―「一昨日の記事(121)」を書き直します。―
(01)
1 (1)∃xFx A
2(2) Fa A
1 (3) Fa 122EE
1 (4)∀xFx 3UI
に於いて、
1 (4)∀xFx 3UI
は、「正しい」。 何故なら、
1 (1)∃xFx A
は a を含まないからである。
1 (3) Fa 122EE
は、「正しくない」。何故なら、
1 (3) Fa 122EE
といふ「結論」はa を含んでゐるからである(論理学初歩、E.J.レモン、竹尾 治一郎・浅野 楢英 訳、1973年、147頁改)。
従って、
(01)により、
(02)
1 (1)∃xFx A
2(2) Fa A
1 (3) Fa 122EE
までは、「正しい」ものの、
1 (4)∀xFx 3UI
が加はった「結果」として、「1つ前の行」に戻って、
1 (3) Fa 122EE
が、「マチガイ」になる。
然るに、
(03)
1 (1)∀x∃yFxy A
1 (2) ∃yFay 1UE
2(3) Fab A
1 (4) Fab 233EE
1 (5) ∀xFxb 4UI
に於いて、
1 (5) ∀xFxb 4UI
の行は、
1 (4) Fab 233EE
の行の、 a に対する、UIであって、
bに対する、UIではない。
然るに、
(04)
1 (1)∀x∃yFxy A
1 (2) ∃yFay 1UE
2(3) Faa A
1 (4) Faa 233EE
1 (5) ∀xFxx 4UI
に於いて、
1 (5) ∀xFxx 4UI
の行は、
1 (4) Faa 233EE
の行の、 aa に対する、UIである。
従って、
(01)~(04)により、
(05)
例へば、
1 (1)∀x∃yFxy A
1 (〃)すべての母親には子供がゐる。 A
1 (2) ∃yFay 1UE
2(3) Faa A
1 (4) Faa 233EE
1 (5) ∀xFxx 4UI
1 (〃)すべての母親はすべての母の母である。 4UI
といふ「述語計算」は、「マチガイ」であって、その一方で、
1 (1)∀x∃yFxy A
1 (〃)すべての母親には子供がゐる。 A
1 (2) ∃yFay 1UE
2(3) Fab A
1 (4) Fab 233EE
1 (5) ∀xFxb 4UI
1 (〃)すべての母親は任意の子供の母である。 4UI
といふ「述語計算」は、「正しい」。
cf.
「すべての母親はすべての母の母である。」ならば、
「任意の母親は、自分自身から生まれた。」ことになる。
然るに、
(06)
これ迄に、何度も書いた通り、
1 (1)象は鼻が長い。 A
1 (〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)} A
2 (2)兎の耳は長いが、兎の耳は鼻ではない。 A
2 (〃)∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)} A
3 (3)ある兎は象である。 A
3 (〃)∃x(兎x&象x) A
3 (〃)あるxは兎であって象である。 A
1 (4) 象a→∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z) 1UE
2 (5) 兎a→∃y(耳ya&長y)&∀z(耳za→~鼻za) 1UE
6 (6) 兎a&象a A
6 (7) 兎a 6&E
6 (8) 象a 6&E
1 6 (9) ∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z) 47MPP
2 6 (ア) ∃y(耳ya&長y)&∀z(耳za→~鼻za) 58MPP
1 6 (イ) ∃y(鼻ya&長y) 9&E
2 6 (ウ) ∃y(耳ya&長y) ア&E
エ (エ) 鼻ba&長b A
オ(オ) 耳ba&長b A
1 6 (カ) ∀z(~鼻za→~長z) 9&E
1 6 (キ) ~鼻ba→~長b カUE
2 6 (ク) ∀z(耳za→~鼻za) ア&E
2 6 (ケ) 耳ba→~鼻ba クUE
オ (コ) 耳ba オ&E
2 6オ (サ) ~鼻ba ケコMPP
12 6オ (シ) ~長b キサコMPP
オ (ス) 長b オ&E
12 6オ (セ) 長b&~長b シス&I
12 6 (ソ) 長b&~長b ウオセEE
123 (タ) 長b&~長b 36ソEE
12 (チ)~∃x(兎x&象x) 3タRAA
12 (ツ)∀x~(兎x&象x) チ量化子の関係
12 (テ) ~(兎a&象a) ツUE
12 (ト) ~兎a∨~象a テ、ド・モルガンの法則
12 (ナ) 兎a→~象a ト含意の定義
12 (ニ)∀x(兎x→~象x) ナUI
12 (〃)すべてのxについて、xが兎であるならば、xは象ではない。 ナUI
12 (〃)兎は象ではない。
従って、
(06)により、
(07)
12 (ナ) 兎a→~象a ト含意の定義
12 (ニ)∀x(兎x→~象x) ナUI
に於ける「UI(普遍量記号導入の規則)」の「対象」は、飽くまでも「a」であり、その一方で、
12 6 (ソ) 長b&~長b ウオセEE
123 (タ) 長b&~長b 36ソEE
に於ける「EE(存在量記号除去の規則)」の「対象」は、「b」はあって、「a」ではない。
従って、
(02)(05)(07)により、
(08)
12 (ナ) 兎a→~象a ト含意の定義
12 (ニ)∀x(兎x→~象x) ナUI
が加はったとしても、
12 6 (ソ) 長b&~長b ウオセEE
123 (タ) 長b&~長b 36ソEE
に於ける「EE(存在量記号除去の規則)」は、「正しい」ままであって、「マチガイ」には、ならない。
従って、
(01)~(08)により、
(09)
要するに、
(1)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。然るに、
(2)∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)}。故に、
(3)∀x(兎x→~象x)。
といふ「推論(三段論法)」、すなはち、「日本語」で言へば、
(1)象は鼻が長い。然るに、
(2)兎の耳は長いが、兎の耳は鼻ではない。故に、
(3)兎は象ではない。
といふ「推論(三段論法)」は、「妥当(valid)」である。
然るに、
(10)
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}。
② ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
といふ「論理式」は、すなはち、
① すべてxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、yは長い}。
② すべてxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、yは長く、あるzがxの鼻でなく、尚且つ、長い。といふことはない}。
といふ「意味」である。
従って、
(10)により、
(11)
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}。
の場合は、
① 象の、鼻以外のパーツに関しては、長いとも、長くない。
とも、言ってゐない。
然るに、
(10)により、
(12)
② ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
② すべてxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、yは長く、あるzがxの鼻でなく、尚且つ、長い。といふことはない}。
といふことは、
② 象は鼻は長いが、鼻以外は長くない。
といふことである。
然るに、
(13)
② 象は鼻は長いが、鼻以外は長くない。
といふのであれば、
② 象は鼻が長い。
のであって、
① 象は鼻は長い。
ではない。
従って、
(09)(12)(13)により、
(14)
② 象は鼻が長い。
といふ「日本語」は、
② ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
② すべてxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、yは長く、あるzがxの鼻でなく、尚且つ、長い。といふことはない}。
といふ「述語論理」に、対応する。
然るに、
(15)
② ∃y(鼻yx&長y)
は、「命題関数(Proposition function)」であって、
② ∀z(~鼻zx→~長z)
も、「命題関数(Proposition function)」であって、
② ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
は、「論理式(well-formed-formula)」である。
然るに、
(16)
(1)象は鼻が長い。
(〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
(〃)すべてxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、yは長く、あるzがxの鼻でなく、尚且つ、長い。といふことはない}。
に於いて、「変数x」は、
① ∀x の中にも、
②{ }の中にも、
③( )の中にも、
④( )の中にも、現れる。
然るに、
(17)
(1)鼻は長い。
(〃)∃y(鼻yx&長y)
(〃)あるyはxの鼻であって、yは長い。
に於いて、「変数y」は、
① ∃y の中と、
②( )の中にしか、現れない。
然るに、
(18)
(ⅰ)論理式または命題関数において、量記号が現れる任意の箇所の作用範囲は、問題になっている変数が現れる少なくとも2つの箇所を含むであろう(その1つの箇所は量記号そのもののなかにある);
(論理学初歩、E.J.レモン、竹尾 治一郎・浅野 楢英 訳、1973年、183頁)
従って、
(14)~(18)により、
(19)
(1)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
といふ「論理式」に於ける、「変数x」の「作用範囲(スコープ)」は、
(1)象は鼻が長い。
(〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
(〃)すべてxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、yは長く、あるzがxの鼻でなく、尚且つ、長い。といふことはない}。
といふ「文」の「全体(総体)」である。
(20)
(1) ∃y(鼻yx&長y)
といふ「命題関数」に於ける、「変数x」の「作用範囲(スコープ)」は、
(1)象は鼻が長い。
(〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
(〃)すべてxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、yは長く、あるzがxの鼻でなく、尚且つ、長い。といふことはない}。
といふ「文」の「全体(総体)」ではなく、
(1) ∃y(鼻yx&長y)
(〃) あるyはxの鼻であって、yは長く、
といふ「一部分」である。
従って、
(19)(20)により、
(21)
「象(x)」=「主語(x)」 であって、
「鼻(y)」=「主語(y)」 であるならば、
(1)象は鼻が長い。
(〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
(〃)すべてxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、yは長く、あるzがxの鼻でなく、尚且つ、長い。といふことはない}。
に於いて、「象(x)」は、「文の全体(総体)の主語」であって、「鼻(y)」は、「文の一部の主語」である。
然るに、
(22)
動詞、形容詞ニ對シテ其主語アルト同ジク、主語ト説語(動詞或ハ形容詞)トヨリ成レル一ノ説話(即チ文)ニ對シテモ更ニソノ主語アルコト國語ニハ屡々アリ。例ヘバ「象は體大なり」ノ「象」、「熊は力強し」ノ「熊」、「鳥獸蟲魚皆性あり」ノ「鳥獸蟲魚」、「仁者は命長し」ノ「仁者」、「賣藥は效能薄し」ノ「賣藥」、「慾は限無し」ノ「慾」、「酒は養生に害あり」ノ「酒」、「支那は人口多し」ノ「支那」ノ如キハ、皆、「體大なり」「力強し」等ノ一説話ニ對シテ更ニソノ主語タル性格ヲ有ス。何トナレバ「象は體大なり」「熊は力強し」等ヨリ「象」「熊」等ノ再度ノ主語ヲ取去ル時ハ、殘餘ハ「體大なり」「力強し」等トナリテ、文法上ノ文ノ形ハ完全ニ之ヲ具フルニモ拘ラズ、意義ニ不足ヲ生ジ、其事ノ主トアルベキ「象」「熊」等ノ名詞ヲ竢ッテ始メテ意義ノ完全ナル一圓ノ説話ヲ成サントスル傾アルコト、ナホ普通ノ動詞、形容詞ノ名詞ヲ竢ッテ始メテ一ノ完全ナル説話ヲ成サントスル傾アルト同趣味ノモノアレバナリ。殊ニ「性有り」「限無し」等ノ一種ノ説話ニ對シテハ、實用ノ際ニ再度ノ主語ノ必要アル事ハ頗ル顯著ナルニアラズヤ。コレハ「うら(心)やまし(疚)」「て(質)がたし(堅)」ナドノ一説話ノ轉シテ一ノ形容詞トナリ、然ル上ハ實用ノ際ニ更ニソノ主語ヲ取ルト一般ナリ。サレバ「富貴は羨し」ノ「うらやまし」ニ對シテ「富貴」ヲ主語トイフヲ至當トセバ、「體大なり」「力強し」ニ對シテ「象」「熊」ヲソノ主語トイフモ亦不當ニハアラジ。斯カレバコノ類ノ再度ノ主ヲ予ハ別ニ「總主」ト名ヅケントス。
總主ハ斯ク頗ル簡單ニ説明セラルベク、亦容易ニ會得セラルベキ者ナリ。學者ノ潛思苦慮ヲモ要セズ、考古引證ヲモ須タズシテ、小學ノ兒童モ、口頭ニ、文章ニ、此語法ヲ用ヰ、歌人文士モ之ヲ用ヰテ毫モ疑フ事ナシ。コノ語法ハ本ヨリ我國ニ有リシナランガ、漢學ノ流行ニ連レテ益廣ク行ハレ、今日トナリテハ最早之ヲ目シテ國語ノ法則ニ非ズトイフヲ得ザルニ至レリ。然ルニ國語ノ法則トシテ日本ノ文法ニ之ヲ編入スル者ナキハ何故ゾ。西洋ノ言語ニ類似ノ語法ナク、西洋ノ文典ニ類似ノ記載ナキガ故ニハ非ザルカ。
(草野淸民、國語の特有セル語法 ― 總主、『帝國文學』五卷五號、明治三十二年:大修館書店、日本の言語学 第3巻 文法Ⅰ、1978年、533頁)
従って、
(21)(22)により、
(23)
(1)象は體大なり。
だけでなく、
(1)象は鼻が長い。
(〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
(〃)すべてxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、yは長く、あるzがxの鼻でなく、尚且つ、長い。といふことはない}。
に於ける、「象(x)」を、「總主」と呼ぶのであれば、草野淸民先生の言ふ、「總主」は、「(述語論理的な)總主」である、といふことになる。
従って、
(22)(23)により、
(24)
「總主」は、「西洋の言語に類似の語法はなく」とも、「述語論理といふ言語には類似の語法」があることになる。
(25)
(06)の「述語計算」を説明すると、
1 (1)象は鼻が長い。 A
1 (〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)} A
2 (2)兎の耳は長いが、兎の耳は鼻ではない。 A
2 (〃)∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)} A
3 (3)ある兎は象である。 A
3 (〃)∃x(兎x&象x) A
といふ「3つの仮定」を行ふと、「矛盾」が生じるため、
1 (1)象は鼻が長い。 A
1 (〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)} A
2 (2)兎の耳は長いが、兎の耳は鼻ではない。 A
2 (〃)∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)} A
といふ「2つの仮定」を、「否定」しないのであれば、
3 (3)ある兎は象である。 A
3 (〃)∃x(兎x&象x) A
といふ「1つの仮定」を、「否定」せざるを得ない。
といふのが、「証明(背理法)」の「あらすじ」です。
然るに、
(26)
1 (1)象は鼻が長い。 A
1 (〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)} A
2 (2)兎の耳は長いが、兎の耳は鼻ではない。 A
2 (〃)∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)} A
ではなく、
1 (1)象は鼻が長い。 A
1 (〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)} A
2 (2)兎の耳は長いが、兎の耳は鼻ではない。 A
2 (〃)∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)} A
とするならば、「矛盾」は生じないため、
(1)象は鼻が長い。然るに、
(2)兎の耳は長いが、兎の耳は鼻ではない。故に、
(3)兎は象ではない。
といふ「推論(三段論法)」が、「妥当(valid)」であるためには、
1 (1)象は鼻が長い。 A
1 (〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)} A
といふ風に、「仮定」せざるを得ない。
従って、
(27)
① 象は鼻が長い。
といふ「日本語」は、「述語論理」としては、
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
といふ風に、「翻訳」せざるを得ない。
然るに、
(22)により、
(28)
① 象は鼻が長い。
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
に於ける、
① 象は
① ∀x{象x
といふ「それ」は、草野淸民先生が、所謂、「總主」である。
(01)
1 (1)∃xFx A
2(2) Fa A
1 (3) Fa 122EE
1 (4)∀xFx 3UI
に於いて、
1 (4)∀xFx 3UI
は、「正しい」。 何故なら、
1 (1)∃xFx A
は a を含まないからである。
1 (3) Fa 122EE
は、「正しくない」。何故なら、
1 (3) Fa 122EE
といふ「結論」はa を含んでゐるからである(論理学初歩、E.J.レモン、竹尾 治一郎・浅野 楢英 訳、1973年、147頁改)。
従って、
(01)により、
(02)
1 (1)∃xFx A
2(2) Fa A
1 (3) Fa 122EE
までは、「正しい」ものの、
1 (4)∀xFx 3UI
が加はった「結果」として、「1つ前の行」に戻って、
1 (3) Fa 122EE
が、「マチガイ」になる。
然るに、
(03)
1 (1)∀x∃yFxy A
1 (2) ∃yFay 1UE
2(3) Fab A
1 (4) Fab 233EE
1 (5) ∀xFxb 4UI
に於いて、
1 (5) ∀xFxb 4UI
の行は、
1 (4) Fab 233EE
の行の、 a に対する、UIであって、
bに対する、UIではない。
然るに、
(04)
1 (1)∀x∃yFxy A
1 (2) ∃yFay 1UE
2(3) Faa A
1 (4) Faa 233EE
1 (5) ∀xFxx 4UI
に於いて、
1 (5) ∀xFxx 4UI
の行は、
1 (4) Faa 233EE
の行の、 aa に対する、UIである。
従って、
(01)~(04)により、
(05)
例へば、
1 (1)∀x∃yFxy A
1 (〃)すべての母親には子供がゐる。 A
1 (2) ∃yFay 1UE
2(3) Faa A
1 (4) Faa 233EE
1 (5) ∀xFxx 4UI
1 (〃)すべての母親はすべての母の母である。 4UI
といふ「述語計算」は、「マチガイ」であって、その一方で、
1 (1)∀x∃yFxy A
1 (〃)すべての母親には子供がゐる。 A
1 (2) ∃yFay 1UE
2(3) Fab A
1 (4) Fab 233EE
1 (5) ∀xFxb 4UI
1 (〃)すべての母親は任意の子供の母である。 4UI
といふ「述語計算」は、「正しい」。
cf.
「すべての母親はすべての母の母である。」ならば、
「任意の母親は、自分自身から生まれた。」ことになる。
然るに、
(06)
これ迄に、何度も書いた通り、
1 (1)象は鼻が長い。 A
1 (〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)} A
2 (2)兎の耳は長いが、兎の耳は鼻ではない。 A
2 (〃)∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)} A
3 (3)ある兎は象である。 A
3 (〃)∃x(兎x&象x) A
3 (〃)あるxは兎であって象である。 A
1 (4) 象a→∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z) 1UE
2 (5) 兎a→∃y(耳ya&長y)&∀z(耳za→~鼻za) 1UE
6 (6) 兎a&象a A
6 (7) 兎a 6&E
6 (8) 象a 6&E
1 6 (9) ∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z) 47MPP
2 6 (ア) ∃y(耳ya&長y)&∀z(耳za→~鼻za) 58MPP
1 6 (イ) ∃y(鼻ya&長y) 9&E
2 6 (ウ) ∃y(耳ya&長y) ア&E
エ (エ) 鼻ba&長b A
オ(オ) 耳ba&長b A
1 6 (カ) ∀z(~鼻za→~長z) 9&E
1 6 (キ) ~鼻ba→~長b カUE
2 6 (ク) ∀z(耳za→~鼻za) ア&E
2 6 (ケ) 耳ba→~鼻ba クUE
オ (コ) 耳ba オ&E
2 6オ (サ) ~鼻ba ケコMPP
12 6オ (シ) ~長b キサコMPP
オ (ス) 長b オ&E
12 6オ (セ) 長b&~長b シス&I
12 6 (ソ) 長b&~長b ウオセEE
123 (タ) 長b&~長b 36ソEE
12 (チ)~∃x(兎x&象x) 3タRAA
12 (ツ)∀x~(兎x&象x) チ量化子の関係
12 (テ) ~(兎a&象a) ツUE
12 (ト) ~兎a∨~象a テ、ド・モルガンの法則
12 (ナ) 兎a→~象a ト含意の定義
12 (ニ)∀x(兎x→~象x) ナUI
12 (〃)すべてのxについて、xが兎であるならば、xは象ではない。 ナUI
12 (〃)兎は象ではない。
従って、
(06)により、
(07)
12 (ナ) 兎a→~象a ト含意の定義
12 (ニ)∀x(兎x→~象x) ナUI
に於ける「UI(普遍量記号導入の規則)」の「対象」は、飽くまでも「a」であり、その一方で、
12 6 (ソ) 長b&~長b ウオセEE
123 (タ) 長b&~長b 36ソEE
に於ける「EE(存在量記号除去の規則)」の「対象」は、「b」はあって、「a」ではない。
従って、
(02)(05)(07)により、
(08)
12 (ナ) 兎a→~象a ト含意の定義
12 (ニ)∀x(兎x→~象x) ナUI
が加はったとしても、
12 6 (ソ) 長b&~長b ウオセEE
123 (タ) 長b&~長b 36ソEE
に於ける「EE(存在量記号除去の規則)」は、「正しい」ままであって、「マチガイ」には、ならない。
従って、
(01)~(08)により、
(09)
要するに、
(1)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。然るに、
(2)∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)}。故に、
(3)∀x(兎x→~象x)。
といふ「推論(三段論法)」、すなはち、「日本語」で言へば、
(1)象は鼻が長い。然るに、
(2)兎の耳は長いが、兎の耳は鼻ではない。故に、
(3)兎は象ではない。
といふ「推論(三段論法)」は、「妥当(valid)」である。
然るに、
(10)
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}。
② ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
といふ「論理式」は、すなはち、
① すべてxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、yは長い}。
② すべてxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、yは長く、あるzがxの鼻でなく、尚且つ、長い。といふことはない}。
といふ「意味」である。
従って、
(10)により、
(11)
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}。
の場合は、
① 象の、鼻以外のパーツに関しては、長いとも、長くない。
とも、言ってゐない。
然るに、
(10)により、
(12)
② ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
② すべてxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、yは長く、あるzがxの鼻でなく、尚且つ、長い。といふことはない}。
といふことは、
② 象は鼻は長いが、鼻以外は長くない。
といふことである。
然るに、
(13)
② 象は鼻は長いが、鼻以外は長くない。
といふのであれば、
② 象は鼻が長い。
のであって、
① 象は鼻は長い。
ではない。
従って、
(09)(12)(13)により、
(14)
② 象は鼻が長い。
といふ「日本語」は、
② ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
② すべてxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、yは長く、あるzがxの鼻でなく、尚且つ、長い。といふことはない}。
といふ「述語論理」に、対応する。
然るに、
(15)
② ∃y(鼻yx&長y)
は、「命題関数(Proposition function)」であって、
② ∀z(~鼻zx→~長z)
も、「命題関数(Proposition function)」であって、
② ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
は、「論理式(well-formed-formula)」である。
然るに、
(16)
(1)象は鼻が長い。
(〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
(〃)すべてxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、yは長く、あるzがxの鼻でなく、尚且つ、長い。といふことはない}。
に於いて、「変数x」は、
① ∀x の中にも、
②{ }の中にも、
③( )の中にも、
④( )の中にも、現れる。
然るに、
(17)
(1)鼻は長い。
(〃)∃y(鼻yx&長y)
(〃)あるyはxの鼻であって、yは長い。
に於いて、「変数y」は、
① ∃y の中と、
②( )の中にしか、現れない。
然るに、
(18)
(ⅰ)論理式または命題関数において、量記号が現れる任意の箇所の作用範囲は、問題になっている変数が現れる少なくとも2つの箇所を含むであろう(その1つの箇所は量記号そのもののなかにある);
(論理学初歩、E.J.レモン、竹尾 治一郎・浅野 楢英 訳、1973年、183頁)
従って、
(14)~(18)により、
(19)
(1)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
といふ「論理式」に於ける、「変数x」の「作用範囲(スコープ)」は、
(1)象は鼻が長い。
(〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
(〃)すべてxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、yは長く、あるzがxの鼻でなく、尚且つ、長い。といふことはない}。
といふ「文」の「全体(総体)」である。
(20)
(1) ∃y(鼻yx&長y)
といふ「命題関数」に於ける、「変数x」の「作用範囲(スコープ)」は、
(1)象は鼻が長い。
(〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
(〃)すべてxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、yは長く、あるzがxの鼻でなく、尚且つ、長い。といふことはない}。
といふ「文」の「全体(総体)」ではなく、
(1) ∃y(鼻yx&長y)
(〃) あるyはxの鼻であって、yは長く、
といふ「一部分」である。
従って、
(19)(20)により、
(21)
「象(x)」=「主語(x)」 であって、
「鼻(y)」=「主語(y)」 であるならば、
(1)象は鼻が長い。
(〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
(〃)すべてxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、yは長く、あるzがxの鼻でなく、尚且つ、長い。といふことはない}。
に於いて、「象(x)」は、「文の全体(総体)の主語」であって、「鼻(y)」は、「文の一部の主語」である。
然るに、
(22)
動詞、形容詞ニ對シテ其主語アルト同ジク、主語ト説語(動詞或ハ形容詞)トヨリ成レル一ノ説話(即チ文)ニ對シテモ更ニソノ主語アルコト國語ニハ屡々アリ。例ヘバ「象は體大なり」ノ「象」、「熊は力強し」ノ「熊」、「鳥獸蟲魚皆性あり」ノ「鳥獸蟲魚」、「仁者は命長し」ノ「仁者」、「賣藥は效能薄し」ノ「賣藥」、「慾は限無し」ノ「慾」、「酒は養生に害あり」ノ「酒」、「支那は人口多し」ノ「支那」ノ如キハ、皆、「體大なり」「力強し」等ノ一説話ニ對シテ更ニソノ主語タル性格ヲ有ス。何トナレバ「象は體大なり」「熊は力強し」等ヨリ「象」「熊」等ノ再度ノ主語ヲ取去ル時ハ、殘餘ハ「體大なり」「力強し」等トナリテ、文法上ノ文ノ形ハ完全ニ之ヲ具フルニモ拘ラズ、意義ニ不足ヲ生ジ、其事ノ主トアルベキ「象」「熊」等ノ名詞ヲ竢ッテ始メテ意義ノ完全ナル一圓ノ説話ヲ成サントスル傾アルコト、ナホ普通ノ動詞、形容詞ノ名詞ヲ竢ッテ始メテ一ノ完全ナル説話ヲ成サントスル傾アルト同趣味ノモノアレバナリ。殊ニ「性有り」「限無し」等ノ一種ノ説話ニ對シテハ、實用ノ際ニ再度ノ主語ノ必要アル事ハ頗ル顯著ナルニアラズヤ。コレハ「うら(心)やまし(疚)」「て(質)がたし(堅)」ナドノ一説話ノ轉シテ一ノ形容詞トナリ、然ル上ハ實用ノ際ニ更ニソノ主語ヲ取ルト一般ナリ。サレバ「富貴は羨し」ノ「うらやまし」ニ對シテ「富貴」ヲ主語トイフヲ至當トセバ、「體大なり」「力強し」ニ對シテ「象」「熊」ヲソノ主語トイフモ亦不當ニハアラジ。斯カレバコノ類ノ再度ノ主ヲ予ハ別ニ「總主」ト名ヅケントス。
總主ハ斯ク頗ル簡單ニ説明セラルベク、亦容易ニ會得セラルベキ者ナリ。學者ノ潛思苦慮ヲモ要セズ、考古引證ヲモ須タズシテ、小學ノ兒童モ、口頭ニ、文章ニ、此語法ヲ用ヰ、歌人文士モ之ヲ用ヰテ毫モ疑フ事ナシ。コノ語法ハ本ヨリ我國ニ有リシナランガ、漢學ノ流行ニ連レテ益廣ク行ハレ、今日トナリテハ最早之ヲ目シテ國語ノ法則ニ非ズトイフヲ得ザルニ至レリ。然ルニ國語ノ法則トシテ日本ノ文法ニ之ヲ編入スル者ナキハ何故ゾ。西洋ノ言語ニ類似ノ語法ナク、西洋ノ文典ニ類似ノ記載ナキガ故ニハ非ザルカ。
(草野淸民、國語の特有セル語法 ― 總主、『帝國文學』五卷五號、明治三十二年:大修館書店、日本の言語学 第3巻 文法Ⅰ、1978年、533頁)
従って、
(21)(22)により、
(23)
(1)象は體大なり。
だけでなく、
(1)象は鼻が長い。
(〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
(〃)すべてxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、yは長く、あるzがxの鼻でなく、尚且つ、長い。といふことはない}。
に於ける、「象(x)」を、「總主」と呼ぶのであれば、草野淸民先生の言ふ、「總主」は、「(述語論理的な)總主」である、といふことになる。
従って、
(22)(23)により、
(24)
「總主」は、「西洋の言語に類似の語法はなく」とも、「述語論理といふ言語には類似の語法」があることになる。
(25)
(06)の「述語計算」を説明すると、
1 (1)象は鼻が長い。 A
1 (〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)} A
2 (2)兎の耳は長いが、兎の耳は鼻ではない。 A
2 (〃)∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)} A
3 (3)ある兎は象である。 A
3 (〃)∃x(兎x&象x) A
といふ「3つの仮定」を行ふと、「矛盾」が生じるため、
1 (1)象は鼻が長い。 A
1 (〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)} A
2 (2)兎の耳は長いが、兎の耳は鼻ではない。 A
2 (〃)∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)} A
といふ「2つの仮定」を、「否定」しないのであれば、
3 (3)ある兎は象である。 A
3 (〃)∃x(兎x&象x) A
といふ「1つの仮定」を、「否定」せざるを得ない。
といふのが、「証明(背理法)」の「あらすじ」です。
然るに、
(26)
1 (1)象は鼻が長い。 A
1 (〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)} A
2 (2)兎の耳は長いが、兎の耳は鼻ではない。 A
2 (〃)∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)} A
ではなく、
1 (1)象は鼻が長い。 A
1 (〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)} A
2 (2)兎の耳は長いが、兎の耳は鼻ではない。 A
2 (〃)∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)} A
とするならば、「矛盾」は生じないため、
(1)象は鼻が長い。然るに、
(2)兎の耳は長いが、兎の耳は鼻ではない。故に、
(3)兎は象ではない。
といふ「推論(三段論法)」が、「妥当(valid)」であるためには、
1 (1)象は鼻が長い。 A
1 (〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)} A
といふ風に、「仮定」せざるを得ない。
従って、
(27)
① 象は鼻が長い。
といふ「日本語」は、「述語論理」としては、
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
といふ風に、「翻訳」せざるを得ない。
然るに、
(22)により、
(28)
① 象は鼻が長い。
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
に於ける、
① 象は
① ∀x{象x
といふ「それ」は、草野淸民先生が、所謂、「總主」である。