命化から10年以上使用する」前にトラブル等が発生して長期間溶融炉を停止することになると広域施設の整備が遅れることになります。溶融炉の長寿命化については、まだあまり事例がないので、老朽化が進むと想定外のトラブルが発生する可能性がありますが、その場合も代替措置を講じることによって計画の遅延を回避することができます。