☆ 「過労死をなくそう!龍基金」第8回中島富雄賞授賞式 ☆
過労死防止法制定に尽力した森岡孝二さんが受賞
過労死防止法制定に尽力した森岡孝二さんが受賞
過労死をなくすために活動している「過労死をなくそう!龍基金」は8月10日、第8回中島富雄賞授賞式を東京・葛飾で開催し、今年6月に国会で成立した「過労死等防止対策推進法」(過労死防止法)の制定に多くの過労死遺族とともに尽力した森岡孝二さん(関西大学名誉教授)を今年の受賞者として表彰しました。
ワタミ過労死遺族の森豪さんと森祐子さんは「ワタミの責任否定を許さない」と今後も闘っていく決意を表明しました。
ヘイトスピーチとレイシズムを乗り越える国際ネットワーク(のりこえねっと)共同代表の辛淑玉(しん・すご)さんによる記念講演「生きる権利を守る」もありました。台風の中でしたが、会場には112人が集まり盛況でした。
授賞式の冒頭、龍基金の中島晴香代表の夫・富雄さんと前沢笑美子副代表の長男・隆之さん(いずれもファミリーレストランすかいらーくで過労死)、そしてワタミで過労死した森美菜さんの遺影に対し、参加者全員で黙とうを行いました。
主催者として中島代表が「暑い夏が来るたび夫が過労死でなくなった悲しみを思い出す。過労死はいまだなくならず、若い命が企業によって切り取られている。そうした中で政府は残業代をつけないで長時間労働でさらに過労死を増やすような法律をつくろうとしている。過労死をしなくてもいい社会を皆さんと作っていきたい」とあいさつ。前沢副代表も「皆さんとご一緒に過労死をなくす活動をやっていきたい」と話しました。
◆ ワタミ過労死遺族が「ワタミの責任否定を許さない」と闘う決意表明
龍基金事務局の須田光照さん(全国一般東京東部労組書記長)が、昨年12月に裁判提訴したワタミ過労死問題の経過を報告した後、遺族の森豪さんと森祐子さんが闘いの現状と今後の決意を述べました。
豪さんは「ワタミ側と遺族側でそれぞれの弁護士のみで当初行っていた交渉はお金の話ばかりが先行し、何か足りないと感じていた。そんな時に龍基金の存在を知り、会社の経営者にきちんと向き合ってもらい娘の労働実態を明らかにすることが重要とのアドバイスを受けて現在に至っている。労働基準監督署が認定した事実すら否定する不誠実なワタミの対応を許さず闘っていきたい」と話しました。
祐子さんは「一部の会社のみをブラック企業と言うのは不公平でないかという意見があるが、おかしいと分かっている企業から改善するべき。自社で過労死が出たことすら知らないで入社する労働者の方が不公平だと思う」と、今後もワタミの責任を追及していく決意を訴えました。
中島富雄賞選考委員を代表して玉木一成さん(弁護士/過労死弁護団全国連絡会議事務局長)、平野敏夫さん(医師/東京労働安全衛生センター代表理事)が過労死をなくす思いを語るとともに、政府が導入を検討している「残業代ゼロ法」を批判しました。
授賞式では「過労死防止基本法制定実行委員会」委員長として過労死防止法づくりを先頭で担ってきた森岡さんに中島代表から表彰状などが授与されました。
受賞した森岡さんは「過労死防止法はいかにして作られたか」と題して講演。「反過労死運動の担い手は何よりも被災者の妻や母たちだった。悲嘆の涙から怒りの涙へ、涙をこらえて闘う活動家に変わった。過労死防止法制定にはワタミ事件のインパクトもあった。できた法律をどう過労死をなくす運動につなげていくかは労働組合にかかっている」と叱咤激励しました。
講演後には森岡さんとともに過労死防止法制定に尽力してきた全国過労死を考える家族の会の寺西笑子代表と東京過労死を考える家族の会の中原のり子代表も壇上で過労死をなくす運動を進めていく決意を述べました。
◆ 辛淑玉さんが講演「当事者・被害者に向き合って国家と企業の責任を取らせよう」
続いて今年の記念講演として、のりこえねっと共同代表の辛淑玉さんが登壇。今年4月に韓国で起きたフェリー「セウォル号」沈没事故を取り上げ、大半の乗組員が非正規労働者だったことなど新自由主義の利潤追求・効率優先の考え方が命を軽んじていると批判。また子どもたちが大人の言うことを聞いて逃げずに亡くなったことを「社長の言うことを聞くしかない」「お上に逆らってはいけない」という意識が浸透していたためと指摘しました。
飲食店などでアルバイトが反社会的な行動を取る「バイトテロ」も題材にして「これ以上落ちるほどの社会も上昇できるほどの社会もない、いじめられても誰も助けてくれないという絶望感が背景にある」と説明しました。
現在の日本社会の問題点について、辛さんは、本当の責任者が責任を取らない、そして美しい犠牲を求める「自己責任」の考え方が強い点をあげました。過労自殺した労働者の遺書に会社に対して謝罪する言葉があったことに衝撃を受けたと言います。こうした自己責任の風潮が、沖縄、女性、被差別部落、公務員、在日外国人、障害者らを叩く「下からのレイシズム」につながっていると話しました。
他方、全国各地で吹き荒れているヘイトスピーチのデモに対しカウンターの運動が盛り上がっていることを紹介し、「過労死に対しても抵抗者がいた、声を上げる人がいた。既存の労働運動と思いを持った人たちがつながることが社会を変える一歩になる。当事者や被害者に向き合って、自己責任にだまされず、国家や企業の責任を取らせていきましょう」とまとめました。
『労働相談センター・スタッフ日記』(2014/8/12)
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