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映画に出てくる、主な処分予定地・候補地
◆ 安全な捨て場 (東京新聞【本音のコラム】)
鎌田 慧(かまたさとし・ルポライター)
ドキュメンタリー映画「100000年後の安全」は、フィンランド・オルキルオト島の地下四百二十メートルに建設中の、使用済み核燃料の最終処分場、オンカロをテーマにした作品だった。
十万年たってなお核廃棄物は安全かどうか。やがて氷河期が来たときどうなるか、などの問いかけに圧倒させられた。
人類は自分の世代では解決できないものをつくってしまった、と映画館を出ながら思わされた。
スイス在住の英国人核物理学者とスイス人の映画監督が、高レベル核廃棄物の最終処分場を求めて旅をする記録映画「地球で最も安全な場所を探して」もまた、見終わったあと、重苦しい気分にさせられる作品だ。
アメリカで原爆用のプルトニウムを精製したハンフォード・サイト、ドイツのゴアレーベン、スウェーデンのエストハンマル、オーストラリアのオフィサー盆地、青森県六ケ所村など、最終処分場の候補地や核施設のある十二地域を訪ね歩くのだが、安全地帯は見当たらない。
いま日本では北海道の寿都町と神恵内村が最終処分場候補に手を挙げたが、どうなるか。
物理学者と監督は世界をまわったあと、中国のゴビ砂漠に到達する。エンドロールが目路(めじ)の限り続く砂漠を、ロングショットで延々と映しだしているのを視(み)ていると、ああ、どこにもないんだ、との絶望感にとらわれる。
『東京新聞』(2021年3月2日【本音のコラム】)
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