日本語の「は」と「が」について。

象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
とりあえず「三上文法」を「批判」します。

(124)「誰が犯人か。」の「が」と「WH移動(強調形)」について。

2018-12-20 17:31:46 | 「は」と「が」
―「昨日の記事(123)」の続きを書きます。―
(25)
① A犯人である。
② A以外は犯人ではない
犯人はAである。
に於いて、
①=②=③ である。
といふことからすれば、
① 誰が犯人か。
という「疑問文」は、
① A犯人である。
② A以外は犯人ではない
犯人はAである。
といふ「答へ」を、「期待」してゐる。
然るに、
(26)
① A犯人である。
といふ「答へ」を、「期待」してゐるのであれば、
① 誰犯人であるか。
ではなく、
④ 誰犯人であるか。
といふ風に、「質問」することは、「不自然」である。
従って、
(27)
① 誰犯人か。
に対して、
④ 誰犯人か。
といふ「日本語」は、存在しない
然るに、
(28)
(3) 未知と既知
この組み合わせは次のような場合に現われる。
 私大野です。
これは、「大野さんはどちらですか」というような問いに対する答えとして使われる。つまり文脈において、「大野」なる人物はすでに登場していて既知である。ところが、それが実際にどの人物なのか、その帰属する先が未知である。その未知の対象を「私」と表現して、それをで承けた。それゆえこの形は、
 大野は私です。
に置きかえてもほぼ同じ意味を表わすといえる(大野晋、日本語の文法を考える、1978年、34頁)。
従って、
(25)(28)により、
(29)
① どちら大野さんですか。
② 私大野です。
③ 大野私です。
に於いて、
①=②=③ である。
従って、
(27)(29)により、
(30)
(未知)が犯人か。
① どちら(未知)大野さんですか。
といふことにだけ、「注目」すると、
①     の上には、
未知 が有る。
といふ「誤解」を、生むことになる。
然るに、
(31)
(ⅰ)
① AB。
② A以外はBでない
BはAである。
に於いて、
①=②=③ である。
(ⅱ)
① A is B.
といふ「英語」に於いて、
① A を「強く発音」すると、
① AB。
② A以外はBでない
BはAである。
といふ「意味」になる。
(ⅲ)
④ Aは(清音)
に対する、
① A音)
は、「強調形」である。
cf.
もし音を発音するときの物理的・身体的な口腔の膨張によって「音=大きい」とイメージがつくられているのだとしたら、面白いですね。この仮説が正しいとすると、なぜ英語話者や中国語話者も音に対して「大きい」というイメージを持っているか説明がつきます(川原繁人、音とことばの不思議な世界、2015年、13頁)。
従って、
(31)により、
(32)
④ 誰は(清音)好きか。
① 誰音)好きか。
に於いて、
④ 誰は(清音)
に対する、
① 誰音)
は、「強調形」であるが、固より、
① 誰好きか。
に対する、
④ 誰好きか。
といふ「日本語」は、存在しない
然るに、
(33)
前置による強調
動詞についての目的語は、その動詞の後に置かれるのが、漢語における基本構造としての単語の配列のしかたである。また、漢語における介詞は、ほとんど、動詞から発達したものであって、その目的語も、その介詞の後に置かれるのが、通則であるということができる。しかし、古代漢語においては、それらの目的語疑問詞である場合には、いずれも、その動詞・介詞の前におかれている。このように、漢語としての通常の語順を変えて、目的語の疑問詞前置することは、疑問文において、その疑問の中心になっている疑問詞を、特に強調したものにちがいない(鈴木直治、中国語と漢文、1975年、334・5頁)。
従って、
(33)により、
(34)
「漢文」の場合は、例へば、
④ 好彼(彼を好む)。
に対する、
好(誰をか好む)。
といふ、
④「目的語」の「前置(倒置)形」は、「目的語」を、「強調」する。
従って、
(32)(34)により、
(35)
① 誰音)好きか。
好(誰をか好む)。
といふ「日本語」と「漢文」に於いて、
① 誰音)
① 誰(前置形)
は、両方とも、「強調形」である。
然るに、
(36)
④ I like her.
に対して、
Whom do you like?
である。
然るに、
(37)
④ I like her.
といふ「語順」からすれば、
Whom do you like?
ではなく、
① Do you like Whom
といふ「語順」でなければ、ならない。
従って、
(33)~(37)により、
(38)
好(誰をか好む)。 といふ「漢文の語順」に関しては、
漢語としての通常の語順を変えて、目的語の疑問詞を前置することは、疑問文において、その疑問の中心になっている疑問詞を、特に強調したものにちがいなく、
Whom do you like?  といふ「英語の語順」に関しては、
英語としての通常の語順を変えて、目的語の疑問詞を前置することは、疑問文において、その疑問の中心になっている疑問詞を、特に強調したものにちがいない。
然るに、
(39)
『孟子』の原文と趙岐の注を比較すると上古の語順後漢時代に、すでに変化して現代語式なっていたことがわかる。すなわち『孟子』では「敬」「先」と賓語の誰が動詞の前に来ている(太田辰夫、中国語通史考、1988年、28頁)。
従って、
(38)(39)により、
(40)
好(誰をか好む)。 といふ「漢文の語順」は、後漢時代に、
① 好(誰を好む)。  といふ「語順」に、戻って(変はって)しまったものの、
Whom do you like?  といふ「英語の語順」は、
① Do you like Whom?  といふ「語順」に、戻って(変はって)はしまはずに、
Whom do you like?  といふ「語順」のままである。といふことになる。
然るに、
(41)
英語(や多くのヨーロッパ言語)のWH要素文頭移動する。日本語(中国語、韓国語など)ではWH要素移動しない(日本語の疑問文について - 神戸松蔭女子学院大学Adobe PDF)。
従って、
(40)(41)により、
(42)
敬(誰をか敬す)。
先(誰をか先にす)。
のやうな、「後漢以前の漢文」をも、「中国語(の一種)」である。とするならば、日本語(中国語、韓国語など)ではWH要素移動しない
といふことには、ならない。
然るに、
(43)
グーグル翻訳によると、
① 誰先生ですか。
① 누 선생님 이세요.
① nuga seonsaengnim iseyo.
然るに、
(44)
韓国語の助詞「~」とは?【이・】使い方を教えて! - ハングルマスター
従って、
(43)(44)により、
(45)
韓国語の場合も、日本語と同様に、
① 誰(
① 誰(ga
なのかも、知れない?