高レベル放射性廃棄物の最終処分場適地として緑色表示されていた能登半島
=たんぽぽ舎です。【TMM:No4965】2024年1月29日(月)=
☆ 原子力推進者がいう「科学的」のお粗末なレベル
上岡直見(環境経済研究所代表)
能登半島地震は、原子力がいかに危険かを多くの側面で改めて浮き彫りにした。
発電プラントの危険性はもちろんであるが、「トイレなきマンション」として知られる高レベル放射性廃棄物の最終処分(地層処分)もその一つである。
別の側面として、原子力推進者がいう「科学的」がいかに信用できないかを示す典型的な事例が示された。
地層処分を推進しているのは原子力発電環境整備機構(ニューモ※1)であるが、これに対応して資源エネルギー庁は、処分施設候補地として「科学的特性マップ」(※2)を提示している。
これは、火山活動・断層活動・隆起浸食など7つの自然条件と、将来の鉱物資源の開発可能性など、3つの社会的条件好ましくない範囲を除外した上で、輸送面の利便性として海岸から20km以内を適地として示した資料で、地図上で緑色が施設適地として示されている。
驚いたことに、この地図では能登半島全域が緑色と評価されている。
志賀原発や珠洲原発(計画中止)もさることながら、数mの地盤変位が発生した地域がなぜ地層処分の適地なのか。
「科学的」と掲げていながら何を検討していたのか。
原子力推進者が「科学的」というのはこの程度ということである。
原発の過酷事故も「科学的」に検討すれば百万年に一回だと主張していたのが、福島第一原発事故で30年ほどの間に起きたのだからおよそ程度が知れるというものだ。
施設建設の手順として、NUMOは過疎地を主に全国の自治体に調査の受け入れを働きかけている。
自治体からの応募または国からの申入れに基づいて「文献調査」「概要調査」「精密調査」を経て施設の建設地が選定される。
現在は北海道寿都(すっつ)町・神恵内(かもえない)村が第一段階の「文献調査」を受け入れている。
長崎県対馬市は全域が「緑」であり、市議会は2013年8月に地元建設業団体が提出した「調査受入れ(応募の促進)」の請願を採択し、これを受けて市長が判断を示すことになっていたが、2023年9月に報道のとおり比田勝市長は調査を受入れないことを表明した。
理由の一つとして市長は「将来的な想定外の要因による危険が排除できない」を挙げたが、まさにそれが能登半島で起きた。
市長の先見の明である。
日本国内で原子力に適した地域はどこにもない。
(※1)「特別の法律に特別の法律により設立される法人」の一つで、法律により国の事務を行う事が規定されている法人。健康保険組合連合会、国民年金基金連合会などもこれに該当する。
(※2)「科学的特性マップ公表用サイト」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/nuclear/rw/kagakutekitokuseimap/
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