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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

高裁勝訴判決から1年10ヶ月経った再雇用拒否二次訴訟

2017年10月25日 | 日の丸・君が代関連ニュース
 ☆ 再雇用拒否二次訴訟 経過と今後の展望 (リベルテ)
 ☆ 《最高裁に係属するまでの経過》
 再雇用拒否第二次裁判は、二〇〇九年九月二九日に提訴、一二月二一日に第一回弁論が開かれました。私たちの裁判は当初、渡邉弘裁判官(南葛再雇用拒否裁判を指揮し、地裁で都教委の裁量権逸脱を認めた裁判官)一人で進められていました。私たちの陳述に耳を傾ける風がほとんど感じられず、傍聴席からは何度か裁判官に対してヤジが飛ぶという雰囲気でした。
 裁判を簡単に終わらせようとする意図があるのではないかと危惧しましたが、すべての弁論を大法廷で行えるように手配するなど、後になって振り返ってみると原告団の要求に沿った法廷指揮を行っていたと思えます。
 原告本人準備書面の提出によって私たち原告二四名全員の発言の機会を得たこともあり、二〇一二年二月までの二年半、十一回の弁論期日を一人で進めました。
 証拠調べに入る直前に竹田光広裁判長に変わり、まもなく裁判体も通常の三人体制になりました。
 ところが、証拠調べの一環として六月・七月の保護者証人一名、原告三名の尋問が行われたあと、一年余公開の法廷が開かれず、その間、原告団・被告(東京都)そして裁判官の三者による弁論準備期日(進行協議)が七回行われました。
 原告団は証拠として、山梨学院大学の荒牧重人教授には国際人権規約および子どもの権利条約に関する意見書、日本教育法学会理事(当時)の浪本勝年元立正大学教授には学習指導要領にかかわる教育法制に関する意見書、そして早稲田大学の岡田正則教授には再雇用制度と裁量権を中心とした行政法にかかわる二通の意見書を依頼し、裁判所に提出しました。
 そして学者証人尋問を要求していたのですが、都がその必要なしと反対し、裁判官も提出された意見書を見れば十分でしょうということで、弁論準備期目での交渉が難航しました。
 そして二〇一四年の七月に突然竹田裁判長が吉田徹裁判長に替わって驚かされましたが、九月の吉田裁判長下での弁論準備期日では、原告から都の再雇用制度と裁量権にかかわる岡田教授の尋問を強く求め、裁判長もそれを認め、十一月二〇日に第十五回弁論期日として岡田教授の証人尋問が行われました。
 都教委の制度は退職者が定年後にその能力を生かして東京都の教育を支えると同時に定年後の生活を支えるために作られている。教師としての質と能力以外のことを採用条件にするのは他事考慮であり違法である。このように岡田教授は、一九八五年の定年制導入に伴って都が制定した制度の、退職後は希望すれば嘱託員として雇用する、という趣旨を誰にも納得させる論理として展開しました。
 そして非常勤教員制度・再任用制度もその延長として制度化されているとし、近年の最高裁判例などを十分示しながら説明を行い、都もほとんど反駁することができないものでした。
 翌二〇一五年二月九日の結審(第十六回弁論)では弁護士が再雇用拒否の構造を図式化し、それを指し示しながらの説明によって傍聴人だけでなく裁判官をも十分に納得させたように見えました。原告二人の陳述も誰をも肯かせずにはおかない説得力を持ったものでした。
 一〇・二三通達は、職務命令によって「日の丸・君が代」に敬意を表することができない教員をあぶりだし、職務命令違反として懲戒処分を科し、職務命令違反を繰り返したものには累積加重処分を行い、一度でも職務命令に違反したものは退職後には職場から排除するという、計画された、あるいはそのように流れていく構造を作り上げる意図をもったものであることを明らかしたのです。
 そして五月二五日の地裁判決に続き、十二月十日の高裁判決では私たちの主張の正しさを確信させる判決が出されました。
 とくに高裁判決では憲法で保障される自由にも触れ、都教委が違法に裁量権を行使したと強く責めたのでした。
 ☆ 《今後の展望》
 私たちの裁判では、東京都の制度設計の趣旨を無視して、都教委が違法に裁量権を行使したことを地裁も高裁も認めたのでした。
 岡田教授が指摘したように、近年は明確な規定を持たずに被雇用者を解雇したり懲戒したりする雇用関係を、司法が是正する方向にあります。だからこそ、私たちに先行した嘱託採用拒否裁判等では、高裁がほぼ無条件に都教委の裁量権を広く認めたことに対し、最高裁では憲法一九条にかかわる問題が存在することに触れ、同等な事件である私たち嘱託・非常勤教員の採用拒否二次裁判での地裁・高裁は裁量権に枠をはめたのではないでしょうか。
 特に思想・信条にかかわる自由を侵す東京都・都教委に歯止めをかけようとしたと考えられます。君が代処分取消し一次裁判の高裁判決も同じような司法の態度ではなかったでしょうか。
 最高裁では少し後退させられたとはいえ、そのような傾向は、この秋の君が代処分取消し第四次裁判の地裁判決でも示されたと言えます。
 しかし、今春の再雇用三次訴訟での高裁判決十年近く時間を逆行させたかのように感じられます。そして現在、再雇用三次訴訟は私たち二次訴訟と同じ最高裁第一小法廷に係属しています。しかも原告団と東京都の上告・被上告の関係はまったく逆の状況になっています。
 最高裁は高裁での判断が割れている同種の事件では、独自の判断をすることが大いに考えられます。いままで私たちは最高裁が東京都の上告受理申立を不受理にすることを願っていましたが、そういう状況ではなくなったと言えるでしょう。
 とはいえ、私たち再雇用拒否二次原告からの最高裁への要請行動などは心理的にも難しい面があります。対応については今後も原告団会議で議論することがあろうと思いますが、現在、再雇用三次の最高裁への要請行動などを支えるという選択を二次原告団として確認しています。
 (再雇用拒否撤回を求める第二次原告団 泉健二)

『東京・教育の自由裁判をすすめる会ニュース リベルテ第49号』(2017年10月7日)

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