《被処分者会通信から》
◆ 【現場報告】検定のツケを現場に背負わせる都教委
5月11日、都教委から、教科主任研修受講を指示するメールが届いた。出席者を入力する期限は13日。これに伴って年間授業計画を書き換える可能性があるため、〆切が約1カ月延期された。
年間授業計画は都教委に提出するものではなく、各校のHPにアップする期限が定められていただけだ(期限は5月28日)。また、ここ数年は監査の対象になっていなかった週案が監査対象になっているらしい。
背景と思われるのは、「現代の国語」教科書の問題だ。
今回大改訂だった国語科は、「現代の国語」では想定外だった小説を掲載した第一学習社の一つの教科書が検定を通り、採択数が跳ね上がった。が、他社から猛反発。
それを受けて、都教委は該当教科書の採択校に、「現代の国語」で小説を扱うときは「読む」ではなく「書く」領域で指導せよ、と指導した。
採択校によると、3月中に研修と年間授業計画の提出を命じられたが、そのやりとりは「脅し」とも思える高圧的な物言いだったそうだ。
ペアになっている「言語文化」の教科書には小説が掲載されていないため、単純に考えれば該当校の生徒は第1学年の授業では小説を読む学習権を剥奪されたことになる。
関連して、都教委は「採択教科書を変更」を認める異例の決定をしている。変更しなかった学校には、「「現代の国語」の教科書に載っている小説を「言語文化」の授業で読解の教材として使用していい」と言っている。
それでは教科書とは一体何なのだろうか。
5月23日、教科主任研修があった。観点別評価についての研修だったはずだが、国語科は年間授業計画に終始し、採択校以外の学校でも「各単元で扱う領域は一つ」だと強調された。
国語科の領域とは、「話す・聞く」「書く」「読む」の3つを指す。
都教委が示した「年間授業計画」の国語科の様式案には「領域」の欄があり○を記入するようになっているが、そこに一つしか○をつけるな、ということだ。
しかし、それは無理なことであり、学習指導要領にもそんなことは書かれていない。
一例として、私が使っている大修館の「現代の国語」の教科書には、どの教材でどの領域の力をつけるかという表が掲載されており、一つの単元の中でも教材によって、領域が違っている。
都教委は指導要領に領域別の配当時間が記載されていることを理由として、各単元の領域を一つに絞れと言うが、それが一番無理だと思われるのは第一学習社の例の教科書だ。
ほとんどの紙幅を「理解編」として評論文と小説を載せ、最後に約50ページの「表現編」をつけているからだ。なお、領域指定はない。
大方の国語科は“作文”すると思うが、文科省の検定と、採択数を伸ばしたい教科書会社と、都教委の指導の“トライアングル”が、現場の教員に面従腹背という名の虚偽報告を書かせるとすれば、噴飯ものと言う他はない。
国語の学習が「話す・聞く」だけ、「書く」だけ、「読む」だけで成立するとは考えにくく、とくに高校では生徒にとって未知の事柄について考え、書かせるのだから、いきなり討論や論述はできないのではないかと思う。
それをしようとすれば、頓挫した入試改革のプレテストの記述問題のように、生徒会で滑った転んだ的なレベルになってしまうだろう。
大学生の低学力を嘆く文科省が、ますます学力低下を招こうとしているような気がする。国語教育の崩壊である。
『被処分者の会通信 139号』(2022年7月26日)
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