日本語の「は」と「が」について。

象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
とりあえず「三上文法」を「批判」します。

(7)「は・も・が」は「係助詞」である。

2018-03-14 17:54:31 | 「は」と「が」
(01)
37講 助詞「・の」の働き
助詞は助動詞ほど現代語と離れていませんので、解釈面をしっかり押さえることがポイントです。初めに助詞「・の」です。両者は非常によく似ています。
(武藤元昭、0からわかる古文、1997年、100頁)
すなはち、
(02)
① 君の家、私の国、君の行く道、博士の愛した数式。
に対して、
① 君世、我国、君行く道、博士愛した数式。
であるため、「」と「の」は、非常によく似てゐる。
然るに、
(03)
なにがしとかや言ひし世捨人の、「この世のほだし持たらぬ身に、ただ空の名残のみ惜しき」と言ひしこそ、誠にさも覚えぬべけれ。
なにがしとかいった世捨て人が、「現世で人の心を引きつけ自由を束縛するものは何も持っていない身にも、ただ四季おりおりの空の美しさだけ捨てがたい」と言ったのは、まったくそのように思われるにちがいない。
(三省堂、新明解古典シリーズ10 徒然草、1990年、49頁)
従って、
(03)により、
(04)
② ただ 空 の 名残 のみ 惜しき(徒然草)。
② ただ 空 の 名残 だけ 惜しい(現代語)。
である。
然るに、
(05)
45講 助詞「・なむ・や・か・こそ」の働き
係助詞のうち、係り結びを形成するものを取り上げます。係り結びの形などについては、別講で扱うとして「ぞ・なむ・や・か・こそ」の各係助詞の用法をみておきましょう。
(武藤元昭、0からわかる古文、1997年、100頁)
従って、
(04)(05)により、
(06)
② ただ 空 の 名残 のみ 惜しき(徒然草)。
② ただ 空 の 名残 だけ 惜しい(現代語)。
に於いて、
② 「」が「助詞」である以上、
② 「」も「助詞」でなければ、ならない。
然るに、
(07)
44講 助詞「」の働き
副助詞と同じく、それがなくても意味は通じるという助詞に、係助詞があります。副助詞と働きが似ていることから、副助詞として扱う文法書もありますが、ここでは別に扱います。
(武藤元昭、0からわかる古文、1997年、114頁)
従って、
(06)(07)により、
(08)
② ただ 空 の 名残 だけ 惜しい(現代語)。
に於いて、
② 「」も「助詞」であって、「は・も」も「助詞」である。
従って、
(01)(08)により、
(09)
(Ⅰ)  「の」の仲間である「助詞」としての「」。
(Ⅱ)「・も」の仲間である「助詞」としての「」。
といふ「(二通りの)が」が、なければ、ならない。
然るに、
(10)
何故か、
最も基本的な助詞である。動作や状態の主体/要求や願望の対象を示す(ウィキペディア)。
とあるやうに、
(Ⅱ)「」の仲間である「助詞」としての「」。
を、認める「文法書」が、見つからない。
然るに、
(11)
「(7)番目の記事」でも、示した通り、
もし濁音を発音するときの物理的・身体的な口腔の膨張によって「音=大きい」とイメージがつくられているのだとしたら、面白いですね。この仮説が正しいとすると、なぜ英語話者や中国語話者も濁音に対して「大きい」というイメージを持っているか説明がつきます(川原繁人、音とことばの不思議な世界、2015年、13頁)。
然るに、
(12)
」が「音」であるやうに、
」も「音」である。
従って、
(11)(12)により、
(13)
音)の音量」が、「は(清音)の音量」よりも「大きい」のであれば、
音)の音量」も、「は(清音)の音量」よりも「大きい」ことになる。
然るに、
(14)
「これ迄の記事」を読まれた方であれば、既に、分ってもらへてゐるやうに、私が言ひたいのは、「_は(清音)」に対する「_音)」は、「強調形」である。
といふことである。
従って、
(13)(14)により、
(15)
「_音)」が、「強調形」であるならば、私にとって「都合」がよいものの、果たして、
(係助詞)〔上代には「そ」とも〕ガイド
①(ア)主語 の強調
 (イ)目的語 の強調
(旺文社、全訳 学習 古語辞典、2006年、463頁)
とのことである。
(16)
明日の「予定」⇒「これだけ(は・)」について。

(6)「古文と漢文とギリシャ語」の「強調形」と、「排他的命題」について。

2018-03-14 14:19:45 | 「は」と「が」
(01)
「(4)番目の記事」で「説明」したやうに、
① ABである=AはBであって(A以外はBでない)。
② ABである=(A以外ではない所の)ABである。
に於いて、
① は、「終止形としての排他的命題」であるとし、
② は、「連体形としての排他的命題」であるとする。
然るに、
(02)
[のみ]
他の事柄を排除して、ある事柄だけに限る意味を表はすと同時に、ある事柄を取出して、それを強調する意味に用ゐられる
(時枝誠記、日本文法 文語編、2005年、236頁)。
然るに、
(03)
他の事柄排除して、ある事柄だけに限る意味を表はすと同時に、ある事柄を取出して、それを強調する意味に用ゐられる。
といふことは、
ある事柄を「強調」し、他の事柄を「排除」して、ある事柄だけに限る意味」を表はす。
といふ、ことである。
従って、
(03)により、
(04)
① AのみBなり=
① ABである=AはBであって(A以外はBでない)。
といふ、ことになる。
従って、
(01)(04)により、
(05)
「のみ」といふ「古語」に関して、「強調形」は、「排他的命題」を「主張」する。
然るに、
(06)
(3)惟婦言是用(これ婦人をこれ用ふ)。
のやうな「漢文」に於ける、
(3) 惟 に関して、
この強調する語気の「惟」は、次第に、専一・単独などの意味を表わす副詞として用いられるようになり、多く「」と書かれるようになっている。それで右の例(3)の「惟」は、「タダ」と読んでいる人もある(鈴木直治、中国語と漢文、1975年、310頁)。
従って、
(06)により、
(07)
② 惟婦言是用=
タダ婦の言、是れを用ふ=
② 婦人の言を用ひ(婦人の言以外は用ひない)。
といふ、ことになる。
従って、
(01)(07)により、
(08)
「惟」といふ「漢字」に関して、「強調形」は、「排他的命題」を「主張」する。
(09)
(4)人称代名詞の主格は、特にそれが強調される場合以外には用いられない。
(a)この理由は、動詞の語尾が、主語が一人称であるか、それとも二人称であるか、または、三人称であるかを充分に示しているからである。つまり λεγω は「私は言う」(Isay)である。故に、特に「私」を強調が置かれるのでなければ、εγω を付け加えない。
(b)強調というのは、通常対照によって生ずる。たとえば、εγω λεγω,συ δε γραφειs,「私は語るが、しかし汝は書く」(I say,but you write)という文で,εγω と συ とは強調されている。
(J.G.メイチェン著、田辺滋 訳、新約聖書ギリシャ語原点入門、1967年、55頁)
従って、
(09)により、
(10)
εγω λεγω,συ δε γραφειs.
say ,but you write.
に於いて、
εγω λεγω,συ
は「強調形」である。
加へて、
(11)
εγω λεγω,συ δε γραφειs.
といふことは、
③ 私は言ひ、私以外(汝)は言はない
③ 汝は書き、汝以外(私)は書かない
といふことである。
従って、
(01)(10)(11)により、
(12)
「εγω,συ」といふ「ギリシャ語の人称代名詞」に関して、「強調形」は、「排他的命題」を「主張」する。
従って、
(05)(08)(12)により、
(13)
「のみ(古文)、惟(漢文)、εγω(ギリシャ語)」に於いて、「強調形」は、「排他的命題」を「主張」する。
従って、
(14)
強調形」は、「排他的命題」を「主張」する。といふことには、「必然性」があるに、違ひない。
然るに、
(15)
④ これは私の本です=
④ これは私の本であって、私以外の本ではない
といふことを、「強く主張」する場合は、
④ 私 といふ「語」を「強調」することになる。
(16)
⑤ 彼が犯人です=
⑤ 私ではなく、彼(私以外)が犯人です。
といふことを、「強く主張」する場合は、
⑤       彼 といふ「語」を「強調」することになる。
然るに、
(17)
清音の方は、小さくきれいで速い感じで、コロコロと言うと、ハスの上を水玉がころがるような時の形容である。ロと言うと、大きく荒い感じで、力士が土俵でころがる感じである(金田一春彦、日本語(上)、1988年、131頁)。
(18)
もし濁音を発音するときの物理的・身体的な口腔の膨張によって「音=大きい」とイメージがつくられているのだとしたら、面白いですね。この仮説が正しいとすると、なぜ英語話者や中国語話者も濁音に対して「大きい」というイメージを持っているか説明がつきます(川原繁人、音とことばの不思議な世界、2015年、13頁)。
従って、
(17)(18)により、
(19)
① AはBである。
② ABである。
に於いて、
① Aは〔清音〕 の「(心理的な)音量」よりも、
② A音〕 の「(心理的な)音量」の方が、「大きい」。
従って、
(16)(19)により、
(20)
⑤ 彼( )犯人です=
⑤ 私ではなく、彼が犯人です。
に於いて、
⑤ 彼() であって、
⑤ 彼(は) でないことを、当然である。