2024年1月11日
最高裁第二小法廷
戸倉三郎 裁判官 殿
三浦 守 裁判官 殿
草野耕一 裁判官 殿
岡村和美 裁判官 殿
尾島 明 裁判官 殿
◎ 「君が代」調教NO!松田処分取消裁判
【令和5年(行ツ)第339号、令和5年(行ヒ)第374号】について、
子どもの権利条約と国際人権自由権規約に照らした判断を求める要請書
「君が代」調教NO!処分取消裁判上告人 松田幹雄
紙署名1012筆、オンライン署名383筆の公正判決要請署名を提出します。
この署名の要請内容は、子どもたちにとって大阪市立学校の卒業式の実態が「子どもの権利条約違反」であること、大阪市教育委員会の教員への戒告処分が「国際人権自由権規約」違反であることを認めてほしいというものです。
私は、『知っていましたか?「君が代」の意味・扱いの変化』というプリント(資料1)を準備し、説明・対話しながら署名を集めてきました。話したほとんどの人の反応は「『君が代』の意味や変化について初めて聞いた。学校で教えてもらったことはない。」というものでした。
「君が代」の歌は、初出の古今和歌集では、読人知らずの「一般の人々の年壽を賀する歌」として取り上げられ、以後、様々な場面で「祝賀の意の表示に転用」され、歌いつがれてきた豊かな歴史があります(山田孝雄『君が代の歴史』宝文堂出版、1956年)。
それが明治に入り、「万世一系」の存在として天皇の不可侵の神聖性を統治の柱においた大日本帝国憲法の下で、「天皇陛下のお治めになる御代」を寿ぐ歌として国歌的扱いをされるようになりました。
現在の日本国憲法のもとでは、1999年の国旗国歌法制定の際、「『君が代』は、日本国民の総意に基づき天皇を日本国及び日本国民統合の象徴する我が国のこと」と政府解釈が示されました。このように変化してきた歴史がまったく知らされていないのです。
入学式や卒業式は、生徒や保護者のみなさんにとって人生の節目の場面です。その場面で、全くこの歌の歴史を伝えることなく、教職員への強制を通して彼らに起立斉唱を求めていることを、私は「『君が代』調教」と呼んでいるのです。
「君が代」の意味や歴史が学校教育の中でまったく伝えられない理由は、学習指導要領にあります。国旗・国歌一般の意義やそれを尊重する態度の育成については強調しながら、「日の丸」や「君が代」の歴史については何も書いていません。
私は、「日の丸」に向かって「君が代」を起立・斉唱することが式次第に位置付けられた卒業式に出る卒業生は、「日の丸」「君が代」についての説明や卒業式に位置付けられている理由の説明を受ける権利があり、それに対して、どう考え、行動するかは、生徒自身が決めるべきことと考えてきました。
2015年3月大阪市立中野中学校卒業式の事前指導の一環で、卒業学年の全クラスで、その考えに基づいた事実を記した「資料:卒業式・入学式の国旗・国歌について」(資料2)を学年団として配布しました。
その資料について、事前に大阪市教育委員会事務局に校長を通じて届け、意見を求めたのに、その時には、「教育課程編成権は学校にある」として何ら意見を言わなかった市教委事務局は、私への処分後の2016年3月卒業式に向けては、「全体としてのトーンが問題(国旗・国歌尊重の態度育成につながらない)」と、校長を通じてこの資料活用を禁じました(大阪地裁原告第1準備書面P12 甲16号証)。
大阪市市教委は、「君が代」指導についての一切の指導資料を作成せず、新任を含めて一切「君が代」指導にかかわる教職員研修を行っていません。
このような状況の下での生徒への「君が代」斉唱指導は、「国歌は大切」「日本の国歌は『君が代』」「国歌『君が代』をしっかり歌おう」しか説明せずに一方的に生徒に起立・斉唱を求めることが常態化しています。この現実は、子どもの権利条約違反であり、生徒にとっては人権侵害と言えます。
私は、2020年12月地裁提訴時点から生徒の人権侵害を問題にし、子どもの権利条約違反を主張してきました。しかし、2022年11月地裁判決は、「控訴人の法律上の利益に関係のない違法を主張するもの」であるとしてこの違反について判断をしませんでした。
そこで高裁では、私の不起立・不斉唱の理由の重要な要素に、生徒への人権侵害に手を貸せないという思いがあることを強調し、不起立・不斉唱につながる私の思想・良心の内容を特定して、処分の可否を国際人権自由権規約をもとに判断してほしいと訴えてきました。子どもの権利条約違反についての判断を求めることをそのうちに含む主張です。その内容を是非ご理解いただきたいのです。
裁判官のみなさまには、私の「君が代」不起立戒告処分取消の訴えは、教職員の権利侵害のみを問題にしたものではなく、教職員処分も含めた「君が代」強制の現実が、子どもたちへの権利侵害であることも同時に訴えていることにぜひご留意いただいて、公正な判決をお願いいたします。
ご理解の助けになるものとして、、2015年3月16日、3月17日の大阪委教育員会事務局に提出した、上申書(資料3 地裁乙7号証)、上申書(2)(資料4 地裁乙7号証 原文は手書き)、及び、2021年2月大阪地裁第1回口頭弁論時の私の冒頭意見陳述(資料5)を紹介します。当時の自分の問題意識を反映しているものだからです。
●2015年3月16日付上申書
1月末から3月12日の卒業式に至るまでの経過を時系列にまとめています。「君が代」斉唱についての生徒たちへの説明責任をずっと問題にしてきたことについてわかっていたただけると思います。「職務命令に従わなかった理由」でも、生徒たちは出身4小学校のどこでも説明を受けていない状況にふれています。
●2015年3月17日付上申書(2)
自分自身の「君が代」についての認識について書いています。同時に、子どもの権利条約では、歌うことを求められる生徒には「君が代」についての情報をきちんと提供される権利があるとされているにも関わらず、それが踏みにじられている現実があること、教職員の起立・斉唱職務命令は自らの姿を通して国旗国歌尊重を教育せよとの命令であり、生徒への人権侵害を行えという命令であることを指摘しています。
●2021年2月大阪地裁第1回口頭弁論原告冒頭意見陳述
私の訴えのポイントを短くまとめた主張です。
最後に、2023年3月4月の小学校卒業式と中学校入学式を経験した中学1年生の体験報告「子どもの現場から」「私は歌わない」(子ども情報研究センター機関紙季刊はらっぱ12月号 資料6)を紹介します。生徒が「君が代」を起立・斉唱したくないと申し出た時に、周りの子の迷惑や卒業式の成功を理由に起立・斉唱を迫られたという体験を明らかにしたもので、子どもの権利条約違反の実態の告発になっています。
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