2024年1月11日
最高裁第二小法廷
戸倉三郎 裁判官 殿
三浦 守 裁判官 殿
草野耕一 裁判官 殿
岡村和美 裁判官 殿
尾島 明 裁判官 殿
◎ 「君が代」調教NO!松田さん処分取消裁判について、
口頭弁論を開き、人権の国際標準を満たす公正な判断を求める要請
許すな!『日の丸・君が代』強制、止めよう!改憲・教育破壊全国ネットワーク
(略称:「ひのきみ全国ネット」)
先頃、ジュネーブの国際連合人権高等弁務官事務所(OHCHR)で7回目の日本政府報告書審査が行われ、2022年11月30日に審査を踏まえた『第7回総括所見』が発表された。そこではわが国の個別的人権課題について18のテーマが取り上げられ、「思想・良心・宗教の自由と表現の自由」の章では、「君が代不起立処分」について、以下のように委員会の懸念と勧告とが示された。
38.委員会は、締約国において思想及び良心の自由が制限されているとの報告に懸念を抱いている。学校の式典で国旗に向かって起立し、国歌を歌うということに従わないという教師の消極的で暴力的でない行為の結果、一部の者が最長6か月の職務停止の処分を受けたことを懸念している。さらに、委員会は、式典中に生徒に起立を強制するために有形力が行使されたとされることに懸念している(第18条)。
39.締約国は、思想及び良心の自由の効果的な行使を保障し、規約第18条の下で許容される狭義の範囲を超えてこのような自由を制限するようないかなる行動も慎むべきである。自国の法律と慣行を規約第18条に適合させるべきである。
(以上、日弁連訳。下線は引用者。)
ここに言う「締約国において思想及び良心の自由が制限されているとの報告」とは、東京と大阪の各々君が代不起立処分者グループが作成し、自由権規約委員会にこれまで提出してきた複数のNGOレポートを指していると見て間違いない。<注>
東京では、2003年の「10・23通達」以降延べ484名の教職員が、同じく大阪では2011年6月「大阪府国旗国歌条例」・2012年2月「大阪市国旗国歌条例」以降延べ67名の教職員が、各々最長6ヶ月停職を含む懲戒処分を科されてきた(2020年12月まで)。
国内的に見れば、これら処分の取消を求めた裁判における最高裁の判断は、起立斉唱行為は「敬意の表明」であって、起立斉唱命令は「思想及び良心の自由」への「間接的な制約」に当たるものの、「儀式的行事における慣例的な儀礼的所作」だから、教育上の行事にふさわしい秩序の確保とともに当該式典の円滑な進行を図る「必要性・合理性」から、それを職務として命じても違憲ではない、というものであった(2011年6月6日最高裁第一小法廷など)。
しかし人権とは、『世界人権宣言』前文に、「すべての人民とすべての国とが達成すべき共通の基準」と謳われているように、人類普遍の原理であり、その制約には「必要性・合理性」のような緩やかな審査基準ではなく、自由権規約18条3項に規定された「厳格な基準」が適用されなければならない。「必要性・合理性」の基準で審査され判断された最高裁判決は到底国際基準を満たしているとは言えず、見直しは避けられない。また、「思想良心の自由」に対する「間接的制約」という国内独自の概念も、国際社会の人権スタンダードの検証に耐えるものではない。
わが国は、1979年に『市民的及び政治的権利に関する国際規約』(以下「自由権規約」という)を批准し、遵守義務を負うと同時に、定期的に国内人権状況を報告し審査を受けることになった。その第7回審査において、NGOからの通報を受けて、上記のような具体的な懸念と勧告を示されたのである。当然、締約国の国内司法機関として、これを真摯に受けとめ「思想及び良心の自由」の制約に関する過去の判例を速やかに見直すと同時に、直ちに今後の判断に生かさなければならない。
「君が代不起立処分」取消を求める上告人松田幹雄さんの「『君が代』調教NO!裁判」は、この『第7回総括所見』が採択されてから、初めて最高裁に係属する裁判である。上告人自らの思想信条に基づく卒業式における国旗国歌斉唱時の不起立行為が、自由権規約18条が保障する「思想・良心・宗教の自由」に合致することは、この『第7回総括所見』パラグラフ38・39から明らかである。
わが国の人権状況は、国際的にも注目されているところ、最高裁がこの裁判への判断を通して、わが国の人権保障が国際水準に達していることを国内外に示す絶好のチャンスである。今回の国連自由権規約委員会の勧告及び本件『上告理由書』と『上告受理申立理由書』を十分検討の上、口頭弁論を開いて人権の世界水準に達する国際社会に恥じない判断をなされることを強く要望する。
<注> 自由権規約第7回日本政府報告審査に提出されたNGOレポート一覧の頁(OHCHR)
(CCPR - International Covenant on Civil and Political Rights 136 Session (10 Oct 2022 - 04 Nov 2022))
①国際人権活動日本委員会(JWCHR)一次レポート(2017/6/14)のchap.6 《人権侵害事案の情報提供》
②「日の丸・君が代」強制反対・大阪ネットワークのレポート(2020/9/1) 《大阪の君が代処分の事例通報》
③国際人権活動日本委員会(JWCHR)二次レポート(2021/1/18)のchap.5 《日本政府報告書へのカウンターレポート》
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