《労働情報》【連載 沖縄】
▲ 米国に伝えよ 民意は「基地NO」だ
圧巻だった翁長知事と安倍 菅会談
908号から一カ月、実に多くのことがあり、辺野古新基地問題をめぐる状況は新段階を迎えた。安倍晋三首相と翁長雄志知事の会見が実現し、翁長知事は暴力で奪った土地を返すのに代替施設をと要求するのはあまりに理不尽だと訴えた(4月17日)。その前に、菅義偉官房長官との会談だ(4月5日)。翁長知事は怒涛の勢いで、辺野古の新基地断念を迫った。
さらに、翁長知事は仲井眞前知事が許可した制限区域外の岩礁破砕の可能性があり、昨年8月許可の際の条件により7日以内に作業を停止することを沖縄防衛局に指示した(3月23日)。もし従わなければ漁業調整規則違反により、制限区域内を含む岩礁破砕許可を取り消すと、強硬に出た。
その2日前の3月21日、キャンプ・シュワブの北東、瀬嵩の浜で開かれた「止めよう辺野古新基地建設県民集会」に県内外各地から集まった3千900人が見つめる、目と鼻の先にカヌーが、海保のゴムボートや、沖縄防衛局の作業船と入り乱れているのを見て、今さらのように憤激に耐えない思いをした。
そこで安慶田光男副知事が、「翁長知事が重大な決断をする」と宣言したのである。
▲ 異議申し立て共感呼ぶ
さて、翁長・安倍会談は大きく全国紙、地方紙の一面を飾った。NHKはじめ電波メディアでもトップニュースとなった。地元ではその手厚い報道ぶりを紹介し、一斉に掲げた社説の主要なものを全文掲載した。翁長知事の就任以来4カ月、会見を拒否してきた安倍首相を擁護する論説はほとんどない。
福井新聞は、沖縄側に立って普天間の辺野古移設は基地が要塞化する懸念が強いことを指摘して「負担軽減は基地撤去だ」と見出しに掲げた。
安倍首相は沖縄の声を聞いたか、米国に伝えよ、民意は「基地NO」だと初の会談を評価し、今後とも継続的話し合いをと論評するなかで、読売新聞は相変わらず翁長知事は「政府との対立を一方的に深めるだけでは県民全体の利益になるまい」と、沖縄側の譲歩を求めている。(読売社説「建設的対話重ねて接点を探れ」4月18日から)。
なお、産経は「敵意むき出しで首相と面会して何を得ようとしているのか」と、それこそ悪意むき出しで、後述菅官房長官との会談を報じた(4月14日)。本土の読者大衆に「沖縄は金のために基地反対運動をしている」と思い込ませるスピーカー代表である。こうした論調は、かえって「オール沖縄」「建白書」勢力の結束を固めさせる。
関心は国内だけでなく、ロイターやAFPなど東京発で、また英国テレビBBCのように辺野古現地取材で世界を駆け巡った。その結果、多くの国際的な雑誌、新聞で取り上げられた。
▲ 苦難の歴史伝える
翁長知事と菅官房長官の会談は劇的だった。積もり積もった県民の思いを代表して知事は辺野古断念を迫った。その迫力に、菅官房長官は圧倒された。
なかでも、「粛々と」という言葉を頻発しつつ、民意には一顧にせず問答無用と、ボーリング調査作業に突き進む姿は、米施政権下、圧政を敷いた高等弁務官・キャラウェイ中将と重なると迫ったのは圧巻だった。県内の戦後史を知らない若者にキャラウェイの名と、沖縄の米占領下の苦難が今につながっていることを知らしめた。
以後、「粛々」という言葉を使わないと官房長官も、安倍首相も言明した。
しかし、翁長知事の漁業調整規則に基づく作業停止、従わなければ破砕承認そのものを取り消すという指示は違法として、即座に沖縄防衛局が、行政不服審査法により農水大臣に不服を申し立て、裁決までの間執行停止を求めて認められた。
本来、住民を守るための不服審査を国が国に対して申し立てる無法。着々と作業を推進する政策は変わらない。
▲ 全国に拡がる反対世論
だが、翁長知事が「腹をくくって」、捨て身で政権と対峙した反響は大きかった。
愛知県岩倉市議会や長野県白馬村議会では、国の手法は「地方自治侵害の恐れがある」として請願・陳情書を採択した。ほかにも全国12の市町村議会で同趣旨の決議が提起されたが、11市町村議会で否決されている。
こうした本土に居てもできる支援の道を切り開いていってほしい。
島ぐるみ会議が中心となって、「辺野古基金」が県域を越えて結成され、早くも4600万円の寄付が寄せられている。北谷町、読谷村、うるま市などで議会議員を先頭に市民団体が、「島ぐるみ会議」支部や独自の「辺野古NO」の協議・行動団体を立ち上げた。
19日は辺野古へ防衛施設局(当時)がはじめてボーリング調査のために現れて、市民が座り込みで撃退してからちょうど11年になる。
「われわれは巨象に挑むアリのようなものかもしれない。しかし正義はわれらにある」と言ったのは、「命を守る会」の故・金城祐治さんだった。当時、象の片足に群がっていたアリが、今や全国から、世界各地から、ゾロゾロと集まり大群となりつつある。
単管やぐらに登って抵抗した沖合い案は、ラムズフェルド米国防長官の視察を経て中止となった。代わりに浮上したV字案は強襲揚陸艦の寄港する巨大な軍港となることが暴露された。
2月22日山城博治平和センター議長が基地内に引きずり込まれた際、内側から境界線を越えたとする映像をユーチューブに流した在沖海兵隊高官エルドリッジ政務外交部次長が更迭された。
それでも仲井眞前知事の埋め立て承認を盾に工事を止めない政府への翁長知事の抗議は国民に支持されている。アメリカ当局者は表向き日本の国内問題とみているが、国務省関係者は世論の動向が気になるところ。
平安名純代・沖縄タイムス・米国特約記者によると、国務省の高官は3月末にFNN(フジニュースネットワーク)が全国1千人の有権者を対象に行った世論調査で8割が安倍首相や菅官房長官は翁長知事と会うべきだと答え、翁長知事が沖縄防衛局に作業の停止を指示したのを評価すると答えたのが5割という数字に驚いたという。
▲ 5・17県民大会にむけて
沖縄タイムスが4月上旬、菅・翁長会談の直後に行った電話世論調査では翁長知事の姿勢を「支持する」が83%、「支持しない」が13・4%と大幅に下回った。
毎日新聞が18、19両日に実施した全国世論調査によると、名護市辺野古への移設に反対する沖縄県と対立を深めている政府の進め方について、「反対」が53%と過半数を占め、「賛成」の34%を上回った。
安倍首相は4・28当日ワシントンでオバマ大統領と首脳会談を行う。
沖縄では「止めよう辺野古新基地建設!民意無視の日米首脳会談糾弾!4・28県民屈辱の日県民大行動と大集会」が行われる。辺野古では、早朝シュワブゲート前行動と、午前中には国会・県議会・市町村議会議員と辺野古ドリーム(監視船団)による海上行動。夜は県民広場で、4・28県民大会と国際通りデモを行い、5・17県民大会につなぐ。セルラー競技場で開かれる同大会は、翁長知事の訪米へ向けたもの。
翌18日には文字通りオール沖縄「基地はNOだ」の民意を背負って、不退転の決意で日米政府の高い壁に挑むという。
『労働情報』910・1号
▲ 米国に伝えよ 民意は「基地NO」だ
圧巻だった翁長知事と安倍 菅会談
由井晶子(ジャーナリスト)
908号から一カ月、実に多くのことがあり、辺野古新基地問題をめぐる状況は新段階を迎えた。安倍晋三首相と翁長雄志知事の会見が実現し、翁長知事は暴力で奪った土地を返すのに代替施設をと要求するのはあまりに理不尽だと訴えた(4月17日)。その前に、菅義偉官房長官との会談だ(4月5日)。翁長知事は怒涛の勢いで、辺野古の新基地断念を迫った。
さらに、翁長知事は仲井眞前知事が許可した制限区域外の岩礁破砕の可能性があり、昨年8月許可の際の条件により7日以内に作業を停止することを沖縄防衛局に指示した(3月23日)。もし従わなければ漁業調整規則違反により、制限区域内を含む岩礁破砕許可を取り消すと、強硬に出た。
その2日前の3月21日、キャンプ・シュワブの北東、瀬嵩の浜で開かれた「止めよう辺野古新基地建設県民集会」に県内外各地から集まった3千900人が見つめる、目と鼻の先にカヌーが、海保のゴムボートや、沖縄防衛局の作業船と入り乱れているのを見て、今さらのように憤激に耐えない思いをした。
そこで安慶田光男副知事が、「翁長知事が重大な決断をする」と宣言したのである。
▲ 異議申し立て共感呼ぶ
さて、翁長・安倍会談は大きく全国紙、地方紙の一面を飾った。NHKはじめ電波メディアでもトップニュースとなった。地元ではその手厚い報道ぶりを紹介し、一斉に掲げた社説の主要なものを全文掲載した。翁長知事の就任以来4カ月、会見を拒否してきた安倍首相を擁護する論説はほとんどない。
福井新聞は、沖縄側に立って普天間の辺野古移設は基地が要塞化する懸念が強いことを指摘して「負担軽減は基地撤去だ」と見出しに掲げた。
安倍首相は沖縄の声を聞いたか、米国に伝えよ、民意は「基地NO」だと初の会談を評価し、今後とも継続的話し合いをと論評するなかで、読売新聞は相変わらず翁長知事は「政府との対立を一方的に深めるだけでは県民全体の利益になるまい」と、沖縄側の譲歩を求めている。(読売社説「建設的対話重ねて接点を探れ」4月18日から)。
なお、産経は「敵意むき出しで首相と面会して何を得ようとしているのか」と、それこそ悪意むき出しで、後述菅官房長官との会談を報じた(4月14日)。本土の読者大衆に「沖縄は金のために基地反対運動をしている」と思い込ませるスピーカー代表である。こうした論調は、かえって「オール沖縄」「建白書」勢力の結束を固めさせる。
関心は国内だけでなく、ロイターやAFPなど東京発で、また英国テレビBBCのように辺野古現地取材で世界を駆け巡った。その結果、多くの国際的な雑誌、新聞で取り上げられた。
▲ 苦難の歴史伝える
翁長知事と菅官房長官の会談は劇的だった。積もり積もった県民の思いを代表して知事は辺野古断念を迫った。その迫力に、菅官房長官は圧倒された。
なかでも、「粛々と」という言葉を頻発しつつ、民意には一顧にせず問答無用と、ボーリング調査作業に突き進む姿は、米施政権下、圧政を敷いた高等弁務官・キャラウェイ中将と重なると迫ったのは圧巻だった。県内の戦後史を知らない若者にキャラウェイの名と、沖縄の米占領下の苦難が今につながっていることを知らしめた。
以後、「粛々」という言葉を使わないと官房長官も、安倍首相も言明した。
しかし、翁長知事の漁業調整規則に基づく作業停止、従わなければ破砕承認そのものを取り消すという指示は違法として、即座に沖縄防衛局が、行政不服審査法により農水大臣に不服を申し立て、裁決までの間執行停止を求めて認められた。
本来、住民を守るための不服審査を国が国に対して申し立てる無法。着々と作業を推進する政策は変わらない。
▲ 全国に拡がる反対世論
だが、翁長知事が「腹をくくって」、捨て身で政権と対峙した反響は大きかった。
愛知県岩倉市議会や長野県白馬村議会では、国の手法は「地方自治侵害の恐れがある」として請願・陳情書を採択した。ほかにも全国12の市町村議会で同趣旨の決議が提起されたが、11市町村議会で否決されている。
こうした本土に居てもできる支援の道を切り開いていってほしい。
島ぐるみ会議が中心となって、「辺野古基金」が県域を越えて結成され、早くも4600万円の寄付が寄せられている。北谷町、読谷村、うるま市などで議会議員を先頭に市民団体が、「島ぐるみ会議」支部や独自の「辺野古NO」の協議・行動団体を立ち上げた。
19日は辺野古へ防衛施設局(当時)がはじめてボーリング調査のために現れて、市民が座り込みで撃退してからちょうど11年になる。
「われわれは巨象に挑むアリのようなものかもしれない。しかし正義はわれらにある」と言ったのは、「命を守る会」の故・金城祐治さんだった。当時、象の片足に群がっていたアリが、今や全国から、世界各地から、ゾロゾロと集まり大群となりつつある。
単管やぐらに登って抵抗した沖合い案は、ラムズフェルド米国防長官の視察を経て中止となった。代わりに浮上したV字案は強襲揚陸艦の寄港する巨大な軍港となることが暴露された。
2月22日山城博治平和センター議長が基地内に引きずり込まれた際、内側から境界線を越えたとする映像をユーチューブに流した在沖海兵隊高官エルドリッジ政務外交部次長が更迭された。
それでも仲井眞前知事の埋め立て承認を盾に工事を止めない政府への翁長知事の抗議は国民に支持されている。アメリカ当局者は表向き日本の国内問題とみているが、国務省関係者は世論の動向が気になるところ。
平安名純代・沖縄タイムス・米国特約記者によると、国務省の高官は3月末にFNN(フジニュースネットワーク)が全国1千人の有権者を対象に行った世論調査で8割が安倍首相や菅官房長官は翁長知事と会うべきだと答え、翁長知事が沖縄防衛局に作業の停止を指示したのを評価すると答えたのが5割という数字に驚いたという。
▲ 5・17県民大会にむけて
沖縄タイムスが4月上旬、菅・翁長会談の直後に行った電話世論調査では翁長知事の姿勢を「支持する」が83%、「支持しない」が13・4%と大幅に下回った。
毎日新聞が18、19両日に実施した全国世論調査によると、名護市辺野古への移設に反対する沖縄県と対立を深めている政府の進め方について、「反対」が53%と過半数を占め、「賛成」の34%を上回った。
安倍首相は4・28当日ワシントンでオバマ大統領と首脳会談を行う。
沖縄では「止めよう辺野古新基地建設!民意無視の日米首脳会談糾弾!4・28県民屈辱の日県民大行動と大集会」が行われる。辺野古では、早朝シュワブゲート前行動と、午前中には国会・県議会・市町村議会議員と辺野古ドリーム(監視船団)による海上行動。夜は県民広場で、4・28県民大会と国際通りデモを行い、5・17県民大会につなぐ。セルラー競技場で開かれる同大会は、翁長知事の訪米へ向けたもの。
翌18日には文字通りオール沖縄「基地はNOだ」の民意を背負って、不退転の決意で日米政府の高い壁に挑むという。
『労働情報』910・1号
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