◆ 結果出せねば居場所失う (TOKYO Web)
都内の高校二年生アキラ君(16)=仮名=は昨年四月、難関の私立男子校に入学した。塾通いは小学四年生から。中学受験には失敗したが、高校で念願の進学校に合格した。ところが「受験で頑張りすぎた反動で、勉強をサボってしまった」。
進級の条件は厳しかった。各教科の平均点が一定以上-などのボーダーラインがあり、一学年で毎年十数人程度の留年者が出るという。
「昔は、もう少しおおらかで厳しくなかったらしいが…」とアキラ君。一学期に学年最下位レベルに。その後、取り戻そうと焦って勉強したが、成績は振るわなかった。
三学期末に留年が決定。同校に新入学する一つ下の弟と同じ学年になる。多感な十代の自尊心は激しく揺さぶられた。悩んだ末に、選んだのはドロップアウト。つまりは中退だった。「父親は『おまえの人生終わったな』って感じで…。自分も同じ思いでした」。
◆ 「まじめな子ばかり」
高校中退者を支えるNPO「高卒支援会」(東京)代表の杉浦孝宣さん(53)は「『酒やたばこをやっちゃった』というのは、過去のイメージ。相談に来るのはまじめな子ばかり」と話す。
少子化で学校の生き残りが迫られている。成績不振者には「環境を変えてみたら」などと、暗に自主退学を求められるケースもあるという。
「学校のアピールには進学実績は重要。補習も成績上位の子のためで、できない子へのフォローがない学校もあり、学校の予備校化が進んでいる」
中退の相談は五、六月が最も多い。「自分が思い描いていた学校生活と違った」と、入学後の落差に悩む新入生が多く、スポーツ推薦で入った生徒の中退も目立つ。
◆ 勉強・スポーツ 実績求める学校 フォローは薄く
都内の高校一年生タカシ君(16)=仮名=もその一人。礼儀正しい体育会系のタカシ君は「勉強が苦手だったので、中学から野球を頑張って、推薦をとろうと思っていた」。
努力が実り、昨年四月、都内の私立高校に推薦で入学。ところが、野球部に代々伝わる“あしき暴力の伝統”の標的にされた。上級生に「おまえ、甘いんだよ」と呼び出された。殴られ、体にあざができる毎日。担任や部の指導者にも相談したが、何の解決もないまま暴力はエスカレートした。
けがをしたこともあり、六月に退部。スポーツ枠のクラスから一般クラスに移ることもできるが、中学時代を野球漬けで過ごしたタカシ君は学力でついていけず、居場所を失ったという。
「殴る蹴るは当たり前、という部は珍しくないが、スポーツ推薦の場合は部活をやめたら実質的に学校にいられない。スポーツの実績も学校の宣伝材料。結果を出せなければ、間接的に『おひきとりください』という姿勢の学校がある」
アキラ君もタカシ君も今は都立高校に転学し、元気を取り戻した。だが、杉浦さんは「学校を取り巻く環境変化が、子どもたちに影を落としている。学校の犠牲者のようなもの」と感じている。
◇
ひと昔前は、非行少年の問題というイメージが強かった高校中退。今は受験の競争を勝ち抜いた有名進学校やスポーツ強豪校の生徒にも目立つという。少子化を背景に、学校が生徒に結果を求める傾向が強くなっているとの見方も。この時期、中退に関する相談が最も増えるという「高卒支援会」を訪ね、現状を探った。
『東京新聞』(2013年6月14日【暮らし】)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/CK2013061402000151.html
都内の高校二年生アキラ君(16)=仮名=は昨年四月、難関の私立男子校に入学した。塾通いは小学四年生から。中学受験には失敗したが、高校で念願の進学校に合格した。ところが「受験で頑張りすぎた反動で、勉強をサボってしまった」。
進級の条件は厳しかった。各教科の平均点が一定以上-などのボーダーラインがあり、一学年で毎年十数人程度の留年者が出るという。
「昔は、もう少しおおらかで厳しくなかったらしいが…」とアキラ君。一学期に学年最下位レベルに。その後、取り戻そうと焦って勉強したが、成績は振るわなかった。
三学期末に留年が決定。同校に新入学する一つ下の弟と同じ学年になる。多感な十代の自尊心は激しく揺さぶられた。悩んだ末に、選んだのはドロップアウト。つまりは中退だった。「父親は『おまえの人生終わったな』って感じで…。自分も同じ思いでした」。
◆ 「まじめな子ばかり」
高校中退者を支えるNPO「高卒支援会」(東京)代表の杉浦孝宣さん(53)は「『酒やたばこをやっちゃった』というのは、過去のイメージ。相談に来るのはまじめな子ばかり」と話す。
少子化で学校の生き残りが迫られている。成績不振者には「環境を変えてみたら」などと、暗に自主退学を求められるケースもあるという。
「学校のアピールには進学実績は重要。補習も成績上位の子のためで、できない子へのフォローがない学校もあり、学校の予備校化が進んでいる」
中退の相談は五、六月が最も多い。「自分が思い描いていた学校生活と違った」と、入学後の落差に悩む新入生が多く、スポーツ推薦で入った生徒の中退も目立つ。
◆ 勉強・スポーツ 実績求める学校 フォローは薄く
都内の高校一年生タカシ君(16)=仮名=もその一人。礼儀正しい体育会系のタカシ君は「勉強が苦手だったので、中学から野球を頑張って、推薦をとろうと思っていた」。
努力が実り、昨年四月、都内の私立高校に推薦で入学。ところが、野球部に代々伝わる“あしき暴力の伝統”の標的にされた。上級生に「おまえ、甘いんだよ」と呼び出された。殴られ、体にあざができる毎日。担任や部の指導者にも相談したが、何の解決もないまま暴力はエスカレートした。
けがをしたこともあり、六月に退部。スポーツ枠のクラスから一般クラスに移ることもできるが、中学時代を野球漬けで過ごしたタカシ君は学力でついていけず、居場所を失ったという。
「殴る蹴るは当たり前、という部は珍しくないが、スポーツ推薦の場合は部活をやめたら実質的に学校にいられない。スポーツの実績も学校の宣伝材料。結果を出せなければ、間接的に『おひきとりください』という姿勢の学校がある」
アキラ君もタカシ君も今は都立高校に転学し、元気を取り戻した。だが、杉浦さんは「学校を取り巻く環境変化が、子どもたちに影を落としている。学校の犠牲者のようなもの」と感じている。
◇
ひと昔前は、非行少年の問題というイメージが強かった高校中退。今は受験の競争を勝ち抜いた有名進学校やスポーツ強豪校の生徒にも目立つという。少子化を背景に、学校が生徒に結果を求める傾向が強くなっているとの見方も。この時期、中退に関する相談が最も増えるという「高卒支援会」を訪ね、現状を探った。
『東京新聞』(2013年6月14日【暮らし】)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/CK2013061402000151.html
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