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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

若手研究者の窮状

2012年05月13日 | 格差社会
 <はたらく>■ 若手研究者の窮状に反響 雇い止めは使い捨て
 生活面で二度にわたり、低待遇の非常勤講師定職に就けない若手研究者を紹介したところ、同じように苦しむ読者から反響が寄せられた。常勤教員と同様に、大学の講義を支える立場でありながら、一方的な雇い止めや受け持ち講義数の削減といった“使い捨て”同然の働かせ方を疑問視する声が多かった。 (福沢英里)

※調査は、大学で働く非常勤講師の待遇改善を求める「関西圏大学非常勤講師組合」など6組合が、2005年度に1011人を対象に実施。07年に「大学非常勤講師の実態と声」と題した報告書にまとめた。「雇い止めの理由」には423人から、複数回答で計728件の回答があった。

 ■ 突然の通告
 関東地方の私立大で哲学や倫理学の非常勤講師を務める男性(38)は、五年勤めた大学を今年度末で“雇い止め”になる。大学側から昨年秋、突然「五年程度でやめてもらうのが慣例」と告げられた。
 国立大の任期付き研究員が昨年度で終わったため、この私立大での二コマの講義のほか、他大学の講義なども掛け持ちし、収入は月計十万円ほど。来年度以降は半減し、生活の見通しが立たなくなった。
 男性は「大学院重点化」後に大学院へ進学。二〇〇八年に博士号を取得し、年間十~二十件程度の常勤教員の公募に応募し続けたが、すべて不採用。学会での論文発表や翻訳なども三十編以上にのぼり、専門分野の中では一定の成果を挙げ、評価を得てきたつもりだった。結局、常勤教員の就職には役に立たなかった。
 突然の通告に加え、経済的な不安。「必死に講義に取り組んできたことが否定されたと感じ、衝撃は大きかった」
 精神安定剤を飲み、何とか講義や研究を続けている。男性は「常勤が担う大学の雑務を除いても、常勤は非常勤の三倍近い報酬をもらっている。常勤の給与を削減するなどして、非常勤の待遇改善に取り組んでほしい」と訴える。
 ある芸術系の私大教授は「非常勤講師がいなければ、大学の講義は成り立たない」と打ち明ける。教授が勤務する大学では、非常勤講師は週二日までの勤務で任期も三年までだが、「事前準備を怠らず、常勤よりも実技指導が優れている人もいる」と話す。
 ■ 泣き寝入り
 愛知県内の私立大で英語の非常勤講師を務める四十代の女性は昨年秋、大学を相手取り、待遇改善などを求めて提訴した。昨年度の講義のコマ数を、それまでの週十コマから四コマに正当な理由もなく減らされたためだ。
 無記名による学生アンケートの評価が高く、講義も熱心、といった大学側の評価でコマ数が増えた経緯があり、非常勤講師で十コマを受け持っていたのは女性だけだった。
 非常勤講師の組合に加盟し、四度の団体交渉で二コマ取り戻したが、その後も納得のいく説明はない。「非常勤講師の人事を、一部の教授が恣意(しい)的に運用している。私のように声を上げる人はまれで、多くは泣き寝入り」と女性は訴える。
 ■ 脱重点化を
 東海地方の国立高専准教授の四十代男性は、大学院重点化に疑問を投げかける。
 男性が大学院に入学したのは重点化一年前の一九九〇年。「人文系は当時すでに、大学院を修了しても、教員になるハードルは非常に高かった」と振り返る。
 自然科学系でも九七年以降、博士課程修了者が大学教員採用者数を上回り、「博士課程から研究員を経て大学教員」という道は険しくなった。
 「増加した大学院修了者の受け入れ余地を用意できないのは、最初から分かっていたはず。二十年がたち、理系では一定の成果があったかもしれないが、『脱重点化』を検討する時期ではないのか」と話す。
 ※<大学院重点化>
 科学技術分野における国際競争力を高め、優秀な研究者を養成する目的で、国が1991年に始めた
 「2000年度までに大学院学生数を2倍程度増やす」という大学審議会の答申に基づき、12の国立大で90研究科を整備。当時約9万9000人の大学院在学者数が、11年には約27万3000人と3倍近くに増えた
『東京新聞』(2012年5月11日【暮らし】)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/CK2012051102000121.html
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