☆ 店頭からお米が消えた
~備蓄米放出すれば (週刊新社会)
ジャーナリスト 筑波太郎
☆ コメ不足の原因は
「令和のコメパニック」、「令和のコメ騒動」などといわれ、スーパーや米屋さんからコメが消えるほど。そのため、消費者からは政府の備蓄米放出を求める声もあがっている。ところが、農水省は「新米が出回れば不安は解消される」などと悠長なことをいい、出し惜しみしている。
コメ不足の原因はさまざまあるが、とりわけ2023年産米は猛暑や作付面積の減少が指摘されている。35度を超える猛暑が稲にダメージを与えた。「水分不足でイネが熱中症にかかった」と生産者がジョークを放ったが、渇水現象で生育不良をきたしたのだ。
これに対してコメの需要は堅調な伸びを示している。これはコロナの影響で自粛を余儀なくされていた外出や人との交流が解除されたのを契機に外食産業が活況を取り戻したこと、海外からの観光客が増加し、和食ブームに拍車をかけたこと、さらにウクライナ戦争の長期化にともなう小麦輸入の減少や、食パンなど小麦製品の高騰による消費者ニーズの変化がコメ需要を押し上げたことによる。
しかし、じつはコメは不足してないともいうのだ。
「その証拠に昨年の全国の作況指数は101で平年並みであり、主食用米の収穫量も669万トンでした。前年より9万1千トン減少したものの、需要をカバーするだけの余力はあるからです」
あるJA関係者はさらにこのように続ける。
「米自体に供給不足はありません。にもかかわらず店頭から消えている。これはなぜかといえば米の買い占めが行われているからなんです」
ではコメの買い占めを行っているのはだれか。
「JAは買い占めなどできません。1年に1回だけの取引であることや生産者から集めた米を1日でも早く出荷して現金化し、生産者に還元しなければならないからです」
とすれば買占めを行っているのは卸売業者ということになろう。
実際前出の生産者は次のように打ち明ける。
「今年は田植え前からコメ問屋が来て在庫状態を聞いたり、売買の仮契約を求めてるんです。コメ不足を見越して業者も先手を打ってるんだろう」
コメパニックはどうやら猛暑だけが原因ではない。コメ卸売業者の買い占めによって引き起こされたものといえよう。
☆ 米価はどう決まる
コメが消費者に届くまでの流れはこうだ。
生産者 → 集荷業者(JA) → JA本部・経済連 → 卸売業者 → 小売店 → 消費者。
この間に各業者の儲けや流通コストが上乗せされるから消費者に届くときには生産者米価の倍にハネ上がる。
では、コメの値段はどうして決まるのか。
生産者のコメは、ほぼJAに出荷される。したがってJAが生産者から買い上げた価格によってコメの価格は決定する。
「本年産のコシヒカリを例にいえば、1等級米60㎏あたり2万4千円で生産者から買い上げてます」(JA関係者)
ついでに記せば同等級同量で「あきたこまち」は1万8千円、「ふくまる」(茨城の米)は2万2千円になっている。これらがいわゆる生産者米価といわれるもの。では何を根拠にJAは生産者米価を提示するのか。
「それは新潟産米を参考にしてます。新潟は全国屈指の米産地であり、しかも魚沼産、岩船産といったブランド米の産地なのでこれを指標にしてるんです」(JA関係者)
新潟産米の買い上げ価格が生産者米価のべースになる。この後は産地別の実情に合わせて運用される。そのため生産者米価も地域によって差が生じ、必ずしも統一されたものではない。
☆ 「前渡金」の存在
このほか生産者には「概算金」というものがある。これは生産者に渡る「前渡金」だ。
概算金の趣旨は、米生産に必要な資機材の購入に便宜を図る、生産意欲を高めるなどだが、概算金の金額は各都道府県の全農本部が独自に設定している。
昨年の例を見ると、早場米産地の鹿児島県、宮崎県などはコシヒカリ60㎏あたり1万9千円。新潟県では1万7千円。関東のコメどころ茨城県は1万8千円となっている。
全般的な食料品の値上がりやコメ需要の伸び、米価の再評価などからか、概算金も上昇傾向にある。
このようにコメ価格の決定は複雑であり、消費者には容易に理解できない。そのうえ、JAと卸売業者との価格交渉があるからなおさらだ。
両者の価格交渉は「相対取引価格」といわれ、この段階で実質的な消費者価格の交渉がスタートする。
「卸売業者は大手の総合商社のほか生協、大手のチェーンストアなどがあります。これらとはそれぞれ個別に、相対で交渉し価格を決めてるんです。むろん生産者米価がベースですが、モノによっては昨年より1万円も上昇したコメもあります」(JA関係者)
JAは6月、本年産玄米60㎏当たり相対取引価格全銘柄平均1万5860円と設定した。これは前年同期比で12%上昇している。
相対取引価格をベースに卸売業者は儲けや輸送コストを上乗せして、各小売業者あるいは外食産業などに売却する。また、「スポット」といわれる取引も行われている。これは同業者間の取引をいう。
このような結果、最終的に店頭に並ぶときには生産者米価の倍以上の値段となる。農水省は今年の作況指数、収穫量ともに昨年とほぼ同じとした。したがってコメ供給に不足はない。今回のようなコメパニックが起こらないか、今後の動向を注視したい。
ただ、米生産の基調として米農家の高齢化と減少、米作で食っていけない国の農業政策がある。農家の生活保障する政策転換を図らなければ、早晩主食すら自給できなくなる。
『週刊新社会』(2024年9月18日)
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