ごみ処理施設のうち可燃ごみの焼却施設については設備と建物が一体化した施設として整備されています。
このうち設備(焼却炉、溶融炉、ガス化溶融炉等)は補助金適正化法の規定により処分制限期間(環境省は7年、防衛省は10年)を経過すれば補助金を返還せずに廃止することができます。ただし、建物の処分制限期間(鉄筋コンクリート造の場合は50年)を経過していない場合は、原則として建物部分の補助金を返還する必要があります。
一方、ごみ処理施設の更新に当たっては、ごみ処理計画が廃棄物処理法の基本方針と廃棄物処理施設整備計画に適合していなければ国の補助金を利用できないことになっています。
したがって、設備については補助金適正化法の処分制限期間を経過しているからといって簡単に廃止することはできません。
できるのは、市町村合併等によりごみ処理を行う地域において設備が過剰になる場合等に限られます。これが廃棄物処理法の規定に基づく全国共通のルールです。
ただし、このルールもごみ処理施設の築年数によって違ってきます。
という前提で下の画像をご覧下さい。
原寸大の資料(画像をクリック)
ごみ処理施設の築年数が25年以上の場合は、設備が老朽化していると判断した場合は国の補助金を利用して設備を更新することができます。しかし、老朽化していないと判断した場合は国の補助金を利用して長寿命化を行うことができます。そして、その後に老朽化したと判断した場合は国の補助金を利用して更新することができます。
一方、ごみ処理施設の築年数が25年未満の場合は、設備の処分制限期間を経過している場合であっても廃棄物処理法の基本方針と廃棄物処理施設整備計画に従って国の補助金を利用して長寿命化を行うことになります。
ただし、この場合は長寿命化を行ってから10年以上稼動しなければならないルールになっています。
ごみ処理施設の設備は遅くとも供用開始から15年目くらいには長寿命化を行うことになるので、そこから10年稼動すると、築年数が25年以上になります。したがって、その場合は上の画像の左側の施設に整理されることになります。
なお、国が築年数25年未満のごみ処理施設を所有している市町村が設備の長寿命化を行わずに更新(単独更新・広域更新)を行う場合に補助金を交付した場合は、上の画像の右側の施設はないことになり、国内にある全てのごみ処理施設が左側の施設に整理されることになります。
ここで、浦添市と中北組合との広域処理についてもう一度考えてみます。
浦添市は築25年以上の焼却炉と築25年未満の溶融炉を平成24年度に長寿命化しています。このため、焼却炉についてはいつでも更新できる状況になっていますが、溶融炉については平成34年度までは稼動しなければなりません。したがって、広域施設を整備(広域更新)する場合は平成35年度以降に供用を開始することになります。
ところが、広域処理のパートナーである中北組合は平成15年度に整備した焼却炉と溶融炉の長寿命化を行わずに溶融炉は平成26年度から休止しています。そうなると、普通に考えれば来年度に溶融炉を再稼動して平成29年度に焼却炉と同時に長寿命化を行い、そこから10年以上稼動しなければ広域施設を整備(広域更新)することができないことなります。
と言うことは、浦添市は平成40年度頃まで待たなければならないことになります。
また、中北組合の溶融炉にトラブルが発生して停止する期間が増えると浦添市は更に待たされることになります。万が一、長寿命化した中北組合の溶融炉が重大な事故(水蒸気爆発等)によって使用できなくなった場合は、補助金を返還して自主財源により新たな溶融炉を整備しなければなりません。しかし、仮にそうなった場合は簡単には再整備できません。なぜなら、事故原因を究明して再発防止策を講じなければならないからです。
これでは、浦添市は待ちくだびれてしまいます。
このブログで何度も書いていますが、中北組合の溶融炉は国内で稼動している事例や長寿命化が行われた事例がありません。おそらく、海外にも事例はないはずです。
では、どうすればよいか?
広域処理を「白紙撤回」しない場合は、広域組合を設立する前に中北組合のごみ処理施設を廃止しなければならないことになります。広域組合が廃棄物処理法の基本方針と廃棄物処理施設整備計画に従って広域処理を行っていく場合は、中北組合の焼却炉だけを残して焼却灰の民間委託処分を行っていくことはできないので、焼却炉と溶融炉を同時に廃止することになります。
中北組合が代替措置を講じて溶融炉を廃止しない限り、今のところ選択肢はこれしかないはずです。
このように、複数の自治体が広域処理を行う場合は、全ての設備が老朽化しているか、ほぼ同時期に長寿命化を行っていないと面倒なことになります。特に浦添市と中北組合との広域処理については中北組合が溶融炉を休止していることが大きな障害になります。
くどいようですが、市町村のごみ処理計画が補助金適正化法の規定に適合していても、廃棄物処理法の基本方針と廃棄物処理施設整備計画に適合していなければ、ごみ処理施設の整備(単独更新・広域更新)に当たって国(防衛省を含む)の補助金を利用することはできないことになっています。
また、国(防衛省を含む)は廃棄物処理法の基本方針と廃棄物処理施設整備計画に適合しないごみ処理を行っている自治体に対して国の財政的援助を受けるための技術的援助(助言)を与えることはできますが財政的援助を与えることはできないことになっています。
※広域処理に当たって中北組合が広域組合を設立する前にごみ処理施設を廃止することについては、事故や故障、老朽化等が理由ではなく、広域施設の整備に当たって国の補助金を利用するために意図的に行う事務処理になるので、「地域計画」を作成したときに環境省の承認が受けられるかどうかは分かりません。したがって、浦添市と中北組合が本気でこの「作戦」に取り組む場合は事前に環境省から技術的援助を受ける必要があります。