(01)
All the nice girls love a sailor.
(すべてのすてきな女の子は、水夫を愛している)
という文を取り上げてみよう。この文は、「どのすてきな女の子も、水夫を誰か愛している。アリスはジョーを愛し、メアリーはバートを愛し、
All the nice girls love a sailor.
(すべてのすてきな女の子は、水夫を愛している)
という文を取り上げてみよう。この文は、「どのすてきな女の子も、水夫を誰か愛している。アリスはジョーを愛し、メアリーはバートを愛し、
デスデモーナはビリーを愛している」という意味にもとれるし、また、「どのすてきな女の子も、一人の特定の水夫を愛している。その水夫の名前は、ジャック・タールである」という意味にもとれる。論理学では、この二つの異なる構造をはっきり示す、厳密な表記を提供してくれるのである。
(ジーン・エイチソン著、田中晴美 田中幸子訳、入門言語学、1980年、92頁)
然るに、
(02)
① ジャック・タールが、水夫である以上、
① ジャック・タールだけを、愛してゐる。と、言ふのであれば、それだけで、「水夫を愛してゐる。」ことになる。
然るに、
(03)
② ジャック・タール以外にも、水夫はゐるため、
②「水夫を愛してゐる。」といふだけでは、ジャック・タールを、愛しているかどうかは、分からない。
従って、
(02)(03)により、
(04)
① ジャック・タールだけを、愛してゐる。と、言ふのであれば「水夫を愛してゐる。」ことになり、
②「水夫を愛してゐる。」といふだけでは、ジャック・タールを、愛しているかどうかは、分からない。
然るに、
(05)
① ジャック・タールだけを、愛してゐる。と、言ふのであれば「水夫を愛してゐる。」ことになり、
②「水夫を愛してゐる。」といふだけでは、ジャック・タールを、愛しているかどうかは、分からない。
といふことは、
① ならば、② であるが、
② ならば、① である。ではない。
といふことに、他ならない。
然るに、
(ジーン・エイチソン著、田中晴美 田中幸子訳、入門言語学、1980年、92頁)
然るに、
(02)
① ジャック・タールが、水夫である以上、
① ジャック・タールだけを、愛してゐる。と、言ふのであれば、それだけで、「水夫を愛してゐる。」ことになる。
然るに、
(03)
② ジャック・タール以外にも、水夫はゐるため、
②「水夫を愛してゐる。」といふだけでは、ジャック・タールを、愛しているかどうかは、分からない。
従って、
(02)(03)により、
(04)
① ジャック・タールだけを、愛してゐる。と、言ふのであれば「水夫を愛してゐる。」ことになり、
②「水夫を愛してゐる。」といふだけでは、ジャック・タールを、愛しているかどうかは、分からない。
然るに、
(05)
① ジャック・タールだけを、愛してゐる。と、言ふのであれば「水夫を愛してゐる。」ことになり、
②「水夫を愛してゐる。」といふだけでは、ジャック・タールを、愛しているかどうかは、分からない。
といふことは、
① ならば、② であるが、
② ならば、① である。ではない。
といふことに、他ならない。
然るに、
(01)(05)により、
(06)
① ジャック・タールだけを、愛してゐる。と、言ふのであれば「水夫を愛してゐる。」ことになり、
②「水夫を愛してゐる。」といふだけでは、ジャック・タールを、愛しているかどうかは、分からない。
に於いて、
① と、
② は、それぞれ、
① ∃y{水夫y&∀x(素敵x&少女x→愛xy)}
② ∀x{素敵x&少女x→∃y(水夫y&愛xy)}
といふ「述語論理」に、対応する。
従って、
(01)(05)(06)により、
(07)
① ∃y{水夫y&∀x(素敵x&少女x→愛xy)}=All the nice girls love a sailor.
② ∀x{素敵x&少女x→∃y(水夫y&愛xy)}=All the nice girls love a sailor.
に於いて、
① ならば、② であるが、
② ならば、① である。ではない。
然るに、
(08)
1 (1)∃y{水夫y&∀x(素敵x&少女x→愛xy)} A
2 (2) 水夫b&∀x(素敵x&少女x→愛xb) A
2 (3) 水夫b 2&E
2 (4) ∀x(素敵x&少女x→愛xb) 2&E
2 (5) 素敵a&少女a→愛ab 4UE
6(6) 素敵a&少女a A
26(7) 愛ab 56MPP
26(8) 水夫b&愛ab 37&I
26(9) ∃y(水夫y&愛ab) 8EI
1 6(ア) ∃y(水夫y&愛ay) 129EE
1 (ウ) 素敵a&少女a→∃y(水夫y&愛ay) 6アCP
1 (エ)∀x{素敵x&少女x→∃y(水夫y&愛xy)} ウUI
従って、
(08)により、
(09)
① ∃y{水夫y&∀x(素敵x&少女x→愛xy)}
② ∀x{素敵x&少女x→∃y(水夫y&愛xy)}
に於いて、
① ならば、② である。
然るに、
(10)
1 (1)∀x{素敵x&少女x→∃y(水夫y&愛ay)} A
1 (2) 素敵a&少女a→∃y(水夫y&愛ay) 1UI
3 (3) 素敵a&少女a A
13 (4) ∃y(水夫y&愛ay) 23MPP
5(5) 水夫b&愛ab A
13 (6) 水夫b&愛ab 455EE
13 (7) 愛ab 6&E
1 (8) 素敵a&少女a→愛ab 37CP
1 (9) ∀x(素敵x&少女x→愛xb) 8UI
13 (ア) 水夫b 6&E
13 (イ) 水夫b&∀x(素敵x&少女x→愛xb) 9ア&I
13 (ウ)∃y{水夫y&∀x(素敵x&少女x→愛xy)} イEI
然るに、
(11)
① ∃y{水夫y&∀x(素敵x&少女x→愛xy)}
② ∀x{素敵x&少女x→∃y(水夫y&愛xy)}
に於いて、
② ならば、① である。
といふ場合には、
13 (ウ)∃y{水夫y&∀x(素敵x&少女x→愛xy)} イEI
ではなく、
1 (ウ)∃y{水夫y&∀x(素敵x&少女x→愛xy)} イEI
でなければ、ならない。
従って、
(10)(11)により、
(12)
① ∃y{水夫y&∀x(素敵x&少女x→愛xy)}=All the nice girls love a sailor.
② ∀x{素敵x&少女x→∃y(水夫y&愛xy)}=All the nice girls love a sailor.
に於いて、
② ならば、① である。ではない。
従って、
(07)~(12)により、
(13)
① ∃y{水夫y&∀x(素敵x&少女x→愛xy)}=All the nice girls love a sailor.
② ∀x{素敵x&少女x→∃y(水夫y&愛xy)}=All the nice girls love a sailor.
に於いて、たしかに、
① ならば、② であるが、
② ならば、① である。ではない。
従って、
(13)により、
(14)
① ∃y{水夫y&∀x(素敵x&少女x→愛xy)}=All the nice girls love a sailor.
② ∀x{素敵x&少女x→∃y(水夫y&愛xy)}=All the nice girls love a sailor.
に於ける、「左辺」である、
① ∃y{水夫y&∀x(素敵x&少女x→愛xy)}
② ∀x{素敵x&少女x→∃y(水夫y&愛xy)}
に於いて、
①=② ではない、
従って、
(01)(14)により、
(15)
① All the nice girls love a sailor.
② All the nice girls love a sailor.
といふ「英文」は、「曖昧(ambiguous)」である。
然るに、
(16)
① 或水夫
といふ「漢文」があるとして、
① ∃y{水夫y&∀x(素敵x&少女x→愛xy)}
といふ「述語論理」は、
① 或水夫為全素敵少女所愛=
① 或水夫為〔全素敵少女所(愛)〕⇒
① 或水夫〔全素敵少女(愛)所〕為=
① 或る水夫〔全ての素敵な少女の(愛する)所と〕為る。
といふ「漢文訓読」に、相当する。
(06)
① ジャック・タールだけを、愛してゐる。と、言ふのであれば「水夫を愛してゐる。」ことになり、
②「水夫を愛してゐる。」といふだけでは、ジャック・タールを、愛しているかどうかは、分からない。
に於いて、
① と、
② は、それぞれ、
① ∃y{水夫y&∀x(素敵x&少女x→愛xy)}
② ∀x{素敵x&少女x→∃y(水夫y&愛xy)}
といふ「述語論理」に、対応する。
従って、
(01)(05)(06)により、
(07)
① ∃y{水夫y&∀x(素敵x&少女x→愛xy)}=All the nice girls love a sailor.
② ∀x{素敵x&少女x→∃y(水夫y&愛xy)}=All the nice girls love a sailor.
に於いて、
① ならば、② であるが、
② ならば、① である。ではない。
然るに、
(08)
1 (1)∃y{水夫y&∀x(素敵x&少女x→愛xy)} A
2 (2) 水夫b&∀x(素敵x&少女x→愛xb) A
2 (3) 水夫b 2&E
2 (4) ∀x(素敵x&少女x→愛xb) 2&E
2 (5) 素敵a&少女a→愛ab 4UE
6(6) 素敵a&少女a A
26(7) 愛ab 56MPP
26(8) 水夫b&愛ab 37&I
26(9) ∃y(水夫y&愛ab) 8EI
1 6(ア) ∃y(水夫y&愛ay) 129EE
1 (ウ) 素敵a&少女a→∃y(水夫y&愛ay) 6アCP
1 (エ)∀x{素敵x&少女x→∃y(水夫y&愛xy)} ウUI
従って、
(08)により、
(09)
① ∃y{水夫y&∀x(素敵x&少女x→愛xy)}
② ∀x{素敵x&少女x→∃y(水夫y&愛xy)}
に於いて、
① ならば、② である。
然るに、
(10)
1 (1)∀x{素敵x&少女x→∃y(水夫y&愛ay)} A
1 (2) 素敵a&少女a→∃y(水夫y&愛ay) 1UI
3 (3) 素敵a&少女a A
13 (4) ∃y(水夫y&愛ay) 23MPP
5(5) 水夫b&愛ab A
13 (6) 水夫b&愛ab 455EE
13 (7) 愛ab 6&E
1 (8) 素敵a&少女a→愛ab 37CP
1 (9) ∀x(素敵x&少女x→愛xb) 8UI
13 (ア) 水夫b 6&E
13 (イ) 水夫b&∀x(素敵x&少女x→愛xb) 9ア&I
13 (ウ)∃y{水夫y&∀x(素敵x&少女x→愛xy)} イEI
然るに、
(11)
① ∃y{水夫y&∀x(素敵x&少女x→愛xy)}
② ∀x{素敵x&少女x→∃y(水夫y&愛xy)}
に於いて、
② ならば、① である。
といふ場合には、
13 (ウ)∃y{水夫y&∀x(素敵x&少女x→愛xy)} イEI
ではなく、
1 (ウ)∃y{水夫y&∀x(素敵x&少女x→愛xy)} イEI
でなければ、ならない。
従って、
(10)(11)により、
(12)
① ∃y{水夫y&∀x(素敵x&少女x→愛xy)}=All the nice girls love a sailor.
② ∀x{素敵x&少女x→∃y(水夫y&愛xy)}=All the nice girls love a sailor.
に於いて、
② ならば、① である。ではない。
従って、
(07)~(12)により、
(13)
① ∃y{水夫y&∀x(素敵x&少女x→愛xy)}=All the nice girls love a sailor.
② ∀x{素敵x&少女x→∃y(水夫y&愛xy)}=All the nice girls love a sailor.
に於いて、たしかに、
① ならば、② であるが、
② ならば、① である。ではない。
従って、
(13)により、
(14)
① ∃y{水夫y&∀x(素敵x&少女x→愛xy)}=All the nice girls love a sailor.
② ∀x{素敵x&少女x→∃y(水夫y&愛xy)}=All the nice girls love a sailor.
に於ける、「左辺」である、
① ∃y{水夫y&∀x(素敵x&少女x→愛xy)}
② ∀x{素敵x&少女x→∃y(水夫y&愛xy)}
に於いて、
①=② ではない、
従って、
(01)(14)により、
(15)
① All the nice girls love a sailor.
② All the nice girls love a sailor.
といふ「英文」は、「曖昧(ambiguous)」である。
然るに、
(16)
① 或水夫
といふ「漢文」があるとして、
① ∃y{水夫y&∀x(素敵x&少女x→愛xy)}
といふ「述語論理」は、
① 或水夫為全素敵少女所愛=
① 或水夫為〔全素敵少女所(愛)〕⇒
① 或水夫〔全素敵少女(愛)所〕為=
① 或る水夫〔全ての素敵な少女の(愛する)所と〕為る。
といふ「漢文訓読」に、相当する。
cf.
「大修館、デジタル大漢和辞典」で調べた限り、「或る人」といふ「用法」は有るものの、「或る水夫」といふ「用法」は無い。
(17)
② ∀x{素敵x&少女x→∃y(水夫y&愛xy)}
といふ「述語論理」は、
② 素敵少女皆有其所愛水夫=
② 素敵少女皆有〔其所(愛)水夫〕⇒
② 素敵少女皆〔其(愛)所水夫〕有=
② 素敵な少女は皆〔其の(愛する)所の水夫〕有り。
といふ「漢文訓読」に、相当する。
然るに、
(18)
① 或水夫為全素敵少女所愛=
① 或水夫為〔全素敵少女所(愛)〕⇒
① 或水夫〔全素敵少女(愛)所〕為=
① 或る水夫〔全ての素敵な少女の(愛する)所と〕為る。
といふ「漢文訓読」は、
① A sailor is loved by all the girls.
といふ「英文」に、相当する。
従って、
(15)~(18)により、
(19)
① All the nice girls love a sailor.
には、
① A sailor is loved by all the girls.
といふ「意味」が、あることになる。
従って、
(01)(19)により、
(20)
① All the nice girls love a sailor.
といふ「英文」は、
① A sailor is loved by all the girls.
といふ「意味」であるかも、知れないし、
① A sailor is loved by all the girls.
ではないのかも知れない。
といふことから、「曖昧(ambiguous)」である。
といふ、ことになる。
(17)
② ∀x{素敵x&少女x→∃y(水夫y&愛xy)}
といふ「述語論理」は、
② 素敵少女皆有其所愛水夫=
② 素敵少女皆有〔其所(愛)水夫〕⇒
② 素敵少女皆〔其(愛)所水夫〕有=
② 素敵な少女は皆〔其の(愛する)所の水夫〕有り。
といふ「漢文訓読」に、相当する。
然るに、
(18)
① 或水夫為全素敵少女所愛=
① 或水夫為〔全素敵少女所(愛)〕⇒
① 或水夫〔全素敵少女(愛)所〕為=
① 或る水夫〔全ての素敵な少女の(愛する)所と〕為る。
といふ「漢文訓読」は、
① A sailor is loved by all the girls.
といふ「英文」に、相当する。
従って、
(15)~(18)により、
(19)
① All the nice girls love a sailor.
には、
① A sailor is loved by all the girls.
といふ「意味」が、あることになる。
従って、
(01)(19)により、
(20)
① All the nice girls love a sailor.
といふ「英文」は、
① A sailor is loved by all the girls.
といふ「意味」であるかも、知れないし、
① A sailor is loved by all the girls.
ではないのかも知れない。
といふことから、「曖昧(ambiguous)」である。
といふ、ことになる。