かみさんから、今日はカメラを持ってきて黒髪のある姿を撮っておいて、と頼まれた。
2,3日前から始まった頭髪の抜け毛が、かなりひどくなってきたという。
写真にとどめておきたい、と薄化粧をして待っていた。
それでも冗談まかせに私にこんな話をして笑っていた。
「毎日こまめに病室の掃除をしてくれているおじさん、知っているでしょう、あのおっちゃんに今日こんなこと言われちゃったわ。」
「○号室の女の人は、抜ける前にさっさと丸坊主にされとりましたよ」
「へぇー、でも私はそこまではしたくないよ、自然に抜けるのを待つわ」
「(どうせ)あと一週間ですよ・・・」
「まさか、床掃除が面倒だからではないのだろうけど・・・・ちょっと傷ついたわ。
多くの患者を見てきているから、多分当たっているのだと思うけど・・・・」
そういいながら指で一つまみ軽く引くとグサリと抜けていた。
・ ・・・
「ちょっと薄くなったかな、でもまだまだどこから見ても病人とは見えないね、きれいだよ。たとえ髪が抜けてしまっても歳をとっても、お前が一番さ」とは私・・・。
「あら、どうもありがとうね・・・歯が浮いて痛くない?」
・・・
息子たちも私たちの元気な様子に安心して、岡山から新幹線で帰っていった。