◆ 「誰一人取り残さないきめ細やかな教育の充実」と都教委は言うが (レイバーネット日本)
今日の公開議題は、議案が
①「都立高校におけるチャレンジサポートプラン」について
②来年度都立高校等の1学年生徒の募集人員等について、
報告が
③請願について
④「東京都特別支援教育推進計画(第二期)第三次実施計画(素案)」について
⑤高校生いじめ防止協議会について他。
非公開議題は
議案に懲戒処分(重い処分案件)が、
報告に「いじめ防止対策推進法」第30条第1項に基づく報告について(重大ないじめがあった場合には市町村教委は都道府県教委に報告しなければならない)
がありました。
10月15日付で教育長が坂本雅彦氏に変わりました。氏の経歴は、産業労働局長、政策企画局長を経ての就任で、教育庁は初めてのようです。
◆ 「都立高校におけるチャレンジサポートプラン」について
不登校・中途退学を経験した生徒、日本語指導が必要な生徒、ヤングケアラー、発達障害の可能性のある生徒、勤労生徒が少なくなった夜間定時制の課題を踏まえ、都立高校における多様な生徒たちの学びや成長を支える学習・教育環境の充実を図ることを目的にこのプランを策定したと言います。
文科省が昨年公表した「中央教育審議会初等中等教育分科会高等学校教育の在り方ワーキンググループ中間まとめ」を受けて、都教委は8月22日の定例会でこのチャレンジサポートプラン案を報告し、併せて1か月間、意見募集をしました。
その結果、保護者・学校関係者等から357件の意見が寄せられたということです。
意見の一例を挙げます。
「不登校生徒が増えているため、受け皿として対策されたチャレンジ校。その選択しかなくなるような高校進学。小学校、中学校で不登校にならないような学校作りを求めます。起きてからの対策より、起きないような対策を考えてもらいたい。自分が不登校になったという事実から自信がなくなり自尊心が傷つくと思います。そして不登校にならなければ高校の選択が変わります。」
それぞれの意見に対して、都教委は「都教委の考え方」を示しています。この意見についての「都教委の考え方」は、
「公立小・中学校において不登校となる要因や背景は複雑化・多様化しています。このため、都教委は、子供(ママ)が充実感をもって安心して学べる魅力ある学校づくりを推進するとともに、学校と家庭、その他の教育機関と連携した対応を充実させ、不登校の子供一人ひとりの状況に応じた多様な学びの場の確保を図っていきます。」というもの。
意見は「起きないような対策」を求めていますが、「都教委の考え方」は、「魅力ある学校づくり」とは言うものの、実態が伴っていません。
都教委が指示命令に従順な学校支配・教員管理を止め、20年以上前までのように子どもたちと直接かかわる教員たちが、子どもたちの声を聴き、学校づくりをすることこそが「起きないような対策」につながるはずです。
筆者は、実際にそうした体験をしました。
1990年代に同一校に10年間在職し1000人の生徒とかかわる中、私たち教員は論議を重ね、「学校は生徒が主人公」で教育活動をしてきました。その10年間、不登校生徒は「0」でした。生徒の誰もに居場所(活躍する機会)があったのだと思います。
教員自身が支配・管理されていなかったから、自由な発想ができ、実行できたのだと思います。
この意見に見られるように、寄せられた意見を実質受け止められない、受け止めようとしない都教委は、寄せられた意見を反映しないままに「都立高校におけるチャレンジサポートプラン」を10月に発表しました。
今日付で都教委HP及び都HPに掲載されています。こんなものを何度策定しても、子どもたちの教育に資するものとはなりません。
◆ 来年度都立高校等の1学年生徒の募集人員等について
来年度募集停止を決めた立川高校夜間定時制、再来年度募集停止予定の小山台、桜町等6高校夜間定時制についても、ここで募集停止が提案され、教育委員からは一言も異論はなく、了承されてしまいました。
◆ 請願について
請願は「立川高校定時制の募集停止予告の撤回と小山台高校定時制の存続を求める請願署名」及び「都立夜間定時制高校7校の募集停止計画の撤回を」の2本。
夜間高校存続を求めて長いこと、請願活動をしてきた団体の方々が傍聴されていました。
◆ 「東京都特別支援教育推進計画(第二期)第三次実施計画(素案)」について
特別支援教育は2007年度からの呼称で、それ以前は特殊教育(心身障害教育)と言いました。「特殊学級」と言っていたのを記憶する方がいるかと思います。
文科省の方針を受けて2007年度から「東京都特別支援教育推進計画(第一期)」が始まり、2017年度から2027年度までが第二期で、今回は第二期の第三次実施計画ということです。
第二期の基本理念は「共生社会の実現に向け、障害のある幼児・児童・生徒の自立を目指し、一人ひとりの能力を最大限に伸長して、社会に参加・貢献できる人間を育成」すると言い、
「知的障害児童・生徒の増加に伴う教室の確保」
「インクルーシブな教育の更なる推進」
「発達障害等のある児童・生徒が在籍学級で安心して過ごせる体制」
等を掲げます。
ところで、日本の文科省が言うインクルーシブ教育は国際社会では問題視されてきました。
国連の障害者権利委員会が2022年9月、
「日本が特別支援教育の体制を充実させればさせるほど、インクルーシブ教育から遠ざかる。今は真逆の分離教育が行われている側面が否定できない。日本の特別支援教育は障害者が大人になってからも、社会から分離されることにつながる」
と指摘したうえで、この教育体制を見直すよう勧告を出しました。
2016年に起きた相模原市の障害者施設での殺傷事件は、勧告が指摘する通り、分離教育(障害者排除教育)が差別意識を増長させた結果の行為です。
勧告に対し、永岡桂子文科大臣(当時)は「障害のある子どもとない子どもが可能な限り、ともに過ごせる条件整備と、一人ひとりの教育的ニーズに応じた学びの場の整備を両輪として取り組んできた」と強調し、特別支援学校や特別支援学級の在籍児童・生徒数が増えていることに触れ、「特別支援教育の中止は考えていない」と明言したのでした。
都教委が使う「インクルーシブ教育」「共生社会」も文科省と同じく、国際社会から問題視される概念のそれです。
2007年度からの特別支援教育を始める前年度の2006年度、職員会議で「1クラスに最低1人は授業についていけない子、授業を妨害する子がいるはず。その子の名前を書くように」と1年間に3度も用紙が配られたのを強烈に記憶します。
一人でも多くの生徒を特別支援学校に送るためでした。
また、小学校に入学する前に行なわれている就学時検診では、保護者や子どもの選択ではなく、大半が学校・教委の「指導」によって特別支援学校や特別支援学級に振り分けられています。
こうした現実と重ねて、特別支援教育推進計画を、教育そのものを考えたいものです。
「誰一人取り残さない教育」と都教委は言いますが、必要とする生徒がいるのに夜間定時制高校の募集停止・廃校、分離するインクルーシブ教育はその言葉と裏腹です。
『レイバーネット日本』(2024-10-25)
http://www.labornetjp.org/news/2024/1024nezu
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます