つぼみな日々

いろんな花の蕾をもっていたい。たくさんの花を咲かせたい。
言葉を紡ぎたい私のブログです。

憶えていない

2013-05-24 23:28:46 | 日記
つい最近までカップラーメンが世界で一番美味しいと思っていた、それには飽きてしまったけれどマクドナルドのハンバーガーはめちゃくちゃ美味しい。
と言った人がいた。
ちなみにその人は、「モスよりもマックの方が断然美味しい」と言う。
また、煮物なども「素材の味がしない方が良い」と言う。

安いからとか手軽だからとか早いからとかの理由で、それらを食べることはもちろんある。
カップラーメンが美味しいと言うことも、マクドナルドのハンバーガーが美味しいと言うことも、時にあることだと思う。
そして、ある状況下で食べるそれは格別に美味しいのかもしれない。

ただ、私は食べ物にはさほど強い執着心はないけれど、マクドナルドのハンバーガーがめちゃくちゃ美味しいと思ったことは一度もない。
もっと言うと、できれば食べたくない。
カップラーメンについては確かにとても美味しいと思うこともある。

それにしても、カップラーメンやマクドナルドのハンバーガーを「世界で一番美味しい」とはなかなか言えるものではないと思う。
その人は、単なるその場の面白みの増長としてそれを言ったわけではなさそうだった。
美味しい食べ物の多くを知らないということもあり得るが、実際に他の人がカップラーメンやマクドナルドのハンバーガーよりも美味しいと思うようなものをその人が食べていることは間違いはない。
だから、その人にとって、とりあえず今のところ本当にそう思うのだ、ということらしかった。

そうなった成り行きとして、その人のお母さんが「無添加」や「自然素材」にこだわる方で中学生頃までほとんど化学調味料が入った食べ物や、ファストフードなどを食べたことがなかったのだと言う。
その反動で高校生になった頃には、その味覚の強い刺激が麻薬的になってしまったのだと。

私は味覚は社会化されるものだと思うし、脳はそう思い込む、ということができると思う。
子どもが初めて口にしたものを吐き出してしまったのが、例えば不味かったことが理由だったとしても、その後大人が美味しいよと、美味しい顔をして食べるのを見せ続ければたいてい食べられるようになるものだと思う。
幼少期だけでなくても、この味は美味しい、健康に良い、ということは親だけではなく教育やメディアを通してあらゆるところから刷り込まれていく。

そうなると、味覚の一部分は世間的な価値観で作られているような気もする。
ハンバーガーに関して言えば、マジョリティの意見はおそらく「モスはマックよりも値段が高いけれど、高いなりに美味しい」であるだろう。
マックよりモスの方が美味しいのは、マックよりもより素材そのものに近く、素材そのものの味の方が美味しいという価値観も判断に含まれるのではないかと思う。
出汁がきいていて美味しい、素材の味が強い野菜は美味しい、スパイスがたくさん入った複雑な味が美味しい、三つ葉の風味際立っていて美味しい、それらを世間が良しとしているとき、それらの価値観は前提としてもう覆せないものとしてあるのではと思ってしまう。
もちろん、自分の舌の判断も大きく関わっているから、人によって好き嫌いは異なるのだけど。

よく大人になるとミョウガやビールが美味しいと思うようになると言うことがあるが、それは、脳が美味しいと思い込んでいる、と私は思っている。
つい先日何か小さな川魚の天ぷらを頭から食べて私は「美味しい」と言ったし、実際にそう感じだのだけれど、何の価値観もない舌でそれを食べたら、私は果たしてあの感じを「美味しい」とするのだろうか。
生ビールと発泡酒を目隠しをして飲み比べをして、明らかに違いは分かったけれど、私は「生ビールの方が美味しい」と本当に言い切れるだろうか。
今考えるに、ビールについてはどちらも特に美味しくはない、ということになってしまうが。

脳が美味しい、と思うことが結局のところ、自分の美味しい、ということに変わりはないのだから、世間的な価値観の上でそれが成り立っていたとしても別にそのことは悪いことでは全然ない。
とにもかくにも、自分の美味しい、が答えだ。
しかしながら、すべての前提の価値観を取り去ったときの自分の味覚というものも知ってみたいと思う。
もしかすると、実際に快感物質が出るような、味覚をダイレクトに刺激する化学調味料の方を選ぶのではないかと、そんな気もする。

「カップラーメンが世界で一番美味しい」も「マクドナルドのハンバーガーはめちゃくちゃ美味しい」も大事な物の見方だと、そう思う。
ただ、カップラーメンよりもマクドナルドのハンバーガーよりも美味しいものは確実に存在すると私は思っているけれど。
本当に美味しい経験、というのは私も乏しいのだとは思う。



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