―「昨日の記事(227)の、補足」を「補足」をします。―
(16)
① ∃x{盾x&∀y(矛y→~陥yx)}
② ∀y{矛y→∃x(盾x&~陥yx)}
に於いて、
①=② であるはず。
と、思っゐたものの、(08)でも示した通り、
1 (1)∃x{盾x&∀y(矛y→~陥yx)} A
2 (2) 盾a&∀y(矛y→~陥ya) A
2 (3) 盾a 2&E
2 (4) ∀y(矛y→~陥ya) 3&E
2 (5) 矛b→~陥ba 4UE
6(6) 矛b A
26(7) ~陥ba 56MPP
26(8) 盾a&~陥ba 37&I
26(9) ∃x(盾x&~陥bx) 8EI
1 6(ア) ∃x(盾x&~陥bx) 129EE
1 (イ) 矛b→∃x(盾x&~陥bx) 6アCP
1 (ウ)∀y{矛y→∃x(盾x&~陥yx)} イUI
であり、それ故、
① ならば、② である。
然るに、
(17)
1 (1)∀y{矛y→∃x(盾x&~陥yx)} A
1 (2) 矛b→∃x(盾x&~陥bx) 1UE
3 (3) 矛b A
13 (4) ∃x(盾x&~陥bx) 23MPP
5(5) 盾a&~陥ba A
13 (6) 盾a&~陥ba 455EE
13 (7) ~陥ba 6&E
1 (8) 矛b→~陥ba 37CP
1 (9) ∀y(矛y→~陥ya) 8UI
13 (ア) 盾a 6&E
13 (イ) 盾a&∀y(矛y→~陥ya) 9ア&I
13 (ウ)∃x{盾a&∀y(矛y→~陥ya)} イEI
然るに、
(18)
13 (ウ)∃x{盾x&∀y(矛y→~陥yx)} エEI
ではなく、
1 (ウ)∃x{盾a&∀y(矛y→~陥ya)} エEI
でなければ、
① ∃x{盾x&∀y(矛y→~陥yx)}
② ∀y{矛y→∃x(盾x&~陥yx)}
に於いて、
①=② ではない。
従って、
(16)(17)(18)により、
(19)
① ∃x{盾x&∀y(矛y→~陥yx)}=あるxは盾であり、すべてのyについて、yが矛であるならば、yはxを突き通さない。
② ∀y{矛y→∃x(盾x&~陥yx)}=すべてのyについて、yが矛であるならば、あるxは盾であり、yはxを突き通さない。
に於いて、
① ならば、② であるが、
② ならば、① である。ではない。
然るに、
(20)
① ∃x{盾x&∀y(矛y→~陥yx)}=あるxは盾であり、すべてのyについて、yが矛であるならば、yはxを突き通さない。
② ∀y{矛y→∃x(盾x&~陥yx)}=すべてのyについて、yが矛であるならば、あるxは盾であり、yはxを突き通さない。
に於いて、
盾=少女
矛=少年
~陥=愛す
といふ「代入(置換)」を行ふと、
① ∃x{少女x&∀y(少年y→愛yx)}=ある少女は、すべての少年によって、愛される。
② ∀y{少年y→∃x(少女x&愛yx)}=すべての少年には、愛する少女がゐる。
である。
然るに、
(21)
(34)すべての少年はある少女を愛す。
この文には多義性が含まれることが知られる。これは、
① すべての少年によって愛されるあるひとりの(非常に幸運な)少女が存在する。という意味かも知れないし、あるいは、
② すべての少年に対して、彼が愛する(さいわい、別々の)少女がみつかりうる。という意味かもしれない。
(論理学初歩、E.J.レモン 著、竹尾治一郎・浅野楢英 訳、1973年、127頁)
(22)
All the nice girls love a sailor.
(すべてのすてきな女の子は、水夫を愛している)
という文を取り上げてみよう。この文は、「どのすてきな女の子も、水夫を誰か愛している。アリスはジョーを愛し、メアリーはバートを愛し、デスデモーナはビリーを愛している」という意味にもとれるし、また、「どのすてきな女の子も、一人の特定の水夫を愛している。その水夫の名前は、ジャック・タールである」という意味にもとれる。論理学では、この二つの異なる構造をはっきり示す、厳密な表記を提供してくれるのである。
(ジーン・エイチソン著、田中晴美 田中幸子訳、入門言語学、1980年、92頁)
従って、
(21)(22)により、
(23)
① すべての少年によって愛されるある少女がゐる。
② すべての少年は、ある少女を愛してゐる。
に於いて、
① の場合は、
① 特定の、「あるひとりの少女」でなければ、ならないものの、
② の場合は、
② 特定の、「あるひとりの少女」であっても、不特定の、「別々の、複数の少女」であっても、「両方」とも「可能」である。
然るに、
(24)
② の場合に、
② 不特定の、「別々の、複数の少女」であるとすれば、
① 特定の、「あるひとりの少女」ではない。
従って、
(24)により、
(25)
① すべての少年によって愛される、ある少女がゐる。
② すべての少年は、ある少女を愛してゐる。
に於いて、
① ならば、② であるが、
② ならば、① である。ではない。
従って、
(19)~(25)により、
(26)
① ∃x{少女x&∀y(少年y→愛yx)}=ある少女は、すべての少年によって、愛される。
② ∀y{少年y→∃x(少女x&愛yx)}=すべての少年には、愛する少女がゐる。
に於いて、
① ならば、② であるが、
② ならば、① である。ではないし、それ故、
① ∃x{盾x&∀y(矛y→~陥yx)}=あるxは盾であり、すべてのyについて、yが矛であるならば、yはxを突き通さない。
② ∀y{矛y→∃x(盾x&~陥yx)}=すべてのyについて、yが矛であるならば、あるxは盾であり、yはxを突き通さない。
に於いても、
① ならば、② であるが、
② ならば、① である。ではない。
然るに、
(21)(26)により、
(27)
① ∃x{少女x&∀y(少年y→愛yx)}=ある少女は、すべての少年によって、愛される。
といふことは、その「左辺」からすると、
① すべての少年によって愛されるあるひとりの(非常に幸運な)少女が存在する。といふ意味である。
従って、
(26)(27)により、
(28)
① ∃x{盾x&∀y(矛y→~陥yx)}=あるxは盾であり、すべてのyについて、yが矛であるならば、yはxを突き通さない。
といふことは、その「左辺」からすると、
① すべての矛を以てしても、突き通すことが出来ない(非常に堅牢な)ひとつの盾が存在する。といふ意味である。
然るに、
(29)
楚人に盾と矛とを鬻く者有り。
之を誉めて曰く、
吾が盾の堅きこと、能陥す莫きなり。
従って、
(26)(28)(29)により、
(30)
吾が盾の堅きこと、能陥す莫きなり。
といふことは、
① ∃x{盾x&∀y(矛y→~陥yx)}=あるxは盾であり、すべてのyについて、yが矛であるならば、yはxを突き通さない。
② ∀y{矛y→∃x(盾x&~陥yx)}=すべてのyについて、yが矛であるならば、あるxは盾であり、yはxを突き通さない。
に於いて、この場合は、
① の「意味」であって、
② の「意味」ではない。