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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

「請願権」の権利主体は「国民」ではない。「何人(なんびと)も」である。

2015年07月16日 | こども危機
 ◆ 「請願権」の正しい記述をしていない公民教科書は
   採択しないように教委に申入れをして下さい


 全国の皆様へ    高嶋伸欣です


 選挙権年齢が18歳に引き下げられ、若者の主権者意識の有無が問われていますが、これまでの中学公民と高校政治経済の教科書は、選挙権や被選挙権などのことを書いていても、日常的に主権者の権利行使を保障している「請願権」の重要性をほとんどがおざなりな説明しかしていません。
 これでは、安倍首相たち自民党筋が「若者の主権者意識は希薄だ」と判断して、18歳への引き下げ反対から急に賛成に転じたのも当然のように思えます。まるで、これまでの社会科教育が安倍政権を助けているようにさえ見えます。
 その上、中学公民と高校政経の教科書の大半は「請願権」を「国民に保障された権利」の一つとして説明しています。
 これまで何度も指摘しましたが、「請願権」を規定した憲法16条では「何人(なんびと)も」「平穏に請願する権利を有し」と明記されていて「年齢、国籍を問わず、日本に住むすべての人に認められている」もの(中学公民7冊の中で唯一正しく記述している教育出版・見本本)なのです。
 在日外国人にも広く認められ、しかも年齢を問わないので中学生はもちろん小学生でもよいのです。
 それなのに、私の手元にある中学公民教科書では、1978年以後のもので、この点を正しく記述したのは、2012年度用からの(現行版の)教育出版公民教科書だけでした。
 どうしてこうなったのか、関係者に過去の経過を思い出してもらいながら分析する必要がありますが、それよりもまず先にすべきことは、今現在の生徒たちに向けて、この憲法違反の記述について正しい説明をすることだと、思います。さらに、関連することがあります。それらについて順次述べます。
1)まず、学校現場のみなさんにお願いしたいのは、夏休みを目前にした今の内に、「請願権」の上記の正しい内容について、生徒に説明をして欲しいということです。
 折しも、国会の内外では若者たちの未来を左右する法律をめぐって激しい議論が続いています。それに対しても「請願権」の行使が可能なのだと説明することで、実際に「請願権」行使の機会を生かす生徒が出て来る可能性があります。
 夏休み後の9月にも議論は続く見込みですから、夏休み中に権利行使をした生徒の事例を参考にしながら、国会の会期末の9月下旬まで、この件についてさらに権利行使の機会を他の生徒たちも生かすことが考えられます。
 そうした意味で、夏休み中も国会内外の議論に注目するようにという説明のために、是非とも「請願権」の正しい説明を、夏休み前にお願いしたいと思っています。
2)次は、上記のように現在進行中の教科書採択の対象となっている中学公民教科書・見本本7冊の内で、「請願権」について正しく記述しているのは教育出版版だけということに関してです。
 他社の公民・見本本の場合、多少の接触があった数社には4月の内に訂正が必要である旨を、個人的に伝えておきましたが、見本本は制作済みであった模様で間に合いませんでした。それでもことの重要性から、昨年の領土問題記述の追加訂正のように貼り込みなどの対応策が可能だったはずですが、そうした手立てを講じた社はありませんでした。こうなると、教育出版の独壇場になるのもやむを得ない、と考えます。
 各地の教育委員会に「『請願権』について、見本本で憲法違反の記述をしている公民教科書を採択してはいけません」という注意喚起の「要望書」「請願」「陳情」を、出しましょう。
 3) 「いけません」という表現にするのは、
 ①その記述が明白に憲法の規定と異なっていて、生徒に渡してはならないものであるのが明白であるから
 ②教育委員会などが、「明らかに誤った内容の教育をするように強制する(誤った内容の教科書を採択して使用を義務付ける)ことは憲法26条(教育を受ける権利)と13条(個人の尊厳・幸福追求権)に違反する」旨の最高裁判所大法廷判決(旭川学力テスト事件、1976年5月21日)に抵触し、人権侵害で教育委員会が責任を追及されることは、必至であるから。
 ③仮に上記②の問題で生徒や保護者が、成績評価権のある教師・学校や教委に遠慮して、責任追及の行動をすぐには起こさなくても、採択された公民教科書が誤った記述のものである場合に、教員用の教科書は無償制の対象ではなく、公費で購入することになるので、地域住民が住民監査を請求し、請求が却下された場合には請求をした住民によって住民訴訟が起こせることになっているので、法廷で教育委員会は責任を追及されることになるから
 などのためです。

 4)なお、目下の教科書採択作業のために、全国の都道府県教育委員会は『教科書無償措置法』11条の規定によって、見本本の比較研究調査をする審議会を設置して調査をさせ、その調査報告書を受理して管内の市町村教育委員会に一斉に送付しているはずです。しかも大半の県教委はその報告書をHPなどで公表しているはずです。
 その報告書をみると、この『請願権』の記述についての比較をしているところは、多分皆無だと思われます。もしそうであれば、この選挙権18歳引き下げの時期に「請願権」の記述について調査項目にしていないのは不適切であるし、ましてや大半の見本本が誤記になっているのであるから、今からでも追加の調査報告書を作成して市町村教委に送付すべきであると、都道府県教委に要求しましょう。
 5)さらに、憲法16条の「請願権」の規定によれば、中学生や小学生でも「請願権」の行使が可能ですから、この夏に採択する公民教科書の使用を義務付けられる現在の小学校5・6年生と中学1・2年生自身とその保護者は、地元の教育委員会に対して、こと「公民教科書については、誤った記述の教科書を採択しないで下さい」という請願(氏名と住所が明記されていれば、様式・用紙等は自由)を、教育委員会や首長に提出するという方法も効果がありそうです。
 請願法第5条では「官公署において、これを受理し誠実に処理しなければならない」と明記しています。提出後の処理について文書での報告を求め、文書が送られてきた場合には、それが教材のひとつになる、という効果も期待できます。
 生徒と共にやってみませんか? 「『請願権』の正しい記述の教科書を選んで下さい」というのであれば、異議は出しにくいはずです。
  *以上の対応策を講じることで「つくる会」系の公民教科書の採択を教育委員会は強行しにくくなることが考えられます。
     上記の文責は高嶋伸欣です  転載・拡散は自由です

  *ちなみに、上記の趣旨でまとめた「要望書」を、高嶋が神奈川県教委に13日に提出しました。ご参考までに、添付しておきます(添付可能なMLのみです)
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