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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

君が代嘱託不採用裁判 原告団弁護団 声明

2008年02月08日 | 日の丸・君が代関連ニュース
声  明

1 本日、東京地方裁判所民事第19部(中西茂裁判長)は、都立高校の教職員13名が卒業式等の国歌斉唱時に校長の職務命令に従わずに起立しなかったことのみを理由に、定年等退職後の再雇用職員(嘱託)としての採用を拒否された事件(東京都君が代嘱託採用拒否事件)について、教職員らの訴えを認め、東京都こ対し、合計金2757万1000円の賠償を命ずる判決を言い渡した。

2 本件は、東京都教育委員会(都教委)が2003年10月23日付けで全都立学校の校長らに通達を発し(10.23通達)、卒業式・入学式等において国歌斉唱時に教職員らが指定された席で国旗に向かって起立し、国歌を斉唱すること等を徹底するよう命じて、「日の丸・君が代」の強制を進める中で起きた事件である、
 都立高校では、10.23通達以前には、国歌斉唱の際に起立するかしないか、歌うか歌わないかは各人の内心の自由に委ねられているという説明を式の前に行うなど、国歌斉唱が強制にわたらないような工夫が行われてきた。しかし、都教委は、10.23通達後、内心の自由の説明を一切禁止し、式次第や教職員の座席表を事前に提出させ、校長から教職員に事前に職務命令を出させた上、式当日には複数の教育庁職員を派遣して教職員・生徒らの起立・不起立の状況を監視するなどし、全都一律に「日の丸・君が代」の強制を徹底してきた。

 原告らは、それぞれが個人としての歴史観・人生観や、長年の教師としての教育観に基づいて、過去に軍国主義思想の精神的支柱として用いられてきた歴史を背負う「日の丸・君が代」自体が受け入れがたいという思い、あるいは、学校行事における「日の丸・君が代」の強制は許されないという思いを強く持っており、そうした自らの思想・良心から、校長の職務命令には従うことができなかったものである。
 ところが、都教委は、定年等退職後に再雇用職員として引き続き教壇に立つことを希望した原告らに対し、卒業式等で校長の職務命令に従わず、国歌斉唱時に起立しなかったことのみを理由に、「勤務成績不良」であるとして、採用を拒否したのである。

3 判決は、国歌斉唱時の起立等を命じる校長の職務命令が憲法19条に違反するかという争点については、2007年2月27日のピアノ事件最高裁第三小法廷判決と同様に、原告らが国歌斉唱時の起立・斉唱を拒否することは、原告らにとっては思想・良心に基づく行為であろうといえるが、一般的にはこれらと不可分に結びつくものではないから、校長の職務命令は、原告らの思想・良心それ自体を否定するものではなく、原告らに対し特定の思想を持つことを強制・禁止したりするものでもないとして、憲法19条違反と認めなかった。

4 また、判決は、都教委による10.23通達及びその後の指導について、卒業式・入学式等における国旗掲揚、国歌斉唱の実施方法等について、公立学校を直接所管している都教委が必要と判断して行ったものである以上、改定前教育基本法10条の「不当な支配」に該当するとは言えないと判示した。

5 しかし一方で判決は、原告らに対する採用拒否は、従前の再雇用制度における判断と大きく異なるものであり、本件職務命令違反をあまりにも過大視する一方で、原告らの勤務成績に関する他の事情をおよそ考慮した形跡がないのであって、客観的合理性や社会的相当性を著しく欠くものといわざるを得ず、都教委の裁量権を逸脱・濫用したもので違法である、と判示した。
 そして、判決は、原告らが有していた定年等退職後の再雇用に対する期待は法的保護に値するものであると認め、かかる期待権を侵害した都教委の採用拒否により、原告らは1年分の賃金相当額と弁護士費用相当額の損害を被ったとして、1次原告各自212万8600円、2次原告各自211万6000円、合計金2757万1000円の損害賠償を東京都に命じた。

6 判決が憲法19条違反、改定前教基法10条違反の主張を退けたことは極めて不当である。ただ、ピアノ事件最高裁判決の下でも、判決が、国歌斉唱時の不起立のみを理由とした本件採用拒否を都教委の裁量権の逸脱・濫用にあたり違法であると判示したことは、都教委の10.23通達以後の「日の丸・君が代」の強制に、司法が一定の「歯止め」を掛けたものと評価できる。
 30数年以上都立高校の教育に貢献してきた教職員らが、国歌斉唱時に一度起立しなかっただけで定年等退職後の再雇用を問答無用で拒否されたという事案からすれば当然の結論ではあるが、かかる採用拒否の違法性が、10.23通達後の同種事案が多数係属する東京地裁労働専門部の判決をもって認められたことの意義は大きく、司法の最低限の良識を示したと評価できる。

7 都教委は、10.23通達及び職務命令を違憲・違法と断じた予防訴訟東京地裁判決(2006.9.21)後も「日の丸・君が代」の強制を全く改めようとせず、不起立等を理由とする懲戒処分や、不起立を理由にした再雇用拒否、再発防止研修命令等を毎年繰り返してきた。
 本判決は、そうした状況の中で、国歌斉唱時の不起立のみを理由とした再雇用の拒否は許されないことを明らかにしたものであり、都教委に対し従前の強制的施策の反省と転換を強く求めるものと言える。

8 都教委は、今度こそ、かかる司法判断を控訴せずに受け入れ、違法な採用拒否を受けた原告らを教壇に復帰させるべきである。
 この判決を機会に、教育現場での「日の丸・君が代」の強制に反対するわたしたちの訴えに対し、皆様のご支援をぜひともいただきたく、広く呼びかける次第である。

 2008年2月7日
東京都君が代嘱託採用拒否事件原告団・弁護団

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