箱根八里(三島大社→小田原城) 箱根峠到着 標高846M 駒ケ岳が見えて一区切り。古道はときどき途切れ車道も歩きます。
そもそも保育所の目的は「子守」や「託児」だっただろう。
担った人たちは家庭やコミュニティでの自然に育っていく子どもたちの姿をイメージし、それに近づけようとしだろう。
それは近代の学校のもつ教育の機能的なあり方とは一線を画していた。
いわば「子ども(らいし)時間の確保」である。
そして、つかみどころのないそのイメージの中に子どもがいることこそが、子どもたちの将来の“大きなこと”になるように思われるし、実際そうだろう。
「予測困難で不確実、複雑で曖昧」の未来に対して確実にできうることともいえる。
もちろん、保育所も社会的機関である。
行わる保育は意図的に行われ、説明と評価とがあるべきである。
しかし、逆に、その中でこそ漠然としたイメージとしての「子ども(らしい)時間」が確かな形となって見えてくる可能性があるのではないか。
そんな作為的な無作為みたいなことができるのかどうか、あるべき「子ども(らしい)時間」にむけて、各国の知恵を訪ねたい。
テキスト:
秋田喜代美/古賀松香『世界の保育の質評価‐制度に学び、対話を開く‐』明石書店
スウェーデン 1
今世紀に入って、西欧諸国の保育制度は急速に整ってきているようである。
産業構造の変化や女性の社会進出がそれを後押している面が大きいが、特に北欧諸国で見られるように、生涯学習の一環として保育を捉え直すことがその起点となる例もある。
しかし一方で、制度を急づくりすると、保育所の本質である子ども時間の確保を逆に難しくしてしまう面あるのではないか。
例えばドイツでは多くの移民を受け入れることにより、社会的格差がより鮮明になり、結果、保育所のあり方も、格差是正の視点が求められ、それを担保することとして保育所による教科教育が就学前に前倒されつつあるらしい。
また、急速なIT化社会への対応として、保育所へもその初期段階の内容が勧める傾向がる。
もちろん、保育所は公共に益するものとして、ひろくその運営は情報公開され、理解をえられねばならない。一定の水準を維持していくために行政による管理や、評価基準が保育所に適用されてしかるべきである。
そして、その中で保育所も社会情勢にもまれるものである。
ただ、こうした大人の論理が無配慮に持ち込まれると、子どもたちの日々を〝カタイ概念″で縛るようなことになりかねない。
そのあたりの事情を2010年に保育所(就学前学校)のシステムを一新したスウェーデンではどう考えているのだろう。
テキストではスウェーデンの保育について、硬軟両面からの積極的なアプロ―トを紹介している。
行政による保育所(就学前学校)維持と支援
※スウェーデンでは、保育所を就学前学校として、学校庁が管轄している。
2010年に制定された学校法と就学前学校教育要領により現在5つの異なる視点から保育所評価がなされている。
学校査察庁による監査
2011年以降、学校の1つとなった就学前学校(保育所)は教育査察庁と言う独立機関によって、他の学校種と平等に運営の妥当性や教育環境の質を評価されている。保育所を生涯学習の中に位置づけていることの制度的な表れなのかもしれない。
この監査がいわばオフィシャルな評価である。
「監査はそもそも就学前学校の活動が、学校法や自治体の条件、教育要領に示された基準に則ってただしく行っているかを確認することを目的とした評価活動」であり、同じ趣旨で職員と保護者へもアンケートを行い学校法や教育要領の内容にそって保育保が運営されているかを確認する。
上の表は、監査の前に保育所が点検するいわばチャックリストでこれにそって監査がおこなわれることになる。
「発達と学び」が初めにあり、それを支えるものとして、価値観、環境、人材育成や啓発などが続いている。
2年に一度行わるこの監査は、学校査察庁が直接職員アンケートや保護者アンケートまで行う。評価が通り一遍のものでないことがうかがえる。
学校庁が提供する教師の自己評価ツール・ BRUK
一方で、学校庁では学校教育全般にわたる教師の自己評価ツールを提供している。
「ツールには、基礎学校(義務教育課程)版と修学前学校版も用意されている。活用は義務でなく任意である。評価の目的は、教師が各教育要領に基づいた実践をおこなっているか教育要領のねらいに対してどれだけ達成できているのかを確認し、それをもとに同僚と話し合いながら活動の質を上げていくモチベーションやインスピレーションを得ることであるとされる」という。
「システムの提供を通じて、生涯学習社会における学び続ける大人をそだてようとする、学校庁の姿勢の一端をうかがい知ることができよう。」
自治体独自の就学前調査
さらに、自治体の評価がある場合がある。
これはストックホルムの例である。
「ストックホルム市では、公立、私立を問わず、市内の全就学前学校と教育的ケア施設を活用する保護者へのアンケート調査を実施している。毎年2月初旬~4月初旬に実施され、郵送、またはWeb経由で回答がもとめられる。」
これも表を貼っておく。
それにしても、自治体行政が、それぞれの事情のある保育所に、一斉に利用者からのアンケート取ると言うのは、日本では考えづらいし、かなりの管理的な作用が、各保育所にはかかるに違いなが、テキストでは、「評価が保護者の就学前学校選択における一助になるよう図り、スウェーデンにおける民主主義や社会参加を重視する価値観を反映させようとしていることが理解できよう」と解釈する。
就学前学校における実践評価:教育的ドキュメンテーション
しかし、この国では保育所をこうした多角的な評価で縛る意図はないことが、ドキュメンテーションという手法の推進に見られる。
「教育的ドキュメンテーションは、テーマ活動というプロジェクト型の保育実践と一体化した保育実践評価手法である。活動の様子を記録し可視化することで、子どもたちと一緒に活動を振り返りながら、次の展開を考え、子どもと大人が学びのプロセスを共有する。同時に、保育者が記録をもとに保育実践を省察して、子そも理解や実践への新たな問いを見出していくことにより、保育の質を向上的に改善していくいこうとするものである。教育的ドキュメンテーションは保育実践研究に基づいて開発され、学校庁によってその活用を推奨される。しかし、必ずしもこの手法を活用する必要はなく、評価方法の選択は各就学前学校の裁量に委ねられる。」
この方法についてもテキストでは、次の通り評価する。
「行政側は多様な質の評価システムを整備・提供しながら、スウェーデンの教育として質を担保する仕組みを形成しているようだ。一方、保育現場では、ケア・発達・学びを一体化するアプローチにおいて、子どもの学びの側面へより意図的に働きかけながら、保育の質を向上させようとする姿勢が見られる。ただし、学びの評価が到達度評価ではなく、教育的ドキュメンテーションを用いた質的評価であり、評価の視点も評価の視線も、子供の習熟度ではなく、保育実践の改善に向けられている点は、スウェーデンの保育における質の基準や向上性に関わる原理を理解する上で重要な意味をもつ。」
実は、これらの様々な政策の裏には、学校法や就学前学校教育要領があり、さらに伝統的に堅持してきた子どもの成長・発達観がある。こうしたアカデミックな知能所見が行政に、また保育の現場に浸透しているのかもしれない。
次回はスウェーデンの思想と理念にさかのぼりたい。
そもそも保育所の目的は「子守」や「託児」だっただろう。
担った人たちは家庭やコミュニティでの自然に育っていく子どもたちの姿をイメージし、それに近づけようとしだろう。
それは近代の学校のもつ教育の機能的なあり方とは一線を画していた。
いわば「子ども(らいし)時間の確保」である。
そして、つかみどころのないそのイメージの中に子どもがいることこそが、子どもたちの将来の“大きなこと”になるように思われるし、実際そうだろう。
「予測困難で不確実、複雑で曖昧」の未来に対して確実にできうることともいえる。
もちろん、保育所も社会的機関である。
行わる保育は意図的に行われ、説明と評価とがあるべきである。
しかし、逆に、その中でこそ漠然としたイメージとしての「子ども(らしい)時間」が確かな形となって見えてくる可能性があるのではないか。
そんな作為的な無作為みたいなことができるのかどうか、あるべき「子ども(らしい)時間」にむけて、各国の知恵を訪ねたい。
テキスト:
秋田喜代美/古賀松香『世界の保育の質評価‐制度に学び、対話を開く‐』明石書店
スウェーデン 1
今世紀に入って、西欧諸国の保育制度は急速に整ってきているようである。
産業構造の変化や女性の社会進出がそれを後押している面が大きいが、特に北欧諸国で見られるように、生涯学習の一環として保育を捉え直すことがその起点となる例もある。
しかし一方で、制度を急づくりすると、保育所の本質である子ども時間の確保を逆に難しくしてしまう面あるのではないか。
例えばドイツでは多くの移民を受け入れることにより、社会的格差がより鮮明になり、結果、保育所のあり方も、格差是正の視点が求められ、それを担保することとして保育所による教科教育が就学前に前倒されつつあるらしい。
また、急速なIT化社会への対応として、保育所へもその初期段階の内容が勧める傾向がる。
もちろん、保育所は公共に益するものとして、ひろくその運営は情報公開され、理解をえられねばならない。一定の水準を維持していくために行政による管理や、評価基準が保育所に適用されてしかるべきである。
そして、その中で保育所も社会情勢にもまれるものである。
ただ、こうした大人の論理が無配慮に持ち込まれると、子どもたちの日々を〝カタイ概念″で縛るようなことになりかねない。
そのあたりの事情を2010年に保育所(就学前学校)のシステムを一新したスウェーデンではどう考えているのだろう。
テキストではスウェーデンの保育について、硬軟両面からの積極的なアプロ―トを紹介している。
行政による保育所(就学前学校)維持と支援
※スウェーデンでは、保育所を就学前学校として、学校庁が管轄している。
2010年に制定された学校法と就学前学校教育要領により現在5つの異なる視点から保育所評価がなされている。
学校査察庁による監査
2011年以降、学校の1つとなった就学前学校(保育所)は教育査察庁と言う独立機関によって、他の学校種と平等に運営の妥当性や教育環境の質を評価されている。保育所を生涯学習の中に位置づけていることの制度的な表れなのかもしれない。
この監査がいわばオフィシャルな評価である。
「監査はそもそも就学前学校の活動が、学校法や自治体の条件、教育要領に示された基準に則ってただしく行っているかを確認することを目的とした評価活動」であり、同じ趣旨で職員と保護者へもアンケートを行い学校法や教育要領の内容にそって保育保が運営されているかを確認する。
上の表は、監査の前に保育所が点検するいわばチャックリストでこれにそって監査がおこなわれることになる。
「発達と学び」が初めにあり、それを支えるものとして、価値観、環境、人材育成や啓発などが続いている。
2年に一度行わるこの監査は、学校査察庁が直接職員アンケートや保護者アンケートまで行う。評価が通り一遍のものでないことがうかがえる。
学校庁が提供する教師の自己評価ツール・ BRUK
一方で、学校庁では学校教育全般にわたる教師の自己評価ツールを提供している。
「ツールには、基礎学校(義務教育課程)版と修学前学校版も用意されている。活用は義務でなく任意である。評価の目的は、教師が各教育要領に基づいた実践をおこなっているか教育要領のねらいに対してどれだけ達成できているのかを確認し、それをもとに同僚と話し合いながら活動の質を上げていくモチベーションやインスピレーションを得ることであるとされる」という。
「システムの提供を通じて、生涯学習社会における学び続ける大人をそだてようとする、学校庁の姿勢の一端をうかがい知ることができよう。」
自治体独自の就学前調査
さらに、自治体の評価がある場合がある。
これはストックホルムの例である。
「ストックホルム市では、公立、私立を問わず、市内の全就学前学校と教育的ケア施設を活用する保護者へのアンケート調査を実施している。毎年2月初旬~4月初旬に実施され、郵送、またはWeb経由で回答がもとめられる。」
これも表を貼っておく。
それにしても、自治体行政が、それぞれの事情のある保育所に、一斉に利用者からのアンケート取ると言うのは、日本では考えづらいし、かなりの管理的な作用が、各保育所にはかかるに違いなが、テキストでは、「評価が保護者の就学前学校選択における一助になるよう図り、スウェーデンにおける民主主義や社会参加を重視する価値観を反映させようとしていることが理解できよう」と解釈する。
就学前学校における実践評価:教育的ドキュメンテーション
しかし、この国では保育所をこうした多角的な評価で縛る意図はないことが、ドキュメンテーションという手法の推進に見られる。
「教育的ドキュメンテーションは、テーマ活動というプロジェクト型の保育実践と一体化した保育実践評価手法である。活動の様子を記録し可視化することで、子どもたちと一緒に活動を振り返りながら、次の展開を考え、子どもと大人が学びのプロセスを共有する。同時に、保育者が記録をもとに保育実践を省察して、子そも理解や実践への新たな問いを見出していくことにより、保育の質を向上的に改善していくいこうとするものである。教育的ドキュメンテーションは保育実践研究に基づいて開発され、学校庁によってその活用を推奨される。しかし、必ずしもこの手法を活用する必要はなく、評価方法の選択は各就学前学校の裁量に委ねられる。」
この方法についてもテキストでは、次の通り評価する。
「行政側は多様な質の評価システムを整備・提供しながら、スウェーデンの教育として質を担保する仕組みを形成しているようだ。一方、保育現場では、ケア・発達・学びを一体化するアプローチにおいて、子どもの学びの側面へより意図的に働きかけながら、保育の質を向上させようとする姿勢が見られる。ただし、学びの評価が到達度評価ではなく、教育的ドキュメンテーションを用いた質的評価であり、評価の視点も評価の視線も、子供の習熟度ではなく、保育実践の改善に向けられている点は、スウェーデンの保育における質の基準や向上性に関わる原理を理解する上で重要な意味をもつ。」
実は、これらの様々な政策の裏には、学校法や就学前学校教育要領があり、さらに伝統的に堅持してきた子どもの成長・発達観がある。こうしたアカデミックな知能所見が行政に、また保育の現場に浸透しているのかもしれない。
次回はスウェーデンの思想と理念にさかのぼりたい。