通常は球形の赤血球が鎌状になり酸素運搬機能が低下する病気「鎌状赤血球症」用の医薬品開発に、サトウキビ粗糖を発酵して抽出する「L―グルタミン」というアミノ酸の一種が有効であることが分かり、注目を集めている。世界に2500万人以上の患者がいるとされ、治療法が実用化されれば、県産粗糖でも需要の高まりが期待される。研究に取り組んでいる米エマウス・ライフ・サイエンス社の新原豊会長兼最高経営責任者(CEO)が17日、県庁で会見し「治療薬の原料を長期かつ安定的に確保するため、沖縄産サトウキビの活用を検討している」と語った。
医療用の高純度L―グルタミンはサトウキビ、テンサイ、トウモロコシ、キャッサバなどから製造された粗糖、または糖蜜を微生物により発酵させることで精製される。サトウキビ粗糖は他の甘味資源作物よりも低コストかつ、安定供給できるメリットがある。
鎌状赤血球症は遺伝性の病気で、完治させる薬はない。L―グルタミン療法は痛みを伴う発作などの症状を大幅に軽減でき、新原氏は1997年に特許を取得した。治験を進め、今年7月中にも米食品医薬品局から認可される予定。
実用化すれば10万人の患者がいる米国だけで年間千トンのL―グルタミン需要が見込まれ、10万トンのサトウキビ需要が見込まれる。憩室症や糖尿病への効果も研究が進み、幅の広がりが期待される。
県産サトウキビはブラジルなど外国産に比べれば原価が高いものの「医薬品はもっと単価が高く、原価代は吸収できる」とみる。「日本の農産物は安全だと見られており、日本で作りたい。沖縄のサトウキビに注目している」と語った。
嘉数啓琉球大名誉教授は「サトウキビと医療が組み合わさることで、サトウキビが一躍注目されることが期待される」と実現に期待した。