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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

「君が代・強制」解雇裁判通信

2008年02月10日 | 日の丸・君が代関連ニュース
 ◎ 解雇裁判 控訴審・第2回口頭弁論 ◎
    2月12日(火) 高裁101法廷

  15時開廷 (抽選のため14時半まで正門へ)
 ◆裁判終了後、報告集会があります。場所:オカモトヤビル(虎ノ門駅8番出口)


 ▼ 双方、準備書面1を提出
 私たち控訴人と東京都・被控訴人の双方は、昨年末日、準備書面1を提出しました。控訴人の準備書面は控訴理由書の補充、また被控訴人のそれは、私たちの控訴理由書に対する反論を述べていますが、ともに控訴審の争点として重要な内容を含んでいます。
 ここでは、双方の準備書面の内容を簡単に紹介し、裁判へのご理解の一助にして頂けたらと思います。

 ▼ 私たちの準備書面1
 すでに控訴理由書において、原判決(佐村地裁判決)への全面的かつ詳細な反論を行ったが、ここではその補充を、大きく次の二点について行っている。
 ①通達の発出の背景とその意図は何か?
 これについて、私たちは次のように主張する。
 「10・23通達を発出したのは、原判決が認定したような『混乱状況にあった学校現場の是正のため必要』であったのではない。
 そうではなく、国旗国歌至上主義を信奉する一部の教育委員や都知事および一部の都議会議員など行政や政治からの外来的な圧力をうけて、卒業式等の学校行事における国旗国歌の意味を全面的に変質させたのが、この通達である」

 この重要な事実について、準備書面は、「これまでの都立高校の実態」や「通達発出をめぐる校長たちの具体的な発言」、さらに「教育委員による価値観の押しつけの状況」を、教育委員会定例会の議事録という動かし難い証拠から、詳細に実証している。
 たとえば校長の次のような発言を紹介している。
 「自分は世界中を回ってきた。三脚こそが正式なもんだ。国旗を張り出すなどというのは日本と韓国ぐらいしかない」
 このような異常な通達を発出した背景について、「この(国旗国歌)問題が、2003年4月から7月にかけて政治力学の作用を受け」、「憲法・法令を無視する姿勢が都教委の大勢となり、歯止めが効かなくなったからだ」と結論している。
 ②控訴人らはなぜ職務命令に従えなかったのか?
 控訴理由書では、控訴人の「不起立・不斉唱の信念」を類型化して示したが、これで十分とはいえない。この「信念」は憲法19条の核心のひとつである。
 したがって、ここでは10人の控訴人一人ひとりの「不起立・不斉唱の信念」を詳細に具体的に述べた。

▼都側の準備書面1の特徴と問題点
 都側の準備書面を概観すると、「佐村判決」や「ピアノ最高裁判決」を軸としたこれまでの主張の展開とともに、さらに踏み込んだ主張がみられる。そのいくつかを見てみよう。

 ①「不当な支配」について
 横山教育長は「『国旗・国歌』の問題は、学校経営上の最大の課題である」と位置づけて、各学校に強力に介入してきた。このことについては、直接には書及していない。
 しかし、「一部都議や教育委貫の一連の強制への流れ」については、全面的に否定した上、教育委員会制度については「公選制度は、かえって教官への政治介入のおそれが強く、任命制度の方が中立的立場を損なわない」とまで言い、また、「少なくとも、卒業式などにおいて国旗・国歌の指導をなすことを地教委が命じても『不当な支配』が生じる余地がない」、「『大綱的基準論』は都教委には全く該当しない」と言い切る。
 ②職務命令について
 職務命令を発したのは校長だと次のように強弁している。
 「そもそも都教委が都立高校に指導を行うことに何ら問題があるわけでもないし、指導であるから各校長が本件職務命令の発出を義務付けられているわけでもなく、最終的に、校長が所属の教職員に対し自己の監督権限に基づき本件職務命令を発出している以上、これは校長の判断で職務命令を発した」。さらに「本件通達と同日に発した『校長降格要綱』は『養護学校問題』に関して出されたもので偶然である」と弁明している。
 そして「その職務命令に違反するという重大な非違行為を行った」から、「合格取消は当然」と主張する。
 ③「学校は正常でなかったので通達を発した」というストーリーについて
 これについては、各控訴人の行動や学校の状況を都合よく脚色して、「混乱状況の演出」を行い、これまでの[都立学校の教育」をすべて否定し、とくに「職員会議の民主的運営そのものが波乱」とする「あべこべの論理展閥」を行っている。
 ④不起立行為について
 「控訴人ら(近藤を除く)は昔時から卒業式における国旗・国歌の指導に反対し、いわば先頭に立って国歌斉唱時に不起立をしてきた」
 このようなことがどうして分かるのか不思議だが、無理矢理にも不起立行為を「示威行為」に結びつけたいのだろう。そして次のように言う。
 「本件不起立行為が生徒らに対する意思表示(アッピール)を意図していた面もある。たとえ控訴人ら個々人が自らの思想・喪心に従い、やむにやまれず取った消極的・受動的な行動であったとしても、周りの者はこれを『抗議』として受け取ることは容易に想像できるのであり、反対の意を表する意図で不起立した場合と比べ、周囲に威圧的効果があるという点では同じであって、式典の円滑な進行を妨害することと変わりはない」
 だれが「威圧」を受け、「円滑な式典の進行を妨害」されたと言っているのか。監視役できた都教委の「自作自演」であり、脅された校長、ただ一人ではないか。
 ⑤解雇権の濫用について
 まず、「本件は労働契約上の解雇でもなく、行政処分の性格を有する免職でもない」と言い、「退職金も満額支給されている」と、定年後の生活や生き甲斐を奪った「合格取消」は当然だと言う。さらに「公務員の採用であるから、民間企業の場合のように使用者と労働者の利害調整の観点を重視して裁量判断すべきでなく、任命権者である教育委員会の人事裁量権が尊重される」と従来の主張を繰り返している。しかも「控訴人らの行為は、更に繰り返される可能性が高い」という佐村判決をあげ、「合格を取り消した都教委の判断に違法性はない」と主張している。しかし、非正規雇用公務員については、次に紹介する「中野保育園争議」と同様の問題を含んでおり、一概に「任用」というだけで切り捨てられる問題ではない。

 ▼ 画期的な中野保育園争議高裁判決(平成19年11月28日南敏文裁判長・確定)

 ◇要件の概要
 平成16年3月31日まで、「一年ごとの期限付き非常勤保育上の業務」に長年にわたり従事してきた保育士四人を、保育園を廃止する理由で、中野区が「再任用拒否」をしたことに対して、四人が原告となり、「解雇権濫用法理の類推適用あるいは不当労働行為」として「①地位の確認と貸金の支払い②期待権の侵害を理由とする損害賠償」を求めた。
 一審判決は、①については、地位を失っているから理由なし、②については、期待権の侵害による慰謝料として各40万円の限度で認めた。
 この判決に対し、原告、被告の双方が控訴した。
 ◇高裁判決の画期的内容
 主文は、「一人に220万円、一人に200万円、一人に110万円を支払え」と、損害賠償については、ほぼ一審原告の請求を認めた。
 私たちの「解雇裁判」との関連では、次の判決内容は重要である。
 「勤務関係においては、解雇権濫用法理を類推適用される実態と同様の状態が生じていたと認められ、一審原告らの職務の継続確保が考慮されてしかるべき事態であったといえる」と述べ、「本件においては、私法上の雇用契約と、公法上の任期関係とで、その実質面で差異がないにもかかわらず、労働者の側にとってその法的な扱いに差が生じ、公法上の任用関係にある労働者が私法上の雇用契約に比べて不利になることは確かに不合理であるといえる」と認定している。
 ◇法の整備が必要
 そして次のように、法の整備が必要と結論付ける。「行政処分の画一性・形式性を定めた現在の関係法理を適用する限りは、解雇権濫用法理を類推して、再任用を擬制する余地はないというほかはない。また、当然に再任用されるという結論が採られるとすると、任命権者の任命がないにもかかわらず、裁判所の判決により実質的に任命されたと同様の法律関係を創り出すことになる。これは法解釈の限界を超える。反復継続して任命されてきた非常勤職員に関する公法上の任用関係においても、実質面に即応した法の整備が必要とされる」


 「君が代・強制」解雇裁判通信 第73号(2008年1月22日)
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